表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
坂の上のつくも  作者: 小樽歴建×擬人化プロジェクト
3/6

第1話「鈴の行方③」

 まずは、2匹の家である水天宮から探してみることにした。

 水天宮の境内はなかなかの広さだが、奥の本殿と真ん中にある2匹の台座以外は、敷地の隅に大きな木があるくらいで、とても見晴らしがいい。

 だから、ここで何か物を落としたとしても、例えば風で飛ばされるとか、誰かが拾っていくとかしない限り、すぐに見つかるだろう。


「いつもどおり、ここから出発したんだ。鈴はちゃんとなってた」


 テンは、一度台座に戻り、姿勢よく座ってから、ふわっと飛んでスハラの目の前に降り立つ。陽の光を反射するテンの毛並みが、本当の犬のようだ。


「テン、今日のルートを覚えてる?失くした時と、同じように歩いてみて」


 スハラの言葉に、テンだけでなくスイもうなずいて歩き出す。


「ここから、そっちの階段を下りて行ったんだ。いつもと違うことはしてないよ」


 外人坂へつながる急な階段を下りていく。みんなできょろきょろと地面を探しながら下りていくが、階段には鈴は落ちていないようだ。


「ここからどこへ行ったの?」


 スハラに聞かれたテンは、自分たちが進んだほうへ顔を向ける。


「右に曲がって、メルヘン交差点へ行ったよ」


 歩き出す2匹に、俺とスハラはついていく。もちろん、ちゃんと鈴を探しながら。


 メルヘン交差点まで来ると、2匹は匂いを探すように、鼻を上げる。


「いつも、我らはあそこでおやつをもらうんだ」


 スイが顔を向けた先は、チーズケーキが有名な店。確かに、よく店先で試食できるけど。


「動物がケーキ食べていいのかよ」

「我らは、神だから大丈夫」


 俺の皮肉のような問いは、簡単に打ち破られる。いや、かといって神様が試食ってどうよ。


 店の前まで行くと、店員が出てきてくれた。


「あれ、スイもテンもまた来たんだね。何か食べる?」


 いつも来るたびに何か食べているのだろう。店員は自然な手つきで何か食べられるものを探し始めるが、テンがそれを遮った。


「違うんだ。あのね、鈴を探してるんだけど、見てない?」


 鈴?と、お菓子を探す手を止めずに不思議そうな顔をする店員に、スハラが説明してくれる。


「テンの鈴を探してるんだ。スイがつけてるものとお揃いもので、どこで落としたかもわからないんだけど…見た記憶はありませんか?」


 店員は、少し考えるような素振りをしたあと、見てないなぁと難しい顔をして言った。


「鈴かぁ、あまり気にしたことなかったけど…ここに来たときは音がしてたような気もするし…でもあれはスイの鈴の音だったのかなぁ」


 いまいち記憶のはっきりしない店員は、ごめんねと言って、覚えていないお詫びにとクッキーを、スイとテンだけでなく、俺たちにもくれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ