魔法学校までの道中
僕は召喚された、
名前はヒュート、
でもそれしか記憶が無い、
召喚される前がどうだったかという記憶のかわりに、
神様からギフトとして魔法ともいえる能力を授かるのだそうだけど、
ほんとのところ、赤ん坊でもないのに記憶が無いってのは、
考えようだとは思ってるんだ。
僕の名前はヒュート、
魔女フテンレスに召喚された召喚人、
転移能力者と呼ばれワープすることが出来る。
僕はとにかく、この世界を知ることに務める。
「この世界の名は?」
「ワールド・アルタルデア」
「僕たちのいる国は?」
「アセンドリア王国よ」
分からないことの方が一杯だった、
魔女フテンレスが僕を初日早々に連れていきたいという場所が、
どこなのか分からないけれど、僕は記憶するために、
魔女フテンレスからメモ帳とペンを受け取って、
これを記録した。
「僕たちの向かっている場所は?」
「アクリア魔法学校、この王国の召喚人という召喚人を、
連れてきて運営しているアセンドリア王国の研究機関よ」
記憶しておかなければならないことだろうか?
わからない、なんとなく世界があって、王国があって、
そして、
「魔王」
「魔王の事は学校についてから話すわ、
それにしてもあなたの転移能力も、
限定的ってわけね、
知らないところや見てないところには、
ワープできないようだものね」
フテンレスから言われて何となく、
自分の能力が低く感じるところもあった、
召喚されたというなら、
召喚される前の世界にワープなども、
できるのではないかと思ったが、
あいにく記憶が無いのでワープも出来ない、
この世界に縛り付けられてるってわけだ。
「なかなか不満げな表情ね、
気に入ったわヒュート
さて、ここが魔法学校の正門よ」
「ここが」
自然豊かな校庭と、
菜園も持っているのだろうか?
敷地面積は1つの村などすっぽりと、
収まってしまうくらい広く、
自然に流れていく川を分岐させて運河にし、
整えられた緑が目によく映る、
その中にいくつもの施設が用意されているようであり、
ここで学ぶことは多そうだ。
「なにせ召喚人という召喚人を、
一挙に集めるってことで、
ひとつの丘を有志から買って、そこを、
王国直轄の魔法学校に変えたってわけだから、
これもまたひとつの魔法みたいなものね」
正門の門番の窓口で手続きを済ませて、
この魔女の事が余計に気になってきた。
「フテンレスはどういう立ち位置なの?
その格好を見る分には召喚術士って呼ばれてる人や、
他の城仕えのひととも違うみたいだけど」
「まあ、私は勇者の仲間ってところね、
ヒュートも直にそうなるわ」
話を切り替えるのが手早いので、
歩くこと、書くこと、
色々と集中することが多いが、
学校の校舎にまで辿りついた。
「まあ、ここで元気にしてなさい、
ヒュート、
ここで学んだことが、
大体、アンタの基礎を形作るから、
アンタの動き次第で、
勇者の対応も変わるでしょうね」
「僕は」
僕は自分が通うことになった学校と、
そして日常を過ごすことになる校舎を、
手早く案内されて、
まだ見ぬ召喚人の仲間たちに関して、
そして彼らが仲間と、
僕、ヒュートを認めてくれるのか、
それがとても気になっていた。
それがとても不安でもあった。
(誰ともすれ違わなかったな
授業中、だったからかな?)
寮で過ごす時間はそんなに長いものでも無かったけど、
一日、気の休まることに使っていたら、
どちらにしても元気になれたような気がする。
僕には荷物も無かったけれど、
これから必要に応じて、魔女フテンレスが王国に手配して、
教材や生活雑貨から何まで用意してくれるって言ってたけど、
とにかく今は休むことにしよう。