3-35.『サリトス:森緑に咲き狂う焔華』
サブタイトルの読みは 焔華
4/7 本作の書籍版『俺はダンジョンマスター、真の迷宮探索というものを教えてやろう』が発売ですッ!(7日が日曜日なので入荷予定日は5日頃になるようです)
また、4/1~ 秋葉原スープカレーカムイさんとのコラボも始まりますッ!
あわせてよろしくお願いしますッ!!
地面を蹴り、爪を掲げながら飛びかかってくる緑狼王。
振り下ろされる爪を避けながら、すれ違いざまに斬りつける。
手応えはあったものの、肉を切り裂いたというよりも分厚い革の鎧を斬ったような感触。
毛皮と分厚い皮膚とがこちらの斬撃を防いだのだろう。
「攻撃は早く鋭く、それでいて決して防御も脆くない。厄介な相手だ」
振り向き、剣を構え直すと、緑狼王も牙を剥きながら姿勢を低くしている。
それを見て、俺は素早く踏み込んでいく。
相手が飛びかかってくる前に、牽制を兼ねての振り下ろし。
緑狼王はそれを軽く後ろに跳んで避ける。
着地と同時に――
「WAOOOOOON!!」
緑狼王は口を真上に向けて大きく吠えた。
咆哮によって空気が震え、衝撃波となって俺を襲う。
咄嗟にその場から飛び退こうとするものの、躱しきれずに咆哮を浴びる。
威力そのものは大きくない。
だが――衝撃波にさらされた身体が、うまく動かせなくなった。
「ぐッ……!?」
緑狼王が前足で数度地面を叩き、身体を沈める。
(来る――……ッ!?)
まずい――とそう思った瞬間、フレッドの声が聞こえてきた。
「リバース・テトラッ!」
同時に三本の矢が跳んできて、俺の周囲に突き刺さるとテトラ・ケージそっくりの檻を創り出す。
一瞬遅れて、緑狼王の爪が俺に襲いかかった。
俺を囲うテトラ・ケージを緑狼王の爪が叩く。
ピキリとケージにヒビが入ると、一瞬遅れて爽快な音ともに崩れていく。そして、その破片が緑狼王へと向かって飛んでいった。
緑狼王はたまらずその場から飛び退く。
「旦那? 動けるかい?」
「すまない。助かった」
「ここからは二人掛かりといこうぜ」
「ああッ!」
俺の背後で、フレッドは見た目だけなら簡素な木製弓――秘密の花園で手に入れた、緑の賢弓に木製の矢を番える。
あの弓の呪文効果は、木の矢を番えた時にだけ使えるという特殊なものだ。
「猛毒付与……」
フレッドが呪文を唱えると、番えた矢が紫色の光に包まれる。
その効果は、攻撃力と貫通力を高め、さらに鏃に猛毒効果が付く。
「旦那、いくぜ?」
そう告げると、フレッドが猛毒付与された矢を放つ。
猛毒付与がされた矢は、アーツを上乗せして放つことができなくなるらしいが、そんなものを使わずともフレッドの弓の腕は良い。
その腕を信じて、俺は地を蹴った。
「そらッ、そらッ、そらッ!」
俺に当てないように、だがしっかりと緑狼王を牽制できるように、フレッドは猛毒付与した矢を連射する。
フレッドの放つ矢の危険性を本能的に察しているのだろう。
緑狼王はステップを踏むようにそれを避けていく。
何発目かの矢が放たれた時、緑狼王は左側へと飛ぶ。フレッドはまるでそれを見計らっていたかのように、着地地点へともう一射放った。
だが、緑狼王は身体を無理矢理捻るようにそれを躱す。
さすがは王の名を冠するモンスターだ。ふつうのモンスターであれば当たっていただろう攻撃を躱してみせる。
しかし――強引に躱したその瞬間は、俺にとっての大きな狙い目だッ!
「走牙……」
ルーマを籠めた刃をしたから上へと切り上げ、空気を朧に歪めるような剣圧が巻き上がる。
そのまま剣を引き、俺は剣圧の中心へ向けて剣を突き出す。
「……疾風突ッ!」
斬撃は緑狼王を捉えた。だが続く突きは、避けられてしまった。
思わず胸中で舌うちをしたところで、緑狼王の植物の蔦を思わせる尻尾の先端がこちらに向いた。
「?」
警戒しつつ訝しんだ時、その先端が鋭く尖り、尻尾が勢いよく伸びてきた。
「……ッ!?」
咄嗟に剣で払い、後ろへ飛び退く。
「旦那ッ!?」
「大丈夫だ。問題ない。焦ったがな」
また間合いが開いてしまった。
「同じ手は――通用しなさそうね」
「別に近づく手は一つだけじゃないだろう?」
「そうだけどね」
さて、次の手は――とそう思案した時、緑狼王が大きく息を吸い込む。すると不自然に喉の下あたりが膨らんだ。
「フレッドッ!」
「旦那ッ!」
お互いがお互いに警告しあった直後、その口から濁った緑色のブレス攻撃が放たれる。
俺たち二人を同時に狙うような愚は犯さず、緑狼王の吐き出したブレスはフレッドめがけて向かっていく。
無論、フレッドはそんなものに当たることはなく、吐き出される直前にその場から大きく跳んで躱している。
跳びながらフレッドは狙いを付けて、空中から矢を放つ。
「クエイカーショット!」
ルーマが乗り黄色く輝く矢が一条、緑狼王の足下に突き刺さった。
直後、地面がめくりあがって土砂が巻き上がる。
緑狼王は土砂をかぶるのを嫌がって横に動く。
そこへすかさず俺は斬り込んでいった。
「ふ――ッ!」
呼気と共に振り抜いた刃は、しかし硬質化した尻尾で受け止められてしまう。
「なんとも多芸な狼だな、おまえは……ッ!」
思わず口に出して毒づく。
振り払われる尻尾に剣を弾かれ、俺は数歩たたらを踏む。
「ヒートアップ」
その直後に、頭上の方からケーンの声が聞こえた。
きっとそれが灼熱色の脚具の呪文効果なのだろう。
両足が炎に包まれたケーンが蹴りを放ちながら落下してきた。
緑狼王の正面はフレッドの攻撃により足場が悪くなっている。
右側面には俺がいるし、尻尾も俺の攻撃を弾いた直後。
そしてケーンは、左側面へ攻撃している。
それでも背面へと跳ぼうとするのは大したものだ。
だが――
「甘いぞッ、緑狼王ッ! 甘んじてそいつに蹴られるがいいッ!」
デュンケルが蒼い火柱を創り出してそれを制した。
直接、緑狼王を狙わなかったのは、眷属の狼三匹に囲まれていたからだろう。
「ありがとよッ、デュンケルッ!!」
ケーンの燃え盛る跳び蹴りが、緑狼王の横腹に突き刺さる。
「きゃわん……ッ!?」
狼――というよりも犬のような悲鳴をあげる緑狼王に、ケーンは軽く腰を落としてチカラを籠めた横蹴りを放つ。
強烈な打撃。そして蹴られた場所は打撃痕と共に火傷が広がる。
「まだまだいくぜッ?」
ケーンはステップを踏むように一歩前進して、地面に片膝を付く。
「火燕昇竜脚ッ!」
そこから繰り出されるのは、勢いよく飛び上がりながら後方宙返りのように放たれる蹴りだ。
緑狼王は炎を纏った脚に腹部を蹴り上げられ、ケーンと共に宙へと舞い上がる。
空中でくるりと回ったケーン。彼と異なり無理矢理打ち上げられダメージを受けた緑狼王は、受け身をとろうと身動ぎをしているがうまくいかないようだ。
「おまけだッ、火燕追堕ッ!!」
ともに宙を舞う緑狼王へ、ケーンは炎を纏ったカカト落としを繰り出す。
そのカカトはヒットすると同時に爆発が巻き起こり、緑狼王を地面へと叩きつけた。
「ちッ、タフだねぇ……」
地面にバウンドし、身体から煙を上げながらも緑狼王は素早く立ち上がるのを見て、ケーンがうめく。
それでもダメージは入っているのは間違いない。
立ち上がる緑狼王へと、俺は剣を突きだした。
剣と腕力をルーマで強化した突きが、ケーンの攻撃によってフラついていた緑狼王の横腹へと突き刺さる。
「Guuuuuu……ッ!!」
緑狼王は低く呻きながら、硬質させた尻尾を俺へ向けて振り回す。
咄嗟に剣から手を離し飛び退こうとするが間に合わず、俺は腹部を強打されて吹き飛ばされた。
地面に数度バウンドしつつも、すぐに立ち上がる。
愛用の剣は緑狼王に刺さりっぱなしなので、まだ使い方を練習している途中の刀――肢閃刀・絆魂を抜き放つ。
胸当ての下で、あばらのあたりがズキズキしているが、気にしている場合ではない。
眷属の何匹かが俺の方へと集まってくる。
痛がって動けなければ、噛み砕かれてしまうのだから、やるしかない。
そう思っていると、緑狼王が奇妙な動きを見せる。
先ほどの動きを制してくる遠吠えの準備行動のように思えるが、同時に眷属の狼たちも全てが同じように構えはじめたのだ。
痛む胸元を堪えて、俺は叫ぶ。
「ディアリナッ! 護光防陣だッ! 急げッ! みんなは俺かディアリナの作る結界の内側へ急げッ!」
「了解したよッ!」
叫び返してくるディアリナ。
そこへ、アサヒも声をあげる。
「護光防陣でしたら私も使えますッ! バド様とゼーロス様は、私の近くへッ!」
「悪いアサ姉ッ!」
「すまんわいなッ!」
続けて、ディアリナと俺も近くにいるメンバーの名前を呼ぶ。
「デュンケルはこっちだよッ!」
「世話になるッ、ディアリナ!」
「フレッドッ、ケーンッ!」
「あいよッ!」
「悪いねッ!」
示し合わせたわけではないが、俺たち三人の声が唱和し、地面に剣を突き立てる。
「護光防陣ッ!」
突き刺さった剣を中心に、決して大きくはない円が生まれ、そこから薄い光の壁のようなものが生み出された。
直後――
「WAOOOOOON!!」
「aoooooon!!」
「waoooooon!!」
緑狼王を中心に、この場にいる全ての狼たちが雄叫びをあげた。
雄叫びによって震える空気が、光の壁にぶつかって消えていく。
それが収まった時、真っ先に動いたのはディアリナとデュンケルだ。
ディアリナは近場にいた狼をまとめて切り裂いたあと、大上段に剣を構えた。
「剛烈走牙刃ッ!」
そこに道を拓くように大剣が振り下ろされる。
振り下ろされた剣から放たれた巨大な走牙刃の行き先は緑狼王だ。
地面を削り突き進む衝撃波をデュンケルが追いかける。
ディアリナの放ったアーツは、通常の走牙刃に比べると遅い速度ゆえに、緑狼王もそれを最小の動きで躱してみせた。
だが、その動きにはキレがない。
身体に突き刺さっている剣に加え、先ほどの雄叫びが体力を使わせたのだろう。
「その隙ッ、逃さぬぞ緑狼王ッ!
我が双蒼腕舞式戦闘術――その神髄が一つッ! 味わっていけッ!」
蒼い炎で右手を覆い、デュンケルは地面を蹴って相手の頭に浴びせるように炎を放つ。
それを緑狼王は躱さない――あるいは躱せないのか。
「遠慮をする必要はないッ!」
続けて両手の五指に火を灯し、左手の指を突き立てるように突き出す。
突き刺さると同時に左手は爆発するように炎を吐き出し、続けて右手を同じように突き出し、やはりこちらも爆発する。
「我が炎ッ、尽きるコトなどないからなッ!!」
両手を引き戻し、再び五指に炎を灯すと、その爪で引き裂くように怒濤の連続攻撃を切り出していく。
「存分にッ、泣きッ、喚き、死んでいくといいッ!!」
緑狼王を助けようと、眷属たちが動き出すが、今のデュンケルを止めさせることなど、我々がさせるわけがない。
「これぞ我が恩讐の炎の舞い――」
両手の指に灯っていた炎が広がりはじめ、デュンケルの肘まで覆い尽くすと、その手を構える。
そしてボロボロの緑狼王に向けて、その両腕を振るう。
交差した三日月形の炎が放たれ、緑狼王を切り裂き、焼きながら、吹き飛ばす。
だが、この技はここで終わらないようだ。
再び両手に炎を灯すと、一度両腕を左右に大きく開いたあと、正面で両手首を付けて開いた掌を緑狼王へ向た。
「焔讐閃蒼破だぁぁぁぁぁぁぁ――……ッ!!!!」
蒼い炎が両手の中心で束ねられ、閃光となって解き放たれる。
炎に焼かれ動きをとれない緑狼王は、為す術もなく蒼い閃光に飲み込まれ、直後に巨大な火柱が立つ。
その青白い火柱を見ながら――
「我が恩讐の炎に抱かれて死ぬがいい」
デュンケルはそう告げて、右手に残った炎の残滓を振り払った。
ミーカ「デュンケルくんの活躍なのに……オチがないヨッ!?」
アユム「……これは由々しき事態だ……」
ミツ「何気に酷いですねお二人とも……」
次回もサリトス視点で続きの予定です。
4/7 (7日が日曜日なので入荷予定日は5日頃になるようです)
本作の書籍版『俺はダンジョンマスター、真の迷宮探索というものを教えてやろう』が発売ですッ!
また、4/1~
秋葉原スープカレーカムイさんとのコラボも始まりますッ!
あわせてよろしくお願いしますッ!!





