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保健室

 真っ暗の中にいると、

僕がこの世界に召喚された時の事、

その前の事、そういうことを考えたくなる、

召喚される前の世界でも僕は僕で、

きっと存在していたのだろうけど、

召喚によって僕が再構築されたという気持ちがあって、

過去と現在の自分が切り離されてるって、

意識的に分かるんだ。

 僕を切り離したのは誰だろうか?

 僕に何を求めてるんだろう?

「気がついたか、

 私の治療を受ける前に目覚めるとは、

 結構タフなんだな」


 ここは?


「安心したまえ、

 君は生きているし、

 助手たちの懸命な措置で快方に向かってる、あとは」


 そうだった、僕は、

バムの爆発で、皆は無事だろうか?

それに、あの爆発力で僕の身体は?


「うっ」


 手足が、無い!


「まだ無理をしてはいけない、

 君は一度死んでる身の上だ、

 これから何度も死ぬことになるだろうが、

 心配はいらない、私たちに救えない命は無いのだから」


 何を言って?!


「私の名前はマーマリア、

 回復能力を持つ、一応医者だが、

 主にはこの能力を使うことになっている、な」


 手足が、痺れる? 感覚?

このマーマリアって人に触れられたら、

無くなっていた手足がとたんに元通りに再生!?

そんなことって!


「不服か?

 まあこの流れにも慣れると思うが、

 これに懲りたら自分の手に負えないものに、

 手を出そうとしないことだな」


 他にも助手がいたんだっけ、

でも僕はもう何が何だかわからない、


「先生、他の生徒たちも息を吹き返しました、

 回復を頼めますか?」


「うむ、テリテイア、

 そのまま全体回復を続けてくれ、

 君のおかげで自然治癒力が皆増していて、

 治療がしやすい、そしてバム」


「え、なに?」


 バム、バムは無傷なのか、

それとも治療を受けたってことか?

いや、こうなると分かって爆発した?


「君は一度、体の構造を調べる必要があるな、

 あの爆発の中で全くの無傷だなんて、

 興味がある、解剖させてくれんかね?」


 なんか、物騒な話になってきたけど、

よく考えたらバムがあんなふうにいきなり、

爆発能力を発揮しなければ今回のことは、

無かったわけだから、って、

こんな不思議なことがある?

他の病室の寝台に運び込まれた、

ドンバスにパラッケラ、

アータルカ、ボンピア、デクテクテク、

ビュースタは逃げたからカウントしないけど、

爆発研究室の皆、大けがってことじゃないか?


「かんべん! かんべんだよ! マーマリア先生!」


 バムは走って保健室から逃げてったけど、

結局、バムが爆発しなければこうもならなかったんだから、

反省はしてほしいものだけど、

もしかしてこの世界って死生観に関してかなり疎い?

 マーマリア先生が特別なのかは分からないけど、

どんな重篤な怪我でも治せるのは確かだ。

いまだにこの手足が吹き飛んじゃったんだって、

感覚だけ残ってるけど、ああ、

あの服、一着しかなかったのに、今じゃ患者用の服だ、

マーマリア先生は皆を全回復していってるようだけど。


「アボウト、クスケル、応急処置は済んだみたいだな、

 他の学生の治療が終わったら、

 バムを捕まえてくれ」


「へえ合点だ、マーマリア先生」

「バムもさすがに校舎じゃ爆発能力は使えないだろうから、

 へっへっ、実験するとかそういうのは楽しいですぜ」


 このアボウト、とクスケルって人、

見かけによらず、回復能力なんだ、

いかにもって感じのいかつい二人だけど、


「さて、念のためにも、

 メナクリア達に状態治療とやらを、

 してもらっておこうか、

 回復は出来るが、ウィルスや、

 病原体に汚染されてないとも限らないからな」


「はい、私、メナクリア、

 ファナイ、ポスポロウ、

 三名で感染チェックをしました、

 誰も治療後に特別な状態異常は無いようです」


 メナクリアを始めにした、

この三人は状態異常を治す能力なのか? 


「でと、蘇生担当の、

 ウェッチョイとキリクト、

 ポーラニカ、ヴェイトア、

 トラミスタはもう帰っても良いぞ、

 皆、息は吹き返したから、

 あとは丸焦げから回復だけで済むからな」


「はい、キリクトは皆と共に寮に帰ります、

 あまり無理なさらず、マーマリア先生」


「あ、それと、

 ポーラニカ、添い寝で蘇生させるのはいいが、

 衛生面の問題があるから、緊急時以外は、

 注意するように」


「はーい、でも私の能力は、

 添い寝しないと発揮されないんだよなあ」


「トラミスタも、死体蹴りで、

 生き返らせるなんて能力、

 一般の患者には見せられないからな」


「お、おれっすか?

 でもこの方法しかないんだよな、

 俺の蘇生能力」


「中ではウェッチョイが一番マシだったが、

 何にしても蘇生能力持ちが、

 こうも不安定だとな、皆ヴェイトアを見習うように」


「えー! ヴェイトアは目からビームですよ!

 そんな蘇生ビームを褒めるなんて、ぷんぷん」


 ぞくぞくと、寮にかえっていく、

生徒たち、気付いたらもう夕焼けか、

病室から見える景色はまた違った感じがあるな。


「回復なら! 私たちが!」


 なんだろう、研究室よりも、

保健室のほうが充実してる感じがあって、

かなりの数の子がいるけれど、


「レタッキャ、ナノニアか、

 ナノニアのキラキラは取扱いやすいから、

 患者に使って反応を見よう、

 レタッキャは私のかわりに、

 五体満足といかない患者を治してやってくれ、と」


 わっ、保健室にぬっと入ってきた、

この丸い動物は一体? 白衣を着てるけれど。


「ピナマンセムにモータグラか、

 わざわざ病院から来てくれたとなると、

 何かしてほしいが、

 少し研修中の回復係を見守っていてくれ、

 彼らの魔力で充分に回復しきれるはずだから」


「はいマーマリア先生、

 回復組で、本来一番に辿りつかねば、

 ならなかった、わたし達全体回復組ですが、

 ピナマンセムさんの歩みに合わせると」


 丸いシルエットのピナマンセムさんと、

モータグラさんはちょっと困ってるぽかったけど、

何にしても僕らに対して、

総勢十数名で治療してくれたわけだから、

礼は言いたいな、


「あと、ヒュート、五体が無事なら、

 もう寮の自室に帰っていいぞ、

 魔女フテンレスがお前の服を新調してくれるそうだから、

 悩む必要は無い、他の患者が待ってるんでな」


「あ、はい、じゃあワープを」


 弱ったところからワープしたけど、

どうやらここが並行世界のゴール地点って感じか、

何故だか、選択肢の前に飛べない、

誰も集まってない、自室の中にワープしてしまった。


「色々、考えることはあるけど、

 今日はこれでお終いにしよう、

 お腹がすいたな、ん?」


『とりあえずパンでもかじってなさい by 魔女フテンレス』


 置き手紙というよりメモだな、

フテンレスも心配してくれたってこと、

詰め込めるだけパンを詰め込んで、

これで一日終わりってところか、

色々あった一日だったけど、

きっとみんなは覚えてない、

多分、バムの話でもちきりなんだろうな、明日は。


 僕はパンを平らげて、

自分のベッドで眠りについた。

 何となく、この世界の死生観は見えてきたけど、

バム以外の皆が黒焦げだったのを見ると、

僕もああだったってことだから、

何にしても心配になっちゃうのは確かだ、

これから何度も死ぬことになる?

マーマリア先生はとてつもないことを、

言う人だな。

 

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