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3-33.『ディアリナ:大きなクロバーの木の下で』

フロア5のタイトル看板の設置を忘れていたので、『3-15.ちょっと変わり種みたいな人が入ってきた』にて、加えました。


前話終盤のクロバーの木に関する描写が、少し前の回のものと矛盾していたので、修正しました。

少し前にクロバーの木の倒し方推測してる描写があったのすっかり忘れておりました。

なので「ディアリナの思いつき」→「事前に考えてきていたようだ」という風に変えてあります。



「これが、ボス部屋で厄介な木か」


 ミーカの店を出たあと、あたしたちはデュンケルと互いの戦い方を確認しあいながら、軽くフロア5を回っていく。

 その時に目に入ったのが、大きなクロバーの木だ。


「そうだ。この木から延々とグリーンヴォルフやリーフヴォルフたちが飛び降りてくる」


 何度聞いても厄介な話さね。

 ボスと戦いながら、雑魚を捌かなければならないっていうのは時折あるけれど、その数が多いというのはとにかく面倒だ。


「少人数でやりあうには、面倒な数だ。

 ただ眷属が多いだけならば、まだ戦い方はあったのだがな」


 デュンケルもギルマスも戦闘力は高い。

 それなのに、デュンケルが逃げ帰り、ギルマスが死に戻りしたっていうのはその数の暴力が尋常じゃなかったということさ。


「クロバーの木、ちゃんとビーケンの樹液で何とかできればいいわねぇ」

「確かこの近くに黄色い熊の縄張りがあったはずさね。そこにも巨大なクロバーの木があったよ」

「ならそこで実験だな」


 サリトスも同意してくれたので、早速実験だ。


「何をするつもりだ、お前たち?」

「この大きなクロバーの木をどうにかしてみようって話さね」


 首を傾げるデュンケルに、あたしは片目をつぶって見せてから、歩き出した。



 そうして黄色い熊が縄張りにしているエリアへ踏み入れ、熊の居ぬまに、手元にあるビーケン樹の樹液を、巨大なクロバーの木に塗りたくる。

 すると、その中心に黒い封石が出現する。


「どうやら大正解かもよ?」

「封石が出現するんだ。そうであってくれると嬉しいよ」


 フレッドと笑いあっていると、サリトスの声が割って入ってくる。


「そろそろ熊が巡回にくる。退くぞ、ディアリナ。フレッドは誘導を頼む」

「おう。任せとけって旦那」


 あたしらはフレッドから離れた物陰に隠れ、様子を伺う。


 フレッドは熊が来るだろうルートへと移動して、そこで少し待機。

 黄熊はフレッドを見つけると咆哮を上げてから追いかけはじめた。


 当のフレッドは、熊が咆哮を上げた時点で走り出している。

 追いかけられながらも、熊を誘導してクロバーの木へ向かう。

 それから熊の様子を見つつ、木の近くで一旦、立ち止まった。


 フレッドは熊を見据え、ギリギリまで引きつけてから、その脇をすり抜ける。

 熊は一度、フレッドを追おうと振り向くけど、何かに気づいたようにクロバーの木へと向き直った。


 その間にフレッドはあたしたちが隠れているところへと駆け込んでくる。


「おかえり、フレッド」

「ただいま、嬢ちゃん。いやー……心臓に悪いわー……」

「クククク、よく言う。随分と余裕に見えたがな」

「余裕だったけど、心臓には悪いんだわ」


 まぁ、あの熊の一撃をまともに受けたらタダじゃ済まないのは確かだしね。


 戻ってきたフレッドと軽く言葉を交わしていると、ドン! という激しい音が響いて、あたしらは慌てて音の出所を探る。


「熊だ」


 サリトスの言葉に、あたしらは黄熊の方を見やった。

 すると、熊はクロバーの木を何度も叩くようにしている。

 やがて、黒かった封石の色が白へと変わると、メリメリと音を立てて木が倒れた。


「成功だ。どうやら考え方は間違っていなかったらしいな」


 サリトスは小さく笑って立ち上がる。


「確か、フロア5には蝶のいない木があったな」

「そうさね。手元にある樹液と、そこで手に入る樹液を合わせて倒せるだけ木を倒してから帰るってので、どうだいデュンケル?」

「異論はないな。途中で戦闘もあるだろう。連携の確認などもそれでできよう」

「その都度、おっさんの心臓に負担かかるの勘弁よ?」


 おどけた調子で言うので、フレッドも本気では言っていないんだろう。けど、確かにフレッドばっかりに負担かけちゃうのも――ってのはあるね。


「だったら囮も持ち回りでやればいいだろう?」

「言ってみただけだったんだけど?」


 びっくりした顔をするフレッドに、サリトスとデュンケルも笑って告げる。


「確かに、フレッドばかりに囮をさせるのも負担が大きいか」

「くくくく、良いだろう。囮役、この俺が見事にこなしてやろう」


 フレッドがびっくりしている意味もわかるけどね。

 他の探索者(シーカー)とのチームだったら、囮の持ち回りなんて発想ないだろうしさ。


「あたしらは持ち回りでも構わないって考える変わり者の集まりなんだ。そこを気にしたら負けさね」


 変な顔して呆けているフレッドの肩を叩くと、あたしたちはクロバーの木を対処するべくダンジョンの中を歩き始めるのだった。




 見つけた巨大クロバーの木を一通り熊に倒してもらったところで、あたしたちは青い扉から脱出をする。


 街へ戻ったあと、今日はバドたちとの情報交換だ。


 明日はバドたちがデュンケルを連れて、連携の確認をする。

 その時、今回のあたしたちと同じようにクロバーの木を倒してまわるそうだ。


 お互いのチームがすべての木を倒し終わったら、その翌日は準備を兼ねた休息日にする予定になっている。


 狼の王様(ボス)との戦いの日まで、あと少しってところさね。

ちょっと短いですが、キリが良いのでここで区切らせて頂きます。



デュンケル「くくくくく……二度もサービスしてもらえるとはな……!」

ミーカ「バドくん達を連れてきてくれたからねー☆」


次回は、緑狼王との戦闘開始予定です。

ですが書籍化作業も追い込みの為、もしかしたら更新できないかもしれません。


そんなワケで、

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書影はまだ出てないので皆さんにお見せできませんが、めちゃくちゃカッコ良い表紙となっております。よろしくおねがいします。


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