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stage1-F 『映写室~追放』

 『ツバサちゃんはこちら! 『リッパ-・アルティメットエディション』!』


 映ったのはエンテ型、つまりまっすぐな主翼より前に尾翼があり後ろ向きに二重反転型と思われるプロペラが付いている、普通の揚空機と全逆の輪郭を持つ業物だった。

 量産型のリッパ-には一回乗ったことがあるが、こんな形の上に主兵装の射程が短くどうも受け付けなかった。

 そんなただでさえ異様なモデルを素体として、写真の揚空機は同型のプロペラを両翼の根本に一基ずつ増設してある(詰まり計三基)。

 そして機首の延長線上に金属の柄の付いた長い光の刃が浮かんでいる。


 『機動力を大幅に強化! 副兵装の機関砲の口径を大きく! そして主兵装の光刃を強化!』


 「あれを換装しないとか正気か?」


 「ある意味先が楽しみだな」


 『シャルフトちゃんはこちら! 『エリミネーター。アルティメットエディション』』


 今度はものすごく長さが短く、左右に広い全翼型。

 変則的な揚空機が多すぎる。

 三角形の中央には操縦席があり、両翼には左右対称に拳銃の銃口のような形の機構が二基ずつ埋め込まれている。

 翼の上下から一門ずつ見える砲口からして縦二連型の噴進砲だろう。

 翼の後方には火箭式の発動機が計4基埋め込まれている。

 あと操縦席から延びる胴体に沿うように左右二基ずつ旋回砲が付いている。


 『噴進砲を縦二連に換装! 旋回砲を新造! 発動機を噴流式から火箭式に!』


 「孤立無縁での戦闘でも想定してんのか?」


 「ワンマンアーミーはいけないね……」


 『お次はプルパラちゃん! 『コマンダー・アルティメットエディション』!』


 映ったのはティルトローター型の機体だ。

 ティルトローターは普通輸送機のような中型の機体なのだが、これはよくてタンデムの小型機。  

 ティルトローター式には珍しく翼の端ではなく途中に発動機が付いている。

 普通の前進翼型双発機のプロペラがカウルごと縦回転できるようになっている。

 そういう感じだ。胴体の側面に四基コンテナのようなものが付いている。

 向こう側も恐らく同じだろう。

 武装は1.2インチクラスの六連回転式機関砲二基のみ。


 『発動機を強化して最高の旋回性を! 搭載する無人機の性能強化! 機関砲型、光線型四機ずつを収容できるよう格納庫を増設!』


 「これはまた懐かしいものを」


 「そーいや昔二人してテストパイロットになって荒稼ぎしたの、こいつだったか」


 『最後にバロメアちゃん! 『プレーヤー・トライアルエディション』』


 画面に映ったのは噴流式発動機二基と機体の半分ぐらいなサイズのコンテナとを上下に重ねて(発動機が上)両側に一セットずつ携えた回転翼機だった。


 「あれの設計者は誰だ?」


 「こっちが聞きたいところね」


 その最大の特徴は機体の付け根から生えた長大な五本爪のマニュピレーターだった。


 『携行型の機関銃、火炎放射器、多連装噴進砲、榴弾砲をそのまま巨大化させた専用兵器を使用可能な試作機!』


 『後ろの格納庫に用意してるから、今すぐ乗ってみてね! 出発はきっかり30分後! ばいばーい!』


 音楽と映像が同時に止まり、絞られていた照明が光量をゆっくりと増していった。

 そして画面が上へと上っていき、隠されていた両開きのドアが現れる。

 非常にうるさい時間だった。

 耳の奥にねっとりとした音の塊がまだ残っているような感じがする。


 「彼女たちは本当に揚空機乗りなのか?」


 あまりにもピーキーな機体が多すぎて、かえって不審に思われた。

 僕の周りの素晴らしいパイロットたちはみんな量産機かそれにちょっと手を加えた程度の機体で戦果を上げていたのだ。


 「大丈夫だ。 正直私もかなり規制された情報をもらっているにすぎないが、彼女たちと飛行訓練を行ったことはある。 私の見る限り、四人全員かなりの手練れに思えたぞ」


 「信じてやる」


 「これを読め」


 バルルは飛行鞄の中から紙束を取り出した。


 「彼女たちの履歴書だ。 ある程度の理解にはつながるだろう」


 「助かる」


 僕はそれを受け取った。


 「まずは揚空機をみよう」


 バルルは私の肩を叩き、それから後ろを見てそっと頷いた。

 それを見て女の子たちがめいめい動き出した。

 僕は書類を見ながら扉のほうへ歩いていった。

 真っ暗の異常に天井が高い部屋だ。

 揚空機のような影も見えるが、よくわからない。


 「……飛行服はどうした?」


 「操縦部の衝撃吸収性能や環境調整機能を大幅に強化して飛行服は不要になってる。 実はそこにかなりの金が掛かってるんだけど、私にはさっぱり理解できないね」


 最後に出てきた茶髪ポニーテールの女の子(プルパラちゃん?)が後ろで扉を閉めた途端、ガタリと地面に振動が走った。

 そして部屋の中央に細い光の帯ができる。

 それがゆっくり太くなっていくのを見て、僕は上を見上げた。

 天井が真ん中で二つに割れ、ゆっくり開いていく。

 そして足元が迫り上がっていく。

 恐らくここは本来機密兵器のデモンストレーション用の部屋なのだろう。

 さっきの部屋で説明を聞いて、ここに止めておいたやつで実演する。

 エレベーターが五割がた上ったところで天井が完全に開き、揚空機が六機止まっていることがわかった。

 僕のワンダラーちゃんは一番前に止まっていた。

 隣はバルルのペネトレイターだった。

 完全に昇ると、そこは小高い場所にある滑走路だった。

 かなり遠くにさっき降りてきた中央滑走路が見える。

 そして揚空機の進行方向の空に、丸い闇が浮かんでいた。

 あれが異世界への扉。

 私はあの中に飛び込んで帰ってこなくちゃならない。

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