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Ⅳ 級友

 私が陽葵の家に泊まらさせてもらったのは一日だけで、あとは無意味に貴重な休みを消費していった。けれど、夜は必ず陽葵から電話がかかってきて歌うことはないけれど、雑談をして眠りにつくのが習慣になっていった。陽葵と話せばその夜は以前とは違い、しっかりと深く眠ることができた。そして気がつけば月曜日になっていた。

 陽葵と一緒に登校しないことの方が多いため、一人で何も考えずに教室のドアを開けたら、教室を出ようとしていたのか、佐神くんとぶつかりそうになってしまった。

「あ、ごめん。大丈夫?」

 私が彼の様子を心配したのは、彼が慌てた様子で急いでいたからだ。それと同時に私を見て目を瞬いていたからでもある。

「あ、藁品さん!君を探していたんだ。少し話したいことがあるんだけど、今大丈夫かな?」

 私は予想だにしなかったことで、唖然としてしまった。ただ、彼の姿を見て私も聞きたいことができた。

「分かった。ここじゃあれだし、屋上にでも行こうか」


 私達の学校は教師の頭が悪いのか、屋上の立ち入りが許可されている。私と佐神くんは一応の落下防止のために設置されている緑のフェンスに背を預けるように座った。

「よし、それで話って何?」

 呼び出したのは彼の方なのに、やや気まずそうに眉を下げてから口を開いた。

「…陽葵のことなんだけどさ」

 思ってもみなかった名前の登場で私は驚いたけど、二人の仲がいいことを思い出した。

「藁品さんさ、陽葵となんかあった?」

「え…?な、なんで?」

 何かあったと言われたら、あったのかもしれない。けれど佐神くんに気にされることではないだろう。そこで、ふと思い出した。開けたドアの隅に机に突っ伏している陽葵の姿が見えていたのだ。

「陽葵が朝から魂が抜けたような顔してるから、どうしたのか聞いても『小菜』しか言わなくて…だから聞いてみたんだけど…。その様子じゃ心当たりなさそう?」

 陽葵の様子がそんな事になってるとも、そうなってる原因が私だって言うこともまったくの予想外のことで、かなり驚いた。佐神くんの質問の通り心当たりなんかこれっぽちもなかったからだ。しかも聞く限りの陽葵の受け答えが、私が原因でしかない。

「………」

「………」

 お互い沈黙を保ちながら、私は自分が陽葵に何をしてしまったのかを必死に考えていると、一つの心当たりがあった。

「あ、あったかも」

 私が思わずと言った様子でつぶやくと、佐神くんが勢いよく食いついてきた。

「え、まじで」

 佐神くんがそういった時点で、予鈴が鳴ってしまったのでこの話は放課後までお預けになってしまった。


 結局、放課後になっても陽葵はまるで魂が抜けたような顔をしていた。私が話しかければすぐに答えてくれるけど、心ここにあらずというか、目に生気を感じることができないほど弱りきった様子に感じられた。けれど私と話していくうちに少しずつ元気を取り戻してくれたようで、少し安心した。


 部活のためにジャージに着替えてから下駄箱に向かうと、制服姿の佐神くんがいた。別にいるのは構わないだろう。でも彼は誰かを待つようにせわしなく首を動かしていた。そして彼の視線が私を捉えると慌てたように、けれど嬉しそうにこちらに近づいてきた。

「あ、藁品さん!探してたよ、朝の話の続きがしたくて…。このあと時間ある?」

「部活だからないよ。そもそも佐神くんもバスケ部で部活があるんじゃないの?」

 私が即答すると、彼は慌てたようにそうだった!と叫び男子更衣室がある方向へ走っていった。

 ただの間抜けか、天然なのか…。去りゆく背中にそんな事を考えてしまうのだった。

今回かなり遅くなってしまい申し訳ありません!詳しくは活動報告に明記しているので、目を通していただけるとありがたいです。

変わらず投稿は不定期になってしまいますが、少しでも続きを楽しみにしていただけると嬉しいです。気軽にいいねやコメントしていただけたら幸いです。

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