近所のコンビニが閉店する時 〜 最後の買い物はカップ麺ふたつ、そして景品はマミさんクリアファイル 〜
今日、2021年5月31日、北海道釧路市で1軒のコンビニがその歴史に幕を閉じる。
そのコンビニは俺の住むアパートの近くにあり、日々の買い物は勿論の事、通販経由で届く怪しげなブツの中継地点として、俺の人生に無くてはならない存在であった。
このコンビニが閉店すると、ブツの中継地点を車で5分の別店舗に変更しないといけない。
俺はその時を間近に控え、お弁当とお惣菜以外の補充が無くなって寂れていくコンビニに通い、それでいて何も手にする事無く立ち去る日々を過ごしていたのである。
そして、いよいよ通販業務が終了し、このコンビニに通う理由が消失するその日、俺はがら空きの棚に残る不思議な光景を目の当たりにしていた。
『魔法少女まどか★マギカ』、クリアファイルプレゼントキャンペーンの景品が、全く手付かずで残されていたのである。
俺も「小説家になろう」サイトで活動する様な男だ。
『まどマギ』というアニメの存在くらいは、当然知っている。
だが、現行のアニメに興味を失って15年以上になる俺は、この作品を観た事は無かった。
『まどマギ』クリアファイルをゲットする条件は、エースコックの対象カップ麺を2個購入する事。
この俺を舐めているとしか思えない、たやすい任務だ。
カップ焼きそばを極めている俺にとって、エースコックの「大盛りいか焼きそば」は、ライバルコンビニの「セブンプレミアム 1分湯戻し大盛りソース焼きそば」と並ぶ、人生の伴侶なのである。
「大盛りいか焼きそば」の購入は決まった。
別にクリアファイルに興味を持たなくても、恐らく1週間以内には自発的に食べているのだから、今迷う必要は無い。
問題はもうひとつのカップ麺。
俺は味噌ラーメンや豚骨ラーメンは好きじゃない。
ラーメンは醤油9割、塩1割人生だ。
なかなか対象商品が見付からない。
そこでふと目にした、たったひとつ残されたカップ蕎麦。
「ソバヂカラ 濃厚ラー油肉そば」
……いける……。
その商品を説明するポップに描かれた、『まどマギ』のキャラクター。
それは作品の中でヒロインのお姉さん的存在であり、スタイルの良さとその伝説的な最期で圧倒的な人気を誇るマミさんだった。
現行のアニメに興味を失って久しい俺にとって、クリアファイルで眺める『まどマギ』のキャラクターに、特に心は動かなかったものの、このキャラクターの中ではマミさんはイケている。
ポージングもイケている。
俺は客も疎らな店内を見渡し、店員がオタクっぽい眼鏡男子ひとりである事を確認すると、長年お世話になったこのコンビニの最期に華を添える為、マミさんクリアファイルに手をかけた。
15年以上、通販でも手にしていなかったアニメグッズである。
「ありがとうございました〜!」
同士を見付けたかの様な明るい店員の声に見送られ、俺とこのコンビニの最後の買い物が終わった。
正直言って「ソバヂカラ」は期待外れだったし、マミさんクリアファイルの活用法も分からない。
だが、この経験は俺に何らかの影響を与えた事は間違いない。
現に今こうして、勢いでエッセイを完成させて投稿してしまったのだから……。
あと数時間。
俺は最期にコンビニの閉店の瞬間を見届けたくなっていた。
ちょっとコンビニ行ってくる。