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stage2-E  『拠点防衛式重戦車改良型 アイスボールMk.Ⅱ ~ 脱出』

 僕らは塔の周りを旋回しながら敵軍を攻撃していた。

 彼らは連邦の量産型対空戦車や対空砲兵で構成されていたが、どいつもこいつも16歳の僕にさえ遠く及ばないほど実戦経験が少ないように見えた。

 ウェイルさんのナパームはそんな彼らによく効いた。

 火の海をばらまくだけで敵は全く気勢を削がれてしまったようだった。


 「あとどんぐらいですか?」


 「おそらくもう30分くらいで過熱してしまうだろうな。 そこまで耐えろ」


 四機は散開して各個攻撃に当たっていた。

 現在状況はこちらが優勢。

 5分ぐらい経っただろうか。


 「現在攻撃を受けています! 支援願います!」


 シャルフトさんから通信が入った。

 僕はそれに応答して、その時対応していた対空戦車にとどめを刺し、そのまま旋回する。

 リアクターの塔の周りを廻るようにして彼女の白い全翼機が現れ、その後から彼女を追跡してくるものがあった。

 それはさっき大ダメージを与えたはずの戦車だった。

 しかしあの時のロケットランチャーがこちらは8連発式の大型機関砲になっており、ロボットアームの代わりに巨大なテスラコイルを装備していた。


 『試作機二基で計画中止になった』


 そんなウェイルさんの言葉を思い出した。

 僕はそいつの機関砲に向かって発砲して注意を引き付ける。

 相手はいったん攻撃を止め、その場に制止する。

 そして砲塔がこちらに向かい、機関砲が火を吹いた。

 急下降してそれを躱す。

 僕を追うようにして電撃と銃弾の嵐が襲う。

 旋回してそれから逃げると、そいつは味方をも蹴散らしながらこちらを追跡してきたのが見えた。

 当たり判定というのは、弾に当たるか当たらないかの指標なのだろう。

 僕は何とか全弾回避しながらできる限り出力を上げ、ある程度の距離をとった。


 「ウェイルさん! ナパームを!」


 「分かった!」


 ウェイルさんからの発射通知を聞いて僕はできる限り小さく旋回して後ろを向いた。

 ナパームによって作られた火の海に突っ込んで敵は動きを止めていた。

 僕は操縦桿の横にある小さなスイッチを押した。

 『スペランカー』の上の翼の中央には、10インチクラスの大口径砲が搭載されている。

 普通小型機がこんなものを撃てば反動で失速してしまいかねないが、この機体はSTOL用の補助機関を活用し、空中でいったん静止することによってその反動による影響をなくしている。

 メインエンジン二基を停止させると同時に両翼の根本が展開し、前後方に二基ずつ格納されていたロケットエンジンが展開される。

 その噴射によって、僕は空中に静止した。

 照準を相手に突き付け、引き金を引く。

 反動を後ろ向きのロケットの噴射によって打ち消し、更にそのままの加速度を維持して前向きの速度をつけ、メインエンジンを点火して再び巡航速度に復帰する。

 一方発射された艦砲クラスの巨大砲弾は、相手の主砲の根本に直撃していた。

 普通の戦車なら今の一撃で原型が全く残らないほどのダメージを受けているはずだが、相手は未だにそこに立っていた。

 しかし主砲の機関砲やテスラコイルはそろって大破し、相手は車体の各所から火を吹いていた。


 「流石の威力だな。 名工の作品だ」


 「空中で止まることのデメリットが大きすぎてこれきり作られなくなった代物ですけどね」


 中央の塔は見た目にはそこまで変調をきたしているようには見えなかったが、よく見ると各部の孔という孔から水蒸気が吹き上がっており、一部は赤熱していた。

 そして塔のどこかから爆発音が聞こえた。


 「もうそろそろ限界だろう。 ずらかるぞ!」


 僕らは踵を返して先ほど入ってきた入り口へと戻っていく。

 その後ろでは爆発音が断続的に上がっており、その間隔はどんどん短くなっていた。

 そして、峡谷を進んでいると、 

 どぅぅぅおおおおーん!!!!

 30㎝先に投下型爆弾を落とされたかのような轟音がこの距離にあっても聞こえてきた。

 同時に両脇の工場群の照明がすべて掻き消えた。


 「よし、上がっていいぞ」


 僕らは高度を上げ、峡谷の裂け目から上に出る。

 工場上空全域を覆っていたはずの対空網は完全に機能を停止していた。

 工場は一面の闇に包まれていたが、各所で火の手が上がり、そこにはオレンジの光が煌々と灯っていた。  

 

 「俺についてこい」


 僕たちは『クラインシケイダ』のライトを追って工場地帯の端に飛んだ。


 「この滑走路に降りろ。 あ、前から、な」


 ウェイルさんの示した滑走路の隣にある燃料タンクが炎上しており、その姿はかろうじて見えた。


 「地上に降りるんですか!?」 

 僕にはなぜこんな目立ったことをしておいてそうするのかがわからなかった。

 四番目に僕が着陸すると、一番最初に降りていたウェイルさんがその端の建物に入った。

 『スペランカー』から降りてその場に立っていると、足元が急に揺れた。

 揺れがエレベーターのそれであることに僕は気づいた。

 完全にエレベーターが下りてしまうと、上の孔が閉じられ、空間が完全な闇に包まれた。


 「ようこそ! 飛行空母『ドゥームディサイダー』へ!」


 照明が付くと同時にそんな声が聞こえてきた。 


 「ウェイルさん。 もうちょっと詳しく」


 僕はガンシップ四機がちゃんと縦一列に並んだ格納庫の奥の階段からやたらかっこつけて降りてきたウェイルさんにそう質問した。


 「説明しよう。 お前たちが乗っているのは、俺が設計した中型の飛行空母、『ドゥームディサイダー』。 俺は自動操縦機としての設計を依頼され、こいつを描いた。 大型ジェットエンジン二基、大型プロペラエンジン二基、航空甲板。 さらに自律航行装置」


 ウェインさんは手を叩いた。


 「今それを起動し、目的地を連邦の首都に設定した。 あの滑走路にはグランシケイダに積んでた爆薬で爆破しておいたから、工場の混乱が収まってこいつが消えてることに気づくのはもうしばらくかかるだろう。 少し休んでくれ」

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