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12/20

#12 エレナ

夏が来て、秋になり収穫祭の時期が近づいてきた。

子爵の子分たちが税を取りにやってくると商人もやってくるようになる。


ある日、水を汲みに村の広場に来ると見知った馬車が何台か停まっていた。

約束をした商人がとうとう来たのだ。


僕は水瓶をその場に置き、昨年会った商人を探す。

2台先の馬車の前にその商人はいた。僕はすぐに駆け寄った。

「やあ。ちゃんと来てくれたんだね」


「あっ。カイト坊ちゃん。 商人は約束をなによりも大事にしますからね。」


そう言うと商人は後ろを振り返り、従者に「少し外す。後は任せたよ」と言って4台ある帆掛け馬車の一番最後の馬車の荷台にカイトを案内した。


「人に聞かれるとまずいでしょう」

小声でそう言うと、帆掛け馬車の入口を閉じる。


「ありがとうございます」

僕は商人が約束を覚えてくれていたことにとても安堵する。

1年もあったんだ、忘れていてもおかしくないし、身元が怪しいと思い直すかもしれない。しかしちゃんと考えてくれていた。そのことに心底ほっとする。


「いつ決行しますか? うちとしては他の村々を回ったあとこの馬車だけ引き返して戻って来るのがありがたいんですけどね」


成人式を迎えてからと思っていたけど、そんな無理は言えないかな?


「何日くらいかかりますか?」


「そうですね10日見てもらえば」


「10日ですか・・・。9日後が収穫祭なのでその日の昼過ぎはどうでしょう。」


「収穫祭はそのくらいでしたか。少しくらい早くても問題ありませんよ。

収穫祭の時は他の馬車も多いでしょうし目立たないとは思いますが、人も多いので抜け出すのは難しくないですか?」


「大丈夫昼過ぎから大人は教会に集まるからね。祭の手伝いなんて沢山いるから抜け出すのは簡単だよ。」

状況を説明する。

「あと・・・、もう1人連れて行ってもいい?」


「もう1人ですか?? どう言ったかたです?」


「女の子さ。 将来を誓い合ってるんだ」


「坊ちゃんの婚約者ですか?? もちろん大丈夫です」


「坊ちゃんはやめてくれますか? 目立つしカイトと呼んでください。」


「わかりました。カイトさん。

では9日後の昼ごろ広場から少し街道方面に行ったところで待機してますので。」


商人はエレナを連れて行くことを拒むことはなかった。2人に増えればそれだけ食費や宿代がかかると言うのにだ。第二の関門を突破できた。よし!!


そうやって皇都へ行きの日程が決まった。



*****



いつものように、小川の洗濯場でエレナとキスをする。


そして、肩を掴み真剣な眼差しを向けた。


「収穫祭の日の昼過ぎにこの村を出るよ」


エレナはハッとした表情をするとなぜか悲しい顔をする。

「やっぱり行くのね。。」


「ああ。エレナはついてきてくれるよね?」


僕に取ってエレナはかけがえのない存在になりつつある。だからこそ、エレナの表情に少し不安になって聞いた。


エレナは複雑な表情をしている。


「でも。本当に皇都にたどり着けるのかな?? 私たちを連れて行ってくれると言う商人さん。本当に信用出来る?? カイトは騙されたりしてない??」


エレナの不安はもっともだった。

金も無しに皇都まで運んでくれるなんてうまい話があるはずがない。


「大丈夫だ。エレナは僕が守る」


「でもお母さんやお父さんになんて言えば良いの?」


「・・・・・」


「お母さんやお父さんに心配かけたくない」


「でも一緒に行くって・・。」

胸に動揺が走る。


「一緒に行きたいよ!!」

エレナが大きくそして泣きそうな声で叫ぶ。

・・・・・エレナは涙を流していた。


「でも・・・・・・

・・・・・。

・・・・・。

・・・・・出来ないよ!!!この村を出るなんて出来ないよ!!!」


そう言って後ろに振り向き道の方へ走り出すエレナ。


僕は呆然と見ているしか出来なかった。

これは失恋してしまったかもしれない・・・・。


エリナは大切だ。とても大切に想っている。。

しかし、この世界に転生してきて憧れのゲイルとあの魔法学園での生活を捨てる事は出来ないんだ。

・・・・・この田舎村で一生を終えるのは嫌だ。


「・・・・・・エレナ・・・・。」

心が痛む。張り裂けそうだ。




***********


※ここまでで、農村の話は終わりです。

お読みいただきありがとうございます。

魔法も戦闘もなにもない!!お怒りはごもっともです。チンタラとした展開でもうしわけございません。

これから少しずつ・・・いや・・・


もし、続きが気になると思っていただけたら評価やコメントいただけると励みになります。

どうぞこれからもよろしくお願いいたします。

by作者

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