3-25.『ディアリナ:樹上の狼と何か黒いの』
メリークリスマスですっ☆
まぁ本編はちょっと☆が飛ぶ以外、クリスマス要素ゼロでいつもどおりです。
12/25 23:35 誤字「不レッド」修正しました。
(普段この手の修正はこっそりやるんですが面白おかしく指摘されてしまったのでw ありがとうございます)
倒木をどかしてくれた赤熊と、直後に現れた黄熊を倒したあたしたちは、道幅が通常の三倍はありそうな部屋を進む。
黄熊の縄張りっぽいみたいだけど、それを倒しちゃってるからか、特に何かある部屋でもなさそうだね。
地図を見る限り、どうやらフロア5の左端にある辺りで、真っ直ぐ北へと向かっているみたいだ。
途中で道幅がいつも通りに戻り、そこからさらに北へ真っ直ぐ進むと、突き当たりには倒木があった。
「香りのしない木か」
「これもどうにか熊に壊してもらいたいわいな」
ましてやこの倒木の隙間からは、宝箱が見えてるんだからもどかしいね。
「行けぬものは仕方がない。
こちらの扉を開けるぞ」
サリトスがケーンとゼーロスに声をかけ、倒木の手前にある扉を開ける。
扉を抜けると左手はすぐに行き止まりになっている。
だけど、そこには、青い扉とアドレス・クリスタルが設置されていた。
もちろん、あたしたちは腕輪にここのクリスタルを登録する。
「フロア5、北西廊下――か」
登録された場所の名前を見ると、そう表示されている。
腕輪の地図を見れば、ここが北西の端のようだ。
腕輪へのクリスタルの登録を終えたあたしたちは、反対側へ進んでいく。
廊下の突き当たり左側には扉があり、その先はまた北へ向けて道がある。
そのまま北の突き当たりに到達すると、右手側に扉があった。
「クロバーの木の密集地帯だな」
「みんな、頭上から来るグリーンヴォルフには気をつけてくれ」
全員、クロバー地帯の厄介さは理解しているだろうけれど、改めてフレッドが警告してくれる。
そのおかげで、みんな気を引き締められた気がする。
グリーンヴォルフそのものは大して強くはないんだけど、ここの場合は頭上から飛びかかってくるからね。
結構それが厄介なのさ。
警戒しつつ、飛びかかってくる狼どもを対処しつつ、あたしたちはクロバー地帯を抜ける。
「む、熊か!?」
クロバー地帯を抜けた先にある扉をあけると、待ちかまえていたように赤熊がいた。
「さっきはケーンに譲ったわいな。ワシは暴れたりてないわい」
告げて、ゼーロスが前に出る。
「強敵ではあるが、倒せぬ敵ではないからの」
全員がすぐにフォローできるように準備できたのを確認したゼーロスは即座に地面を蹴った。
姿勢を低くして、肩から熊へとぶつかっていく。
「撃襲突ッ!」
タックルで怯んだ熊を、斧を振り上げるようにして斬りつける。
豪快ながらも流れるようなその攻撃は、人間相手なら十分な技だろうけれど、その程度でこの熊は倒せない。
当然、ゼーロスはそんなのを承知してるだろうさ。
だから、続けて振り上げた斧を構えて、ルーマを込めながら力一杯振り下ろした。
「豪激斬ッ!」
ルーマを込めた斧を力一杯振り下ろすだけ――というシンプルな技だけど、威力はお墨付きの一撃だ。
だけど熊は本能的に身をよじったのか、完全に捉え切れていない。
「ワシとしたことが、倒しそびれるとはの……だが――」
致命傷を避けた熊だけど、それは決して温いダメージじゃないのは見て取れる。
ザックリと身体を切り裂かれ、血を流す熊に、ゼーロスは笑った。
「おかげでもっとやる気がでてきたわいッ!」
さっき以上のルーマが、斧に込められていくのが見て取れる。
とんでもない量のルーマじゃないか……これは、大技だね。
「見せてやるわいなッ!」
力強い一歩とともに、強烈な横薙ぎが繰り出された。
その一撃がしっかりと熊を捉え、横一文字に深い傷が刻み込まれる。
「これがワシの豪激斬を越えた豪激斬ッ!」
最初の一撃でよろめく熊へ、より一層ルーマを込めた斧を大きく振りかぶり――
「真・豪激斬じゃああああッ!」
気合いとともに振り下ろしたッ!
熊を脳天からまっぷたつにするだけでは収まらず、熊の股を抜けた斧は、地面に叩きつけられる。
そこから地面に亀裂が入り、周囲の土砂を巻き上げながら噴出していく。
単純な威力だけ考えるなら、ハンパない一撃さね。
「ぐわぁぁぁはっはっはっはっはッ! 後ろに七人もおるから、大技使うのをためらう必要がないのは気が楽だわいなッ! 温存しながらでなければ熊も倒せるわいッ!」
大笑いをしながらこちらへと向き直り、ゼーロスは機嫌良く親指を上げて見せる。
「凄まじい威力にございました。
このような大技をお持ちでしたのですね。ゼーロス様」
「普段の探索だとルーマの温存を考慮する必要があるわいな。それに、洞窟や建物系のダンジョンだと、威力が高すぎてちと使いづらくての」
確かに、使い所を間違えちまうと、下手すりゃダンジョンを崩壊させちまう可能性がある技さね。
「良い大技を見せてもらったところで悪いが、余力は大丈夫か?」
「心配するでないわいサリトス。その程度の配分は出来とるわいな」
「そうか。ならば先へ進むぞ」
ゼーロスがうなずくのを確認し、倒した熊から素材を回収したあと、あたしたちは廊下を進み、突き当たりを南下する。
すると、小さな部屋があり、その奥には巨大なクロバーの木が生えていた。
「ここにもあるのか」
「結局、あの巨大なクロバーの木がなんなのか分からないままだね」
あたしが何となく口にすると、みんなも困ったような顔をする。
「……ディアリナ嬢ちゃん。少し木から離れた方がいいかもよ」
木を見上げたままでいたあたしへ、フレッドが神妙な顔で告げてきた。
それに素直に従ってあたしが下がると、上から、グリーンヴォルフ――よりも一回り大きくて、体毛の葉の数も多い狼が落ちてきた。
そう。
襲ってきたというよりも、木から落ちてきたという方が正しい。
何せ、背中から落下してきてるんだからね。
狼は地面に叩きつけられたあと、痛そうに身悶えしている。
「それっと」
そんな身悶えする狼に、あたしはスペクタクルズを投げた。
===《リーフヴォルフ ランクD》===
グレイヴォルフの亜種。グリーンヴォルフ系。
グリーンヴォルフがランクアップした姿。
体格が一回りほど大きくなり、体毛がより植物の葉に近くなっている。
木登りが得意で、その体毛を利用して、樹上で息を潜めて眼下の獲物に襲いかかる狩りを得意とする。
あくまでも木登りが得意というだけであり、通常の狩りが苦手というわけではない。
その体毛は、自分が生活する森や木の影響を受ける。これは自分の生活圏に適するように変化していくという特性によるものである。
生活圏が変わり、周囲の植物が変化してしまった時などは、生え変わりの時期を境に体毛の色や形が変化する。
固有ルーマ:なし
ドロップ
通常:葉狼の体毛
レア:葉狼の牙
クラスランクルート:
グリーンヴォルフ→リーフヴォルフ→???→???
===================
「グリーンヴォルフの上位種みたいだね」
それを確認してから、あたしは地面で身悶えてる狼にフレイムタンを突き立てて、ブリッツと口にする。
生き絶え、黒いモヤと化したリーフヴォルフを見ながらあたしは首を傾げた。
「しかし、何で急に上から落ちてきたりしたんだろうね……?」
何ともなしにあたしが頭上を見上げると、なにやら黒いモノが落ちてくる。
「え?」
狼ではないそれは、何やら叫びながら落ちてきて――
「このままでは終わらんからなぁぁぁぁぁぁぁぁ~~……ッ!!」
「え?」
あたしがどうして良いか分からず反応に困っているうちに、黒いのはぐんぐんと近づいてくる。
「えーっと、デュンケル?」
どうして上から降ってきているのか?
思わず首を傾げてしまっているうちに、目の前にその男が迫ってきていた。
(あ、やばい……)
そう思ったのも束の間、ゴンという大きな音を立てて、デュンケルのおでことあたしのおでこが衝突する。
痛み以上に、目の前に星が飛び散るなぁ……なんて思っていると、どんどんと意識が遠のいていく。
あー……これ、当たりどころ良くなかったやつだ……
なんて思っているうちに、あたしは立っていられなくなり、身体が傾いていくのを感じながらも、意識は完全にフェードしてしまうのだった。
……ちょっと、情けない倒れ方じゃないかね、これ……
アユム「おでことおでこだったのが救いだな」
ミーカ「唇だったら、目覚めたあとのディアリナちゃんがキレてたかもねッ☆」
次回はこのまま気絶してない誰かの視点で続きの予定です。
恐らくはこの話で本年の更新がラストになると思います。
ここまで読んで下さった皆様、本年は「ダンはぐ」にお付き合い頂き、ありがとうございました。
おかげでありがたいコトに書籍化も決まり、ドタバタした一年になりましたが、大変楽しい一年となりました。
来年も引き続き、「ダンはぐ」そして「書籍版:俺ダン」をよろしくして頂けたらと思います。
では皆様、よいお年をお迎えください。