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3-3.『バド:ミーカのダンジョンアナウンス』

みなさん、ブックマーク・評価等、ありがとうございます!

そのおかげで、8/15-18の期間、ファンタジー(異世界転生・転移)のデイリーで連続ランクインさせていただきました。

引き続き、ダンはぐをよろしくしてくれたら嬉しいです。


 ぴーん ぽーん

   ぱーん ぽーん――


『はぁ~い☆ ラヴュリントス探索中の皆様、初めまして☆

 ダンジョンマスター・アユム様に仕えるユニークサキュバスのミーカだよ~☆


 本日は~、皆様にお知らせがございま~す☆


 たった今、フロア4の探索をスタートしたチームが現れましたッ☆

 それに伴い、十日後には、お城の敷地北西の隅っこにある古井戸の中に、フロア4への階段を設置したいと思いま~す☆


 フロア3の探索が面倒くさ~いなんて思ってた人たちはこちらを利用するといいかなって、ミーカは思いますよ~ッ☆


 でも個人的には、ちゃんと真面目にフロア3を攻略するのをオススメしちゃうかな☆


 古井戸じゃない、正しいルートにある階段からゴールインできたチームには、攻略成功報酬として武器をお一つプレゼントしてるからねッ☆

 あ、チームに一つ……ではなくて、攻略チームのメンバー一人に付き一つだよ。安心してねッ☆


 さらに先着で五チーム……あ、さっきクリアしたチームがいるので、あと4チームッ!

 この4チームには、先着攻略特典もプレゼント中ッ☆


 先着攻略特典は、最初のチームに宝箱十個。次のチームには八個。その次は六個……なんてカンジで減っていくので、欲しいチームはガンガンドコドコがんばってね~☆


 あ! ミーカとガンドコしたいっていう人は、性別人種年齢問わず大募集だよ☆


 マスターから相手が死んじゃうような遊びは禁止されてるから、手心は加えてあげるけどネ☆


 それでも、人の身のままじゃ絶対に味わえない幸福感と一緒に、アタシとガンドコなんてしなければ良かったっていう人生最大の後悔と絶望感を刻み込んであげるから☆


 それじゃあみんな~☆

 引き続き、ラヴュリントスの攻略をがんばってね~☆


 ユニークサキュバスの、ミーカでした☆ きゃはッ☆』



   ――ぽーん ぱーん

 ぴーん ぽーん





 謁見の間近くのアドレス・クリスタルの前に、おれたちが降り立った時、そんな声がダンジョン中に響き渡って聞こえてきた。


「いや待て。さすがにサキュバスとの火遊びは危険通り越して自殺行為だろ」


 突然聞こえてきたミーカというサキュバスの声に、おれが思わずツッコミを入れる。

 それに、ケーンが笑いながら言った。


「だが、サキュバスと一夜過ごしたいってのは、男としては一度は考えるだろ?」

「……まぁ、否定はしないけど……」


 思わずうなずいてしまうと、アサ姉の視線が冷たくなった気がする。

 ……うん、ここは気づかなかったフリをすることにしよう。


「ワシも同意はするがの。アサヒの前であまりする話じゃないわいな」


 ゼーロスがガハハと笑うと、アサ姉は軽く息を吐いた。


「ところで、無知で申し訳ないのですが」

「ん?」

「サキュバスとはどのようなモンスターなのでしょうか?

 これまで私が探索してきたダンジョンではあまりお目にかかったコトがないものですから。

 先ほどの声や、みなさんのお話からして女性の姿をしているだろうというのは想像が付くのですが……斬りごたえなどは、どのようなものかと」


 アサ姉の言葉に、おれたち三人は顔を見合わせ、少し考える。


「単純な戦闘力だけで言うのであれば、そう強い相手ではないわいな」

「そうだな。ゼーロスの言う通りだ。

 ただ、探索中に遭遇したくないモンスターの筆頭ではある」


 最初にゼーロスが答えて、それにケーンもうなずく。

 おれは言葉を選ぶようにしながら、二人を補足する。


「前にリトルメアってのに遭遇しただろ?

 サキュバスはその上位種みたいなモンだ」

「理解しました。遭遇したくないというのも分かる気がします」


 実際リトルメアの囁き声にやられたことのあるアサ姉は顔を(しか)めた。


「見た目はアサ姉の想像通り女の姿で、人間の男の理想を体現したような体つきに、娼婦のような煽情的な格好をしているコトが多い。

 うっかり鼻の下を伸ばそうものなら、魔眼や囁き声で、魅了や混乱、眠気を誘いにくる。見た目にやられちまってる時点で、抗うのが難しいわけだ」

「ならば女性であれば対抗できるのでは?」

「いや、さっき流れてきたミーカも言ってただろ。サキュバスにも好みがあるみたいで、何が何でも男しか狙わないやつもいれば、女でも問題ないってやつもいる。

 精神的な抵抗力が無ければ、リトルメアより強力な精神攻撃の餌食だ」

「……リトルメアの囁きにも負けてしまう私は格好の餌食なワケですね……」


 わりとあのことがショックなのか、アサ姉はかなりしょんぼりしている。

 まぁでも、アサ姉のことだから、なんかよく分からない精神修行とかして克服してきそうではあるけれど。


「サキュバスの厄介なところは、相手好みの女に姿を変えるルーマをもっているコトだわいな」

「死別した恋人や生き別れの妹とかにも化けるらしいしな。

 眠らせた相手の夢に侵入して、夢の中で精神を浸食したりとかもするらしいぜ」

「あの手この手で精神攻撃をしてくるのですか……」

「ちなみに……サキュバスはメスしかいない種族だわい。

 そのかわり、まったく同じ能力を持ったオスしかいないインキュバスって種族もいるわいな」

「…………」


 ゼーロスとケーンの説明に頭を抱えるアサ姉。

 そこへ、おれがトドメをさすように告げた。


「サキュバスとインキュバスの一番恐ろしいところは、そうやって精神を絡め取った相手から、命や記憶、経験を吸い取るコトだな。

 連中からすればそれが食事らしいから、腹ぺこのサキュバスたちに遭遇するのはマジでやばい。

 精神攻撃だけでなく、ブレスの扱いにも長けてるってのも厄介なところだ。

 その得意な精神攻撃とブレスによる攻撃で、肉体と精神の両方を責めてくる」

「まるで私の天敵ではありませんか……」


 天を仰ぐようにうめくアサ姉。

 ミーカってやつと戦うかどうかは分からないけれど、サキュバスがいると分かった以上は、アサ姉には警告しておく必要はあるだろう。


 話し終わったあとで、ちょっとイヤなことを思い出して嘆息を漏らしていると、ゼーロスが不思議な顔をしてきた。


「実感が籠もってるわいな」

「ハラペコサキュバスの群れに襲われたコトがあってな。

 通りすがったフレッドに助けて貰わなければやばかった。

 もっとも、その時に一緒に逃げ回ってた連中は、逃げられないと諦めて、サキュバスの輪の中へ入ってったきりだけどな」

「……サキュバスたちの餌となって、迷神の沼へ沈んだか」

「経験も記憶も失い、沼への沈み方すら忘れたまま、亡者になっていないコトを祈る限りです」


 どうにも辛気くさい流れになってきたので、おれは空気を払うよう気楽な調子で肩をすくめる。


「ま、沈んじまった奴は仕方ないさ。おれの命があっただけ儲けモノだしな。

 それより、サキュバスの話題で盛り上がっちまったが、もっと重要な話があるだろう」


 そう――古井戸から先へ進むか、正しいルートで次へ進むか、だ。


「そうだな。

 まぁ――ここまで来て、王様に会わないってのはないだろ」


 ケーンの言葉にゼーロスとアサ姉もうなずいた。


「正規ルートで行けば、最低でも武器が一つ貰えると言ってたわいな。

 ここまで来て、やらない理由はないわい」

「ええ、そうですとも。

 サリトス様たちも苦戦したというお話を伺っております。そのような斬りごたえある敵を無視して進むなどありえません」

「満場一致だな」


 ここまで来たらやるだけやらないと勿体ないからな。


「10日も待つ気はないしさ」

「ああ。ほかの連中よりは先行しておきたいところだ」


 ケーンが胸元で、開いた左手に右手の拳をぶつけながら、ニヤリと笑う。


「オマケの報酬を八個もらうのは、わしらだわいな」

「次の機会があるのであれば、是非とも十個欲しいところですけれど」


 そのためには、まずはここで王様に会いにいかないとな。


「行こうぜ」


 すでに、四つの扉の先にあった石は破壊してある。

 あとは謁見の間で、王様と対峙するだけだ。


 おしゃべりを切り上げたおれたちは、この城の王が待つ玉座へと向かうために、それぞれに足を踏み出した。


ミーカ「アナウンス楽しかったぁー☆」

アユム「最後の言葉のせいで、ダンジョン中の雑談がサキュバスの話題になってるぞ……」

ミーカ「どーんとこーいッ!ってネ☆」

アユム「殺し禁止だけじゃなくて、遊んだあとのネガティブアフターケアも、トラウマにしすぎない程度のほどほどで頼むぞ……」


 次回はサリトスたちの探索風景の予定です。

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