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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

語り部のいる部屋

捕食者

「お待ちしておりました」

 魔法の鏡というものを見つけたのは、私の部屋の隠し部屋。

「今日もお願いね」

「もちろんでございます」

 私だけの秘密。悲劇を語る魔法の鏡。

「今日はとある村の少女の話にいたしましょう……」

 この国からはずっと遠い場所にある村がございます。人口は50人にも満たない小さな村です。そこに数えで11程度の少女がおります。茶色い髪と青く大きな瞳を持ったかわいらしい少女でございます。……ええ、今もおります。年老いて少女ではなくなっておりますが……。

 話を戻しましょう。

 赤いずきんの似合うその少女は「赤ずきん」と呼ばれ、その小さな村の人々にかわいがられておりました。

 そんな赤ずきんには優しいおばあさまがおりました。おばあさんは病気で寝たきりで、赤ずきんは月に一度お見舞いへ行っておりました。そして、その日はまさにお見舞いへ行く日だったのでございます。

 赤いずきんをかぶり、かごに果物やぶどう酒を入れておばあさんが住む森へと入って行きました。

 おばあさんの家へと続く一本道を赤ずきんが歩いておりますと、そこへ一匹の年老いたおおかみが通りがかったのでございます。

 おおかみは衰え、昔のように狩りができなくなっておりました。食事にありつくこともできず、狼は腹を空かせて彷徨っていたのです。

 久しぶりに獲物になりそうな少女を見るなり、おおかみは赤ずきんに話しかけたのでございます。

「やあ、お嬢ちゃん。どこへ行くんだい?」

「おばあさんのおうちへお見舞いに行くの!」

「そうかい。なら、すぐそこにお花畑があるよ。花束を持っていけばおばあさんは喜ぶだろう」

 そう言って、おおかみは赤ずきんを寄り道させたのでございます。そして、赤ずきんが花を摘んでいる間におおかみはどこかに行ってしまいました。

 しばらくして、赤ずきんのかごは綺麗な花でいっぱいになります。

 きっと喜んでもらえるだろうと、赤ずきんは急いでおばあさんの家へと向かったのでございます。

「あら、赤ずきんいらっしゃい」

 おばあさんはベッドから身体を起こし、笑顔で赤ずきんを迎えました。

「よく来たねぇ……もう少し近くへと来ておくれ」

「うん! 私、果物とぶどう酒とお花も持ってきたの!」

 しばらく、赤ずきんはおばあさんの部屋のあちらこちらに花を飾ったり、果物をむいておばあさんに食べさせておりましたが、不意にこんなことを言い出しました。

「おばあさんの手、前よりも大きくなったね」

「お前のことをよぉく抱きしめられるようにさ」

「耳も大きくなったね」

「お前の声がよぉく聞こえるようにさ」

「口も……その大きさなら食べ物が食べやすそうで羨ましいな」

 そして、赤ずきんはおばあさんにこう言ったのでございます。

「今日は、もう食べても良いんだよね……?」

「何をだい?」

「忘れたの?」

 赤ずきんはよだれをぬぐって、おばあさんに顔を近づけます。

「な、なんだったかね……」

「おばあさんに決まってるじゃない」

 おばあさんはその瞬間、サッと青ざめ、逃げ出しました。病気で寝たきりのおばあさんが、でございます。なぜって……そんなこと聞かずとも本当はもうおわかりでしょう?

 おばあさんはおばあさんではなく、「おばあさんの皮を被ったおおかみ」だったのでございます。

 おばあさんのことを食べ、おばあさんのふりをして赤ずきんのことも食べるつもりだったのでございます。そんな赤ずきんに逆に食べられそうになったのですから……おおかみは必死でございました。

 でも、おおかみは年老いて狩りもできないほど衰えていました。対して赤ずきんは幼いとはいえ若く、まだまだ元気でございます。


––––「いただきます」

「“カニバリズム”ってやつかしら?」

「ええ、でも赤ずきんはおおかみがおばあさんになりすましていることに気づいておりました。彼女は『肉』ならなんでも良かったのです。…ただ、『人肉』を特に好んでいるだけで」

 私には到底理解できない。

「まあ、今日もおもしろかったわ」


「それはそれは」


『明日もお待ちしております』

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