Ⅵ 一緒に居たい
同性愛を否定する描写があります。苦手な方は読むのをご遠慮ください。
放課後、私の提案で私と陽葵、佐神くんで学校の近くにあるファストフード店で勉強会をすることにした。ちなみに私と佐神くんは雑談する気満々だ。陽葵の親はあんな事を言っていたから、私といることを良くしないだろうし、ただの雑談のためだったら帰宅の後、何言われるかわからないだろう。
軽く食べれるものを注文し、席を選び、勉強道具を用意しようとする陽葵を流れるように佐神くんと止めた。
「え?今日は勉強会なんじゃないの?」
困惑した様子の陽葵の片付けを手伝いながら、教えてあげた。
「それはただの建前。だから、今回は勉強会じゃなくて、雑談会だよ〜!ホントは女子会が良かったんだけど…」
ジト目で佐神くんを見たら少しだけ目をそらされた。もともと彼を誘った覚えはない。
しばらく頼んだポテトをつまみながら、雑談をしていると、不意にこんな話が上がった。
「世界を探したら星の数ほど他にも、たくさん女の子はいるから…。でもさ、僕達が一番の親友に慣れたのは奇跡だよね…」
明るい声音と最初こそ笑顔だったが『親友』と言う辺りから僅かに頬が引きつっていた気がした。でも、あくまで気のせいだろうとこの時は気にすることはなかった。そこで話は一度途切れ、陽葵はポテトをつまみ始め、佐神くんはコーラを飲んでいた。することがなくなった私は、陽葵の頬に落とされたまつげの影に気がついた。
まつ毛長いなぁ。整った顔してるし、可愛いわけではないけど、美人ってこんな人を言うのだろうなと、度々痛感させられる。じっと陽葵を見ていたからか、陽葵がパッと顔を上げた。その拍子に、目があってしまい少し恥ずかしくなってしまった。ただ、そう思ったのは私だけではないようで、彼女も僅かに頬を朱に染め唇を軽く噛んでていた。
「ははっ、小菜どうしたの?」
急に弾けたように笑う彼女にこちらまで少しおかしくなってしまい、しばらく二人で笑っていた。
「あのさ、俺もいるからイチャつくのやめてくれないですかねぇ…」
頬杖をついた佐神くんの声とジト目によって私達は笑うのをやめた。
「ばっ、別にいちゃついてなんかないし!仲良く話ししてただけだもん!」
イチャついていると言われて恥ずかしくなってしまい、あわてて弁解して、助けを求めるために陽葵を見ると、きれいな眉をゆがませ、声を抑えながら笑っていた。
「陽葵、さっき何で笑ってたの?」
だいぶ暗くなり始め陽葵の門限が迫っているということで、雑談会を終わらせた。一緒に家に帰ってる時にふと思い出して聞いてみた。すると陽葵は少し驚いたように目を開き、僅かに複雑そうな顔をしたから、聞いてはいけないことを聞いてしまったのかと焦ったが、いつもと同じ穏やかな顔に戻った。
「え?笑ってたかな?覚えてないや、ごめんね」
陽葵が悪いわけではないのに謝られてしまった。
「そっか、こちらこそごめんね。じゃあ、また明日」
互いに顔を見合わせ何故か二人して笑ってしまったが、そのまま自分たちの家に帰った。
***
「______」
意味もない、声にもならない嗚咽が僕の部屋に響いた。頬をとめどなく涙が伝っていく。ただただ、無力な自分が悔しいし、しんどい。辛い。このまま、死んでしまいたいとまで思った。…こんな考え方、僕らしくない。そうなったのにはあの人が原因なんだ。絶対にそうだ。僕がこうなったのは母が原因なんだ。
『陽葵、あなた小菜ちゃんのことが好きなの?』
母にそう言われたとき背筋が凍った気がするほど寒気を感じた。けれど、そういう母の顔は、恋バナをするような女子高生のように、なぜか、とても楽しげだった。
『…っ。な、なんで?そんなこと聞くの?』
『何で、もなにもないわ。で、どうなの好きなの?』
僕はそう言われて何も言い返す事ができなかった。母はそれを肯定と受け取ったのか、鋭く目を細めた。
『はぁ、やっぱり。陽葵、あなたおかしいわよ。女の子のことを好きになるなんて』
それを言われた瞬間、喉が引き裂けたかのように息ができなくなった。
『普通は男の子を好きになるでしょう?だいたい、一人称も僕だなんて。いい加減直しなさい』
母の言うことがすべて、ナイフのように、体中に突き刺さったように、錯覚するほどだった。僕は何も言うことができなかった。母に抗うのが怖くて何も言うことができなかった。
『ぼ、僕…は』
『だからそれを直しなさいって言っているの!!』
母が急に叫んだことで何も言うことができなくなった。何に対して母がそんなに怒っているのかが、全く理解できなかった。ただ、僕は母を異常なまでに恐怖した。
『…はぁ。陽葵、いきなり怒鳴ってごめんなさい。でもね、ママはあなたのことを思っているのよ。あなたに普通の女の子として、ちゃんと生きてほしいから。だからね、陽葵。小さいころみたいな、いい子に戻って?』
まるで、それが当たり前だと信じて疑わない声色、発言に吐き気がした。母からすれば僕はおかしいのか。普通じゃないのか。ちゃんと生きれてないのか。…母の言ういい子じゃないのか。
『これだけ言ってもママの言う事が聞けないなら、本当に小菜ちゃんと会うのをやめなさい。とりあえず、一人称を直すところから始めてくれればいいわ』
そう言って、母は部屋から出て行った。そのあと僕は自分の部屋であの人の前で必死に押しとどめていたものが溢れだし、止まらなくなった。できたことといえば、ただ声を押し殺して、歯を食いしばったことぐらいだ。
なんで…そういわれなきゃいけないの?僕は僕でいるだけなのに?お母さんに否定されて、おかしいって言われて、普通じゃないって言われて…。小菜にもこのことを言ったらおかしいって言われる...のかな?そんなの…やだ。僕は………わ、私は。
私は小菜と一緒にいたい。
変わらず投稿は不定期になってしまいますが、少しでも続きを楽しみにしていただけると嬉しいです。気軽にいいねやブクマ、感想などを送っていただけたら幸いです。