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怪談:トコとチィ

作者: みはらなおき

 祐太君は、分厚い上等な座布団に座ってお祖父さんと話していました。

 お祖父さんは、分厚い上等な座布団に胡座をかいて、猫のチィを抱いています。

 チィは、今年五歳になる雉猫です。お祖父さんはチィの前足を両手で持って踊らせたりして見せてくれます。祐太君は、面白くて時々声を上げて笑っていました。

「ほや、あんたのお父さんがチィのお母さん、トコを連れて帰ったんが八年前やった。もっとちっこい小猫でな」

「なんでトコいうん」

「トコは、トコトコ歩くからトコなんや」とお祖父さんは、チィを持ち上げ、後ろ足で歩く素振りをさせます。チィは、無表情にされるがままになっています。その様子がおかしくて、また祐太君は笑いました。

「ほんで、二年位で五匹子供が産まれたけどな、人にあげたり…、表で遊んでる時に烏にやられたりしてな、またトコだけになってしもた」

「えー」

「けど、あんたが産まれた年に三匹産んだ。その一匹がチィなんや」

 お祖父さんは、チィを掲げてお尻をプラプラとさせました。祐太君がまた笑います。

「チィは、なんでチィなん」

「…こいつは、産まれた時、チィチィ鳴いとったんや」

 猫はニャーで、犬はワンです。

「ほんまに?」と、祐太君は聞き返しました。

「ほんまや、ほんまや。ほれ、鳴いてみぃ」

 すると、チィはニャーと鳴きました。

「ニャーやん!」と、言いながら、また祐太君が笑います。部屋に祐太君の笑い声が響きました。

「はっはっはっ、そやそや、もっと声出して笑えよ」と、お祖父さんも笑いました。

「お父さんもあんなことなってしもたけど、これからは、あんたが家を明るくしていくんや。ほれほれ」と、チィを祐太君に抱かせてくれました。

 祐太君が、両手で抱き上げると、チィは祐太君の指をペロペロ舐めてくれました。

「可愛いなあ」

「可愛いのう。チィは、この家を守ってくれる。大切にするんやで」

 お祖父さんは、チィの頭を撫でました。チィは、気持ちよさそうにしています。

「猫が守ってくれるのん?」

「そや。チィに毎日餌やって、毎日遊んだれ。動物大切にしてお母さんも大切にしたら、みんながあんたを守ってくれるんや」

「…うん、わかったわ」と、祐太君は大きく頷きました。


 その時、襖を開けてお母さんが入ってきました。黒い服を着ています。お母さんの足元にじゃれながら、トコも入ってきました。お母さんは気づかないようでした。

「あ、起きたん。誰かと話してると思たけどな。一人にして悪かったな。チィとおったんやな。さぁ、いこか」

 祐太君も、幼稚園の制服を着て、黒いハイソックスを履いていました。


 ざわざわとお客さんの声がします。祐太君は、お母さんに手を引かれていきました。

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