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stage2-Q 『高機動戦闘爆撃機 ブレイズハートMk.Ⅱ』

 「空港の場所は分かるか?」


 「はい。 一度交換留学生としてここの技術学校との交流行事の時にそこで航空ショーをぶったことがあります」


 「ならいい。 一刻も早く急行してくれ」


 空港は首都中心部から飛行機で十分くらいの所にある台地の上にある。

 高度を上げてみると遠くに管制塔の光が見えた。


 「あの光の方に行くぞ!」


 空港の方に近づいていくと、僕らの考えの正しさを証明するような現象が起きた。

 敵機が現れたのだ。

 連邦が二万機ほど保有している量産機ではなく、それを製造しているメーカーのハイエンド機だった。 

 このことを考えると兵の一部が反乱を起こしたとかではなく、かなり力を持った存在の指揮下で事が動いているという事は明らかだった。

 それらを蹴散らしながら空港へと急ぐ。


 「敵機接近!」


 モータが叫ぶ。

 今日で五回目だ。


 「どこだ!」


 「二時の方向から巨大な敵影! 先ほどからの敵機ではありません!」


 夜闇を切り裂いて僕らの前に回り込んできたのは全翼型の黒い重装甲の戦斗機だった。

 翼は分厚く、両翼に対称に配された四基のロケットエンジンはかなり高出力な代物だった。

 それは鋭い動きで僕らの前に静止し、水平に姿勢を正すと、両翼を展開した。

 火薬のはぜる軽い音がして、翼の根本から何かが雨霰のように射出された。


 「上へよけろ!」


 高度を上げ、近接信管式空中機雷の爆発が下で爆発するのから逃れた。

 敵は瞬時に機雷散布を止め、機体前部の発射口を開いた。

 発射されたのは赤色の誘導ミサイル。


 「私がやります!」


 シャルフトさんは機体中央のハッチを展開し、航空機用散弾銃を放った。

 それが誘導ミサイルの群れを破壊し、そうして生じた爆炎の中を突っ切る。

 モータの放った誘導ミサイルが敵左翼に直撃し、一瞬敵は体勢を崩した。

 その機に乗じて敵機の後ろに回り、ありったけの火力をぶつける。

 機関砲とロケット砲の嵐に晒され、敵機の四基あるエンジンの一番左端の物が爆発し、敵は大きく体勢を崩した。

 僕は高度を下げていく敵機を追撃し、後部に主砲を命中させた。

 後部装甲が大きくへしゃげ、航空力学的端正さが崩壊する。


 「墜としたぞ!」 


 黒煙を墜落への道を辿ろうとする敵機を視界の端に見ながら、僕は『スペランカー』の体勢の回復を試みていた。

 その時の事だった。


 「逃げて! ビストー!」


 破壊された装甲がばらばらと分離し、中から黒に赤のラインが入った機影が飛び出してきた。

 それは空中で畳んだ翼を展開し、先ほどまでの姿の相似縮小の様な形態をとった。

 それを確認するかしないかくらいで、僕らはパージされたパーツの起こした爆発に突っ込んだ。


 「大丈夫ですか!」


 「俺は大丈夫だ! モータ!」


 「生きてる! あづっ!」


 爆風を抜けると、上ですさまじい発砲音が響いた。


 「きゃあああぁぁぁ!」


 シャルフトさんの悲鳴が聞こえたと同時に通信が断絶し、操縦桿が若干重くなったように感じた。


 「そんな!」


 「シャルフトさん! 応答してくれ!」


 僕たちの懇願もむなしく、旋回した僕らの横を掠めて、煙を引く白い残骸がばらばらと落ちて行った。


 「嘘! そ、そんなぁぁぁぁ!」


 モータが絶叫を上げる横で僕は歯を食いしばって絶望に耐えた。


 「取り敢えず奴を片付けろ! 彼女は復活できるといっていたはずだ!」


 僕はそのまま高度を上げ、敵機の後ろについた。

 そして認識した。

 彼女に引導を渡した機関砲の束を。

 両翼に二基ずつ砲身同士の間にかなり角度がとられた三連装機関砲を装備し、胴体の後方に航空機用の大型散弾砲が装備されている。

 そして装甲を極限まで削り、速力にあてた『スペランカー』でさえ追いつくのがやっとな凄まじい速力。 明らかに空対空用に特化した機体だった。

 それは両翼に装備したバーニアスラスターを吹かしながら執拗に僕らの前を正確に取りながら全砲門を開放し、極めて残酷な弾幕を張った。

 対単騎にはあまりにも密度の高い弾幕。

 シャルフトさんの加護が消えた今、縦に機体を大きく振って、僕はかろうじてそれを躱し続けていたが、ついに……、


 「ぐっ!」


 左翼に衝撃が来てからは直ぐだった。

 僕は降下していく機体を何とか原状復帰させようとして藻掻いていた。


 「くそっ! 当たった!」


 さらなる衝撃が走り、機体が激しく暴れる。


 「ビストー‼ だめっ‼」


 「すまん!」


 僕は足元のスイッチを押し、フライヤーとの連結を解除した。


 「ちょっと! 何すんの!」


 「あいつは確実に僕らを狙い続ける。 僕がおとりになるからお前だけでも逃げろ!」


 フライヤーには簡易的な自律移動機構が搭載されている。


 「脱出してよ! バカ正直にガンシップと心中するつもり!?」


 「……さっき脱出機構を撃たれた」


 「はあ!?」


 「……僕はたぶんもう助からない。 だから、お前だけでも!」


 そう言いながら僕は無理やり機首を上げ、敵機を見据えた。

 これに突っ込んで言って一矢報いてやろう、そう思ったからだ。

 その途端、

 『キィィーーン‼‼‼』


 後方から突然恐ろしく大きな風切り音が耳に入ってきた。

 それは急速に音量を上げ、耳をふさぎたくなるような高音に化けた。

 ちょうどその瞬間、僕が下から見据えていた敵機の左翼下を白い影が通過し、その直後その場所が凄まじい力に引き裂かれたかのように断たれ、爆発した。

 きりもみ回転しながら落ちて行く敵機に、更に白いミサイルのようなものが喰らいつき、敵機は爆熱を放って粉々に砕け散った。 

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