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とくに何にでもないこと  作者: 桂木イオ
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頭痛と倦怠感に溺れる

一日調子悪かったなって

 これは持論だが、私達人間は、夜目を閉じる度に死んでいるのだと思う。

私達は未来にも、過去にも行く事はできない。どれだけ未来を予測しても、過去の思い出に浸っても、歩いている自分は「今」の自分であり、後ろには過去の屍体が積もるのみなのだと思う。

 この考えに基づき、私は以前「葬儀」というタイトルのSSを書いたことがある。友人に見せると、彼女は「よくわからない」と一言感想を述べると、それきり別の話になってしまった。3年前に書いたものを改めて読み返すと、たしかに、ほの暗いばかりで伝えたいものがはっきりとしない。作品についての感想を過去の自分に問いただしたいが、きっと彼女は今あの森の中で冷たくなっているのだろう。

 毎日同じ人間など、この世にはいない。私達は過去の自分から記憶を引き継いで、今を生きている。二度と記憶を渡す自分がいなくなる時が、呼吸を辞めた時なのだろう。

 気圧の変化によっておきた頭痛に不快感を抱いていた今日、混み合っている電車の中で3年前のクラスメイトと再会した。

 元々綺麗な人だったが、さらに美しい人になっていた。微かに漂う過去の彼女の姿を頼りに声をかけたが、月日が経てば経つほど、人は変わってしまうのだなと感じずにはいられなかった。

 雨が降っている。変わらない身体など、変わらない心などないはずなのに、変わらないものを無意識に欲してしまうのは、なぜなのだろうか?

 生ぬるくなったインスタントコーヒーを口に運んでは、霞む目を擦る。あの小説に基づけば、今日も私の中で、私の葬儀が厳かに執り行われるのだろう。参列者に、過去になりかけた今の私を引き連れて。

 そして、新しい私が、朝の日に祝福され、可愛げなく誕生するのである。

 なんて幸いなことか。私はきっとまた、文字を書き続けることを許されるのだ。


昨日の夕飯が思い出せません

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