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愚者危うきに近寄る  作者: ペーパードライブ
2/5

突きつけられた選択



 ピンポーン


 家に誰かが来たようだ。トンネル付近から身元不明の死体が3000体上がってきたニュースのせいで俺はその誰かの訪問にぞっとした。


 誰だ……。

 

 モニターで訪問者を見ると警官が立っていた。俺はこの事件のことに違いないと思い、この警官を家にあげることにした。


「どうも、全消所の君島といいます。立花博さんですね」

「はい、そうです」

「すこし、お聞きしたいことがあるんですが、今よろしいですかな」

「はい、どうぞ」


 俺はこの中年の君島と名乗る警察官を家の中に入れた。このタイミングでの訪問。俺にはどう考えてもトンネルの件としか思い当たらなかった。


「ニュースでありましたからもう知っているかもしれませんがねえー、この近くの全消トンネルで3000体もの身元不明の死体が突然発見されましてね」

「はい、知ってます」


「そうですか。話が早くて助かります」

「で、率直に聞くんですが、昨日何かトンネルについて関わることをなさいませんでしたか」

「と、言いますと」

「いえね、私は昨日見ていたんですよ、あなたー、夕方くらいにトンネルに入って1時間くらい過ごした後出て帰っていきましたよね」


「はい、そうなんです……」

「実はね、今日ここにきているのは極秘なんですよ。私はこのトンネルについて結構昔から個人的に調べているんですがねー。正直信じられないですよ。あのトンネルに入って生きて出てきたのはあなたが初めてなんですよ」


「そうらしいですね。ネットで見ました。にしても、警察はこのトンネルについての捜査は打ち切ったはずでは。なのにどうして」


「……。えー、家内がそのトンネルを通ってから行方不明になっていたものでして。当時はそのトンネルが危険とか知れ渡ってなかった頃でしたから。まだわかりませんがおそらく今日発見された3000体の中に含まれているでしょう」

「そうなんですか、すみません……」

「いえいえ、で、どうしてあなたはあのトンネルに入ったんですか?」

「……」


 正直言って興味本位で入ったなんてとても言い出す気にはなれなかった。そんな動機でトンネルに入って言った俺が生き残り、何も知らずにトンネルに入った奥さんが死んでしまっているなんてそんな事実を君島さんと共有したくなかった。


「まあいいでしょう……。あなたにもいろいろと事情がおありでしょう」

「え、ええ……」


「それより本題です。トンネルに入ったあなたがなぜ今もこうして無事にいるのか。私がこれまで調べてみたところ、あなた以外にそんな人はいませんでしたよ」

「はい、すいません……」


「いや、いいんですよ。仕方のないことです。それより教えてくれませんか。あのトンネルの中で何があったんですか」


 正直トンネルの中で起こったことはあまり話したくなかった。あまり現実味のあることではなかったし、誰かと共有してしまうことがかえって自分の身を危険にさらしてしまうような気がした。何せ、突然3000体の死体が発見されるなんて普通じゃない。

「……」

「立花さん、教えてください!誰かに話してしまうのは怖いかもしれませんが、あなたはまだ危険なんです。今こうして無事でいること自体奇跡かもしれないんです。我々も協力してあなたの身の安全を守るためには情報が必要なんです!」


 君島さんの言葉は鬼気迫るものがあった。それはそうだ。奥さんを失った執念で何十年も警察の捜査が打ち切られてからもこの事件を追い続けてようやく事件に進展があったんだ。


「実は……」


 俺は前の日にトンネルであったことをすべて話した。トンネルから不自然に出られなくなったこと、トンネルの中から妙な声が聞こえてきたこと。


「でも、信じてもらえませんよね、こんなこと」

「いや、貴重な証言です。よく話していただきました。では、やはりあなたの身に危険がありそうだ。早めに知れてよかった。すぐに何人かの警官にあなたのまわりをガードさせます」

「ありがとうございます」

「ではまた何かあったらいつでも行ってください」


 そういって君島さんは帰っていった。昼からにも警官が俺のまわりに怪しいものが現れないか監視する体制を作るらしい。


 俺は少し安心感を感じた。


 その時、俺の部屋が突然真っ暗に覆われた。朝でカーテンを開けているにもかかわらず突然である。俺は急いで窓を見た。すると窓は真っ暗い物体が張り付いているようだった。


 次の瞬間、それは俺の家の窓を破壊し、黒い物体は家の中に侵入してきた。それは巨大な何かの腕のようだった。


 嘘……だろ……。このレベルまで来ると警察どうこうじゃない。このマンションは15階だぞ……!


 次の瞬間俺の前は光で満たされまぶしさのあまり俺は目を閉じた。

 目を開けるとそこは真っ白い空間で、再び謎の声が聞こえてきた


「あの怪物を何とかしてほしいか?」

「当たり前だろ!」

「なら貴様が何とかするんだな。力なら貴様には与えた」

「貴様のせいなんだぞ、あの怪物が出現したのは」

「なに!?」

「貴様は3000人目だよ、あのトンネルに入った。それがあの怪物の出現する条件なのだ」

「なに、そんなの知るか!?」

「やらなければ死ぬぞ、このまま貴様。まあ、死ぬのはこの地球上の人類すべてといったところだがな」

「やるさ、ああー!やってやるよ!」


 死ぬか生きるか。生物ならば答えの決まりきった二択である。しかし俺はこの時本当に正解を選んだといえるのだろうか……。


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