[短編]密室ねこねこパニックでにゃんだふるエンド
「ああ!女王陛下!お許しください!」
「黙れ!誰が発言を許可した!身分もわきまえずに、わらわに意見をするとどうなるか、とくと思い知れ!衛兵!」
哀れな青年は、女王陛下の怒りを買い、塔に閉じ込められました。
塔は、王族が貴族を閉じ込めるためだけに造られた牢獄。
生きて出る者もいましたが、誰も塔での生活については、一言も口にしませんでした。
ただ、互いに目を見つめ合い、頷くだけでした。
その様子を見た人々は、塔の恐ろしさを想像し、身を震わせたのでした。
その塔に青年は閉じ込められることに決まりました。
女王陛下の決定は、誰にも覆せません。
青年はすぐに塔に閉じ込められました。
石造りの頑丈な塔は、出入り口がひとつだけ。
他には小さな穴があるだけでした。
きっと通風孔なのだろうなと、青年はぼんやりと思いました。
階段を登り切ると、見晴らしのよい部屋に。
ただし、獣の匂いがします。
「一体、僕はどうなるんだろう」
青年は不安に思いながら、分厚い扉の向こう側で重い鍵の掛けられる音を聴きました。
日が暮れました。
季節は冬。
戸板もない窓に雪が見えます。
「ああ、寒い。食べ物もない」
青年は、懐から一本の木の棒を取り出しました。
塔の守番が、階段を登る時にこっそり渡してくれたものでした。
「これに火をつけろというのだろうか。火種もないのに」
青年が投げやりに、手のひらに収まる小さな木の棒をふりふりと動かしました。
すると。
暗闇の中で、目が光りました。
それも複数の鼻息と共に。
「これが罰なのか」
青年は短い今までの人生を振り返りました。
「…女王陛下、心からお慕いしておりました」
誰にも届かないと知りながらも呟いた言葉は、あっという間に獣たちに襲われ、消えてしまいました。
にゃぁ〜ん
ふぎゃぁん
ごろごろごろ
青年の体の上に数えきれないほどの獣が!
もふもふの体が青年を埋め尽くします!
柔らかい肉球!
ざりざりとした舌が青年の持つ木の棒に殺到します!
気づけば青年の肩に、背中に、膝の上に、たくさんの獣が!
にゃぁ〜ん
みゃあ
みゅうっ みゅうっ
ああ、小さな獣まで!
通風孔からどんどん入ってきます!
人間には出られない密室に、たくさんの獣が!
部屋は獣に満ちました。
青年は昼夜を問わず、獣たちにもふられ続けました。
満身創痍です。
時々、獣に扮した女王が様子を見に来ます。
ーーー塔に閉じ込められた青年は、その辛抱強さを評価され、その後、忠臣として女王陛下の側で仕えたそうです。
「ああ!女王陛下!お許しください!」
「だめにゃん。お仕置きするにゃん」
「あ、そんな、あぁっ♡」
「こんなことするのは、お前だけにゃあ」
めでたしめでたし。