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stage2-R 『エンジア隊登場』

 かろうじて体勢を回復することができ、何が起こったかに意識を向ける余裕が出てきた僕に通信が入ってきた。


 「こちらは君たちの味方だ!」


 凛々しい女性の声だ。


 「へ!?」


 モータの声を尻目に、彼女は言った。


 「今から出てくる光輪から離れてくれ!」


 その言葉にたがわず、僕の機体の左に複雑な模様が刻まれた光の輪が現れる。


 「あっ!」


 光の中から現れたのはさっき撃ち落とされたシャルフトさんの機体だった。


 「い、一佐! ありがとうございます!」


 「君の功労には大いに感謝する。 それよりも君と協力してくれた彼に言うことがないか?」


 「あ、大丈夫でしたか?」


 僕は控えめな肯定の言葉を返した。


 「君には随分と世話になったらしいな。 僕が彼女の部隊の指揮官、エンジア・ブローニ一等空佐だ。 ま、この世界では僕たちの階級など何の意味もなさないだろうがね」


 右横に変な形の戦斗機が下りてきた。

 流線形の白い機体の周りに垂直翼を伴ったジェットエンジンを帯同していて、明らかにこの世界の機体ではなかった。 

 

 「僕たちはこの世界に我々にとっての脅威を排除に来訪した異邦人だ。 この世界における脅威ってのは『元老院』の事。 ここまではシャルフトに聞いてるかな」


 「はい」


 「先ほど『総議書記長』の乗機の残骸を確認したことによって元老院議員全員の死亡が確定した。 これによりこの世界での僕達の任務は完了したことになるが、このまま次に行ってしまうほど僕達も冷血ではない。 この戦争の終結のために君たちを支援しよう」


 「ありがとうございます! ですが、これでは付いていく事はできませんね」


 僕は嘆息した。

 2年の間僕の相棒だった『スペランカー』は、各所からぷすぷすと黒煙をあげていて、エンジン音の大きさも不安定な上下を繰り返していた。

 無理をしてもじきに堕ちてしまうだろう。


 「大丈夫だ。 君たちに会いたがってるやつがいる。 そいつがどうにかしてくれるだろう」


 そういうと彼女は誰かに「上がってこい」と命令した。

 すると、僕の機体から見て機体二個分前の雲を割って見覚えのある機影が現れた。


 「マカロン! マカロンなんだよね?!」


 「あ、まあ、そう言われてたのは事実だけど」


 「そうだよね! やっと会えた!」


 フローティング・コフィンの胴体の屋根が中央から開き、中から現れた機械が展開して航空甲板を形成した。


 「とりあえず降りて! 顔を見たい!」


 いわれるままに僕らはそこに降りた。

 飛行空母には往々にしてあるように止まった途端チェーンか何かで機体が固定され、そのままゆっくりとエレベーターの方へ運ばれていった。

 僕らの機体が乗ったエレベーターはオレンジ色の明かりがついた格納庫へと降りた。

 ハッチが閉まり航空甲板が畳まれる中、僕は機体から降りた。 その僕の横を何か小さいものが通り過ぎた。


 「わひゃ!」


 後ろを振り向くとそれはモータに抱き着いていた。


 「マガロン! ぐずっ! 会いたがっだよ! ぐすん!」


 なにやら涙ぐんでいる。


 「ちょっ! あんた! 何y……」


 彼女はモータの胸にこすりつけていた顔を上げた。

 短めの金髪に白っぽい肌、そしてそこまで高くない鼻と薄い唇。

 彼女はモータと瓜二つだった。

 その上、彼女の着ていた金属や革、フリルで象られた薔薇がゴテゴテ付いた緋と黒のパンクスは、モータの着ていた服(今も屋敷においてあるはずだ)によく似ていた。


 「ぐすん。 どんだけ心配したか、分かってんの? ああでも、夢みたい」


 そこまで言って彼女は自身の両掌で両頬を何度か叩いた。


 「こほん。 喜んでる場合じゃない。 今からママの所に行く。 マカロン、こっちに来て」


 僕らは彼女の言葉に従って機内を歩いていった。


 「この機体は撃ち落とされたはずだったが」


 「せっかく不死身の機体なんだから、有効活用して逃げないとね。 ムースはいい子だけど思い込みが激しいから、あれ以上付きまとわれると非常にうざったいわ」


 そう軽口をたたきながらたどり着いたのはさっき降りた格納庫の下の部屋だった。


 「ほら、マカロン。 さっきあんたが戦った出来損ないの無人機の完成系『ブレイズハートMk.3』よ。 これがあんたの専用機」


 部屋の中央に係留された機体はさっき戦った機体が両翼を折りたたんだ姿だった。

 さっきの奴の赤のラインの代わりに碧色の発光するラインが引かれている。


 「これが……」 


 「そうよ、マカロン。 かっこいいでしょ? これは貴方のために最適化された機体よ」


 その周りをゆっくり回りながら彼女は言った。


 「一応二人乗りの機体だから、もしかしたら私達双子の為に作った機体なのかもしれないけど、とにかくあんたらしい機体ね。 あんたは脱出時にこれを起動することができずに取り敢えずそこらの量産機を乗っ取ってそのまま撃ち落とされたわけだけど」


 モータは立ち尽くしていた。

 そしてゆっくり黒い機体に歩み寄っていって、それに触れた。


 「なんだか懐かしい感じがする。 私はこれに乗ったことってあった?」


 「あったと思う。 無人機版と比べてもはるかに速いから、まあ覚悟した方がいいかもしれないね」


 「誰かと乗ってもいいのよね?」


 モンブランさんはその言葉を聞いていったん首を傾げた後、「はは~ん」と言って僕の方を向いた。


 「こいつなら大丈夫だと思うよ」

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