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異世界転生ダンジョンマスターとはぐれモノ探索者たちの憂鬱~この世界、脳筋な奴が多すぎる~  作者: 北乃ゆうひ
第三章 樹海の迷廊に挑み戦う探索者たち

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88/210

3-35.『サリトス:森緑に咲き狂う焔華』

サブタイトルの読みは 焔華(エンカ)


4/7 本作の書籍版『俺はダンジョンマスター、真の迷宮探索というものを教えてやろう』が発売ですッ!(7日が日曜日なので入荷予定日は5日頃になるようです)


また、4/1~ 秋葉原スープカレーカムイさんとのコラボも始まりますッ!

あわせてよろしくお願いしますッ!!


 地面を蹴り、爪を掲げながら飛びかかってくる緑狼王(りょくろうおう)。

 振り下ろされる爪を避けながら、すれ違いざまに斬りつける。


 手応えはあったものの、肉を切り裂いたというよりも分厚い革の鎧を斬ったような感触。

 毛皮と分厚い皮膚とがこちらの斬撃を防いだのだろう。


「攻撃は早く鋭く、それでいて決して防御も脆くない。厄介な相手だ」


 振り向き、剣を構え直すと、緑狼王も牙を剥きながら姿勢を低くしている。

 それを見て、俺は素早く踏み込んでいく。

 相手が飛びかかってくる前に、牽制を兼ねての振り下ろし。


 緑狼王はそれを軽く後ろに跳んで避ける。

 着地と同時に――


「WAOOOOOON!!」


 緑狼王は口を真上に向けて大きく吠えた。

 咆哮によって空気が震え、衝撃波となって俺を襲う。


 咄嗟にその場から飛び退こうとするものの、躱しきれずに咆哮を浴びる。


 威力そのものは大きくない。

 だが――衝撃波にさらされた身体が、うまく動かせなくなった。


「ぐッ……!?」


 緑狼王が前足で数度地面を叩き、身体を沈める。


(来る――……ッ!?)


 まずい――とそう思った瞬間、フレッドの声が聞こえてきた。


「リバース・テトラッ!」


 同時に三本の矢が跳んできて、俺の周囲に突き刺さるとテトラ・ケージそっくりの檻を創り出す。

 一瞬遅れて、緑狼王の爪が俺に襲いかかった。


 俺を囲うテトラ・ケージを緑狼王の爪が叩く。

 ピキリとケージにヒビが入ると、一瞬遅れて爽快な音ともに崩れていく。そして、その破片が緑狼王へと向かって飛んでいった。


 緑狼王はたまらずその場から飛び退く。


「旦那? 動けるかい?」

「すまない。助かった」

「ここからは二人掛かりといこうぜ」

「ああッ!」


 俺の背後で、フレッドは見た目だけなら簡素な木製弓――秘密の花園で手に入れた、緑の賢弓(イー・バウ)に木製の矢を番(つが)える。


 あの弓の呪文効果は、木の矢を番えた時にだけ使えるという特殊なものだ。


「猛毒付与(イチイバル)……」


 フレッドが呪文を唱えると、番えた矢が紫色の光に包まれる。

 その効果は、攻撃力と貫通力を高め、さらに鏃(やじり)に猛毒効果が付く。


「旦那、いくぜ?」


 そう告げると、フレッドが猛毒付与された矢を放つ。

 猛毒付与がされた矢は、アーツを上乗せして放つことができなくなるらしいが、そんなものを使わずともフレッドの弓の腕は良い。


 その腕を信じて、俺は地を蹴った。


「そらッ、そらッ、そらッ!」


 俺に当てないように、だがしっかりと緑狼王を牽制できるように、フレッドは猛毒付与した矢を連射する。


 フレッドの放つ矢の危険性を本能的に察しているのだろう。

 緑狼王はステップを踏むようにそれを避けていく。


 何発目かの矢が放たれた時、緑狼王は左側へと飛ぶ。フレッドはまるでそれを見計らっていたかのように、着地地点へともう一射放った。

 だが、緑狼王は身体を無理矢理捻るようにそれを躱す。


 さすがは王の名を冠するモンスターだ。ふつうのモンスターであれば当たっていただろう攻撃を躱してみせる。

 しかし――強引に躱したその瞬間は、俺にとっての大きな狙い目だッ!


「走牙(ソウガ)……」


 ルーマを籠めた刃をしたから上へと切り上げ、空気を朧に歪めるような剣圧が巻き上がる。

 そのまま剣を引き、俺は剣圧の中心へ向けて剣を突き出す。


「……疾風突(シップウトツ)ッ!」


 斬撃は緑狼王を捉えた。だが続く突きは、避けられてしまった。

 思わず胸中で舌うちをしたところで、緑狼王の植物の蔦を思わせる尻尾の先端がこちらに向いた。


「?」


 警戒しつつ訝しんだ時、その先端が鋭く尖り、尻尾が勢いよく伸びてきた。


「……ッ!?」


 咄嗟に剣で払い、後ろへ飛び退く。


「旦那ッ!?」

「大丈夫だ。問題ない。焦ったがな」


 また間合いが開いてしまった。


「同じ手は――通用しなさそうね」

「別に近づく手は一つだけじゃないだろう?」

「そうだけどね」


 さて、次の手は――とそう思案した時、緑狼王が大きく息を吸い込む。すると不自然に喉の下あたりが膨らんだ。


「フレッドッ!」

「旦那ッ!」


 お互いがお互いに警告しあった直後、その口から濁った緑色のブレス攻撃が放たれる。

 俺たち二人を同時に狙うような愚は犯さず、緑狼王の吐き出したブレスはフレッドめがけて向かっていく。


 無論、フレッドはそんなものに当たることはなく、吐き出される直前にその場から大きく跳んで躱している。


 跳びながらフレッドは狙いを付けて、空中から矢を放つ。


「クエイカーショット!」


 ルーマが乗り黄色く輝く矢が一条、緑狼王の足下に突き刺さった。

 直後、地面がめくりあがって土砂が巻き上がる。


 緑狼王は土砂をかぶるのを嫌がって横に動く。

 そこへすかさず俺は斬り込んでいった。


「ふ――ッ!」


 呼気と共に振り抜いた刃は、しかし硬質化した尻尾で受け止められてしまう。


「なんとも多芸な狼だな、おまえは……ッ!」


 思わず口に出して毒づく。

 振り払われる尻尾に剣を弾かれ、俺は数歩たたらを踏む。


「ヒートアップ」


 その直後に、頭上の方からケーンの声が聞こえた。

 きっとそれが灼熱色の脚具(グリーブ)の呪文効果なのだろう。


 両足が炎に包まれたケーンが蹴りを放ちながら落下してきた。


 緑狼王の正面はフレッドの攻撃により足場が悪くなっている。

 右側面には俺がいるし、尻尾も俺の攻撃を弾いた直後。

 そしてケーンは、左側面へ攻撃している。


 それでも背面へと跳ぼうとするのは大したものだ。

 だが――


「甘いぞッ、緑狼王ッ! 甘んじてそいつに蹴られるがいいッ!」


 デュンケルが蒼い火柱を創り出してそれを制した。

 直接、緑狼王を狙わなかったのは、眷属の狼三匹に囲まれていたからだろう。


「ありがとよッ、デュンケルッ!!」


 ケーンの燃え盛る跳び蹴りが、緑狼王の横腹に突き刺さる。


「きゃわん……ッ!?」


 狼――というよりも犬のような悲鳴をあげる緑狼王に、ケーンは軽く腰を落としてチカラを籠めた横蹴りを放つ。

 強烈な打撃。そして蹴られた場所は打撃痕と共に火傷が広がる。


「まだまだいくぜッ?」


 ケーンはステップを踏むように一歩前進して、地面に片膝を付く。


「火燕(ヒエン)昇竜脚(ショウリュウキャク)ッ!」


 そこから繰り出されるのは、勢いよく飛び上がりながら後方宙返り(サマーサルト)のように放たれる蹴りだ。

 緑狼王は炎を纏った脚に腹部を蹴り上げられ、ケーンと共に宙へと舞い上がる。


 空中でくるりと回ったケーン。彼と異なり無理矢理打ち上げられダメージを受けた緑狼王は、受け身をとろうと身動(みじろ)ぎをしているがうまくいかないようだ。


「おまけだッ、火燕追堕(ヒエンツイダ)ッ!!」


 ともに宙を舞う緑狼王へ、ケーンは炎を纏ったカカト落としを繰り出す。

 そのカカトはヒットすると同時に爆発が巻き起こり、緑狼王を地面へと叩きつけた。


「ちッ、タフだねぇ……」


 地面にバウンドし、身体から煙を上げながらも緑狼王は素早く立ち上がるのを見て、ケーンがうめく。

 それでもダメージは入っているのは間違いない。


 立ち上がる緑狼王へと、俺は剣を突きだした。

 剣と腕力をルーマで強化した突きが、ケーンの攻撃によってフラついていた緑狼王の横腹へと突き刺さる。


「Guuuuuu……ッ!!」


 緑狼王は低く呻きながら、硬質させた尻尾を俺へ向けて振り回す。

 咄嗟に剣から手を離し飛び退こうとするが間に合わず、俺は腹部を強打されて吹き飛ばされた。


 地面に数度バウンドしつつも、すぐに立ち上がる。


 愛用の剣は緑狼王に刺さりっぱなしなので、まだ使い方を練習している途中の刀(タチ)――肢閃刀(しせんとう)・絆魂(はんごん)を抜き放つ。


 胸当ての下で、あばらのあたりがズキズキしているが、気にしている場合ではない。


 眷属の何匹かが俺の方へと集まってくる。

 痛がって動けなければ、噛み砕かれてしまうのだから、やるしかない。


 そう思っていると、緑狼王が奇妙な動きを見せる。


 先ほどの動きを制してくる遠吠えの準備行動のように思えるが、同時に眷属の狼たちも全てが同じように構えはじめたのだ。


 痛む胸元を堪えて、俺は叫ぶ。


「ディアリナッ! 護光防陣(ゴコウボウジン)だッ! 急げッ! みんなは俺かディアリナの作る結界の内側へ急げッ!」

「了解したよッ!」


 叫び返してくるディアリナ。

 そこへ、アサヒも声をあげる。


「護光防陣(ゴコウボウジン)でしたら私(わたくし)も使えますッ! バド様とゼーロス様は、私の近くへッ!」

「悪いアサ姉ッ!」

「すまんわいなッ!」


 続けて、ディアリナと俺も近くにいるメンバーの名前を呼ぶ。


「デュンケルはこっちだよッ!」

「世話になるッ、ディアリナ!」

「フレッドッ、ケーンッ!」

「あいよッ!」

「悪いねッ!」


 示し合わせたわけではないが、俺たち三人の声が唱和し、地面に剣を突き立てる。


「護光防陣(ゴコウボウジン)ッ!」


 突き刺さった剣を中心に、決して大きくはない円が生まれ、そこから薄い光の壁のようなものが生み出された。


 直後――


「WAOOOOOON!!」

「aoooooon!!」

「waoooooon!!」


 緑狼王を中心に、この場にいる全ての狼たちが雄叫びをあげた。

 雄叫びによって震える空気が、光の壁にぶつかって消えていく。


 それが収まった時、真っ先に動いたのはディアリナとデュンケルだ。


 ディアリナは近場にいた狼をまとめて切り裂いたあと、大上段に剣を構えた。


「剛烈(ゴウレツ)走牙刃(ソウガジン)ッ!」


 そこに道を拓くように大剣が振り下ろされる。

 振り下ろされた剣から放たれた巨大な走牙刃(ソウガジン)の行き先は緑狼王だ。


 地面を削り突き進む衝撃波をデュンケルが追いかける。


 ディアリナの放ったアーツは、通常の走牙刃に比べると遅い速度ゆえに、緑狼王もそれを最小の動きで躱してみせた。


 だが、その動きにはキレがない。

 身体に突き刺さっている剣に加え、先ほどの雄叫びが体力を使わせたのだろう。


「その隙ッ、逃さぬぞ緑狼王ッ!

 我が双蒼(そうそう)腕舞式(わんぶしき)戦闘術――その神髄が一つッ! 味わっていけッ!」


 蒼い炎で右手を覆い、デュンケルは地面を蹴って相手の頭に浴びせるように炎を放つ。

 それを緑狼王は躱さない――あるいは躱せないのか。


「遠慮をする必要はないッ!」


 続けて両手の五指に火を灯し、左手の指を突き立てるように突き出す。

 突き刺さると同時に左手は爆発するように炎を吐き出し、続けて右手を同じように突き出し、やはりこちらも爆発する。


「我が炎ッ、尽きるコトなどないからなッ!!」


 両手を引き戻し、再び五指に炎を灯すと、その爪で引き裂くように怒濤の連続攻撃を切り出していく。


「存分にッ、泣きッ、喚き、死んでいくといいッ!!」


 緑狼王を助けようと、眷属たちが動き出すが、今のデュンケルを止めさせることなど、我々がさせるわけがない。


「これぞ我が恩讐の炎の舞い――」


 両手の指に灯っていた炎が広がりはじめ、デュンケルの肘まで覆い尽くすと、その手を構える。


 そしてボロボロの緑狼王に向けて、その両腕を振るう。

 交差した三日月形の炎が放たれ、緑狼王を切り裂き、焼きながら、吹き飛ばす。


 だが、この技はここで終わらないようだ。


 再び両手に炎を灯すと、一度両腕を左右に大きく開いたあと、正面で両手首を付けて開いた掌を緑狼王へ向た。


「焔讐(エンシュウ)閃蒼破(センソウハ)だぁぁぁぁぁぁぁ――……ッ!!!!」


 蒼い炎が両手の中心で束ねられ、閃光となって解き放たれる。

 炎に焼かれ動きをとれない緑狼王は、為す術もなく蒼い閃光に飲み込まれ、直後に巨大な火柱が立つ。


 その青白い火柱を見ながら――


「我が恩讐の炎に抱かれて死ぬがいい」


 デュンケルはそう告げて、右手に残った炎の残滓を振り払った。



ミーカ「デュンケルくんの活躍なのに……オチがないヨッ!?」

アユム「……これは由々しき事態だ……」

ミツ「何気に酷いですねお二人とも……」


 次回もサリトス視点で続きの予定です。


4/7 (7日が日曜日なので入荷予定日は5日頃になるようです)

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また、4/1~

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本作の書籍版 発売中ですッ!
『俺はダンジョンマスター、真の迷宮探索というものを教えてやろう』
俺ダン

(講談社レジェンドノベルス)


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― 新着の感想 ―
デュンケルがちょっとかっこいいのなんか悔しいな
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