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2-17.『フレッド:意外な遭遇と、さらなる探索』


 一通りの確認を終えたオレたちは、腕輪の容量を圧迫している素材達を売却することにした。


「売却、ありがとうございます。

 お売り頂いた素材を元に、完成度Dランクの商品の販売を開始しますよ」


 スケスケの言葉を確認するように、オレたちが商品を確認すると、確かにラインナップが増えている。


「新しく販売された商品はすべてのお客様に共有されます。

 皆さまがお売りいただいた素材によって販売開始されたモノは皆さまだけでなく、今後来るお客様も購入できますし、そのお客様が売却された素材を元に生まれた商品は、皆さまもご購入いただけます」

「売れば売るだけ商品が増えるのか?」

「はい。ですが、売っていただいた素材から作り出しておりますので、売り切れにはご容赦を」


 これはまた、難しい話になりそうな……。


「まぁわたしたちが売った素材をどう使おうがスケスケさんの自由ですからね」

「ああ。即座に別のモノに生まれ変わり販売されるから奇妙に思うが、冷静になってみれば当たり前のコトだ」


 ――と思いきや、サリトスの旦那とコロナちゃんは結構冷静だ。

 そして言われてみればその通りだと、オレでも分かる。


 確かに街の武具屋だって、探索者(シーカー)が持ち込んだ武具を買い取りそれを店頭に並べてるわけだしな。


 言われてみれば流れは同じだ。


「それをわざわざ口に出してこっちの頭を使わせようとしたんだろ?」

「はて、なんのコトでございましょう?」


 ディアリナ嬢ちゃんの言葉に、スケスケはわざとらしく首を傾げる。

 商人らしく、それなりに腹は黒いらしい。


「お腹は無いけど商人らしく真っ黒だね、スケスケさん」

「腹を割らずとも、後ろが見えるくらい透き通ってるんですけどねぇ」

「透き通ってるんじゃなくてお肉自体がないでしょ、もうッ!」


 コロナちゃんとスケスケのやりとりを横目に、オレとディアリナとサリトスの旦那はいくつか使えそうなアイテムを購入。

 アリアドネロープも売ってたので、念のために全員で一つずつ購入しておいた。


「補給はこんなものでいいな。

 コロナ、探索をもう少し続けたいんだが、良いか?」

「うんッ! アジトに戻って今回の分の精算をするまでは、わたしは探索者(シーカー)だからねッ!」


 ははっ、いい心がけだなぁ、コロナちゃん。

 しっかりと割り切れているというか、割り切れるところでちゃんと割り切れるというか。

 なまじ根っこが商人だから、他人にも自分にも色々シビアなのかもねぇ……。


「誰かがフロア4へ到達するまでは、私はこの支店にいるつもりですので、いつでも来店してください。

 私がいないと最低限の機能しか使えませんが、自動販売システムは稼働させておきますので、不在の場合もご自由にお使いくださいね」

「ああ。また利用させてもらう」


 スケスケと挨拶を交わし、オレたちは安全地帯から出て先へと進むことにする。


 廊下を出て反対側へと進むと階段がある。

 それを昇っていくと、恐らくは一階の廊下。

 階段はまだ上に続いてるけれど、とりあえず廊下に出てみる。


 だけど、廊下にでてすぐのところに鉄格子が降りていて、それ以上先には進めない。


「鉄格子のすぐそばに台座みたいのがあるね」

「うん。あれに赤い封石が付いてるから、向こう側からじゃないと触れないね」

「ならここは調べようがない。もう一つ上に行くとしよう」


 オレたちはさらに階段を昇り二階へと向かう。

 だけど、二階も同じように鉄格子があって進めそうになかった。


「これ、もしかして牢屋の迷路以外の道なんじゃないかな。

 この鉄格子を開けたい場合は、反対側から入るしかないんだと思う」


 コロナちゃんの考えに、オレたちはなるほどと納得する。

 確かに地下牢へ向かう階段付近には、まだ行ってない場所があった。

 そっちを通ってきた場合、ここに出るわけだ。


「どう進んで来ても、安全地帯と骸骨商会には行けるようになっているようだな」

「その辺り、ほんと親切だよねアユムってば」


 そんなやりとりをしていると、その廊下の途中にある扉から、見慣れた連中が姿を現した。


「む? おお! サリトスたちだわい!」


 即座にこちらに気づいたゼロースと、それに併せて挨拶してくる向こうのチームに、こっちからも挨拶を返した。


 ゼーロスの旦那、同志ケーンに、バド君、アサヒちゃんのチームも、結構進めているようだ。


「お前らの方が、少し先にいる感じか?」

「ここで出会えたのであれば、そう大差はない」


 気楽な調子で訊ねてくるケーンに、サリトスはそう返す。

 オレもそう思うわ。


「先に進むにはこの上に行くしかないけど、ゼーロスさんたちはまず地下へ行った方がいいと思うよ」

「どうしてかしら、コロナちゃん?」

「地下には、安全地帯があるし、今ならセブンスさんのようにダンジョン内を徘徊してるスケルトンのスケスケさんのお店があるから」

「あたしたちは、スケスケのところで補給させてもらったからね。もうちょっと進んでみるつもりさ」


 アサヒちゃんの問いに、ジオール姉妹が答えると、まぁとアサヒちゃんが華やいだ笑顔を浮かべる。


 いやぁ、女の子が集まってやりとりする姿って和むよねぇ……。

 そのおしゃべりの内容が、ダンジョンの情報交換であってもさ。


「スケスケのお店もいいけどね。バド君、もし入れるようなら、地下牢迷宮の出口になってる扉にも入ってみるといいよ。アドレス・クリスタルがあるから」

「もしかして、フレッドのおっさんたちは地下牢迷宮を抜けてきたのか?」

「おうよ。ほとんどコロナちゃん頼りだったけどな」

「あそこは、入って早々にお手上げで……帰り道も分からなくなって一回ロープ使って戻ったんだよ。

 そんで、どうしても通らないといけないのならともかく、他にルートあるならそっちにしようって」

「だよな、分かる。こっちもコロナちゃんがいなかったらそうなってただろうさ」


 あの仕掛けは本当に難しかった。

 説明されて解き方を理解すれば、なんとかなるだろうけど、それを説明できるやつがいなかったら、たぶんオレたちも進めなかったんだって分かるエリアだったのは間違いない。


「そういや、前に結構ボロボロになったんだって?」

「そうそう。アサ姉もようやく立ち直ったし、フレッドのおっさんたちがまた探索に入ったって聞いて、せっかくだし、おれたちも行こうってなったんだよ」


 地下牢を歩いてる時、ケーン君たちに会わなかったことを思うと、オレたちとたぶん入れ替わりで入ってきたんだろう。

 そのあと、スケスケのところで結構長居をしてた気がするし、そのあたりで追いつかれたんだろうな。


「二階の道はどんなカンジだったんだ?」

「強敵との連戦だ。

 ……ゼーロスとアサ姉が生き生きしてた」

「目に浮かぶよ」


 そうしてオレたちはそれぞれに情報交換という名の雑談を交わしあった。


「さて、いつまでも喋っているワケにもいかないだろう。お互いに」


 ややして、サリトスがそう告げると、全員がうなずく。


「こちらは上に向かうが、そちらはどうする?」

「地下だな。安全地帯やクリスタルの確保は最優先だ。

 ユニークスケルトンの店で補給もできるっていうなら、好都合だしな」


 あちらさんを代表するようにバド君が告げる。

 お互いのチームにそれぞれの代表に異を唱えるメンバーはいないようだ。


「それじゃ、また機会があったらよろしくな」

「おう。街であったらまた一杯やろうや」


 オレはケーンと挨拶を交わすように、それぞれがそれぞれに挨拶をしあってその場から動き出した。




 階段を昇っていく傍ら、ディアリナが話しかけてくる。


「あたしたちと、アサヒたちくらいかね。ここまで来てるのは?」

「だろうね。むしろ、他の連中はまだ入り口を見つけられてないと思うぜ」


 バカ正直に正面入り口の開け方を考えてるんだろうな。


 ラヴュリントスに関しては、今までそうだったからここもそうだっていう思いこみでの攻略がほぼ通用しない。

 そこに気づけるかどうかが攻略の分かれ目なんだろうけど……まぁ難しいだろうね。


 三階で階段は終了のようだ。


 昇り切って、オレは周囲を見渡す。


「この廊下に見張りはいなそうだな……。

 廊下の真ん中にデカい絵があって、絵を挟んだちょうど反対側に階段が見える」

「道中に部屋は?」

「この廊下にはなさそうだ」

「わかった。まずは絵のところまで慎重に行こう」


 サリトスの言葉に全員でうなずいて、オレたちはゆっくりと廊下を歩き出した。


 悪趣味なオブジェクトが飾られているけど、それ以外は普通の廊下をオレたちは進んでいく。

 もちろん、いつ何が起きてもいいように警戒しながら――だ。


「モンスターの気配も特にはないけど……それが逆に不気味さね」

「同感だ、嬢ちゃん。殿(しんがり)での警戒……頼むぜ?」

「ああ、任せな」


 頼もしい返事に安堵しつつ、オレも警戒を切らさずにゆっくりと歩いていく。


 そして、何事もなく絵の前にたどり着いた。


「なに、この悪趣味な絵」


 絵を見上げながらコロナちゃんが思わず言葉を漏らす。

 まったくもって同感だ。


 そこにあるのは肖像画――でっぷりと太った醜い男を、可能な限り耽美に描きました……とでも言うような絵だ。


 描かれているのは、王冠を頭に乗せた金髪の男。

 先端がカールする細髭に、金縁の赤いマント。ハデなボレロにハデなカボチャパンツ。七色の靴下と、金ぴかの靴を履いた、そんな男だ。


「廃退を押し進めし偉大なる王――つまり、こいつがこの城の主か」

「これがぁ……? この豚がカボチャパンツはいてるようなのが?」


 露骨に眉を顰めるディアリナ嬢ちゃん。でも、気持ちはとてもよく分かる。


「これ、絵の裏に何かあったりないかな?」


 描かれてる人物になんて興味なさそうなコロナちゃんが、慎重な足取りで絵に近づいてく。


 コロナちゃんはポケットの中からゴミを取り出して軽くぶつけるてみるが、特に反応はない。

 それを確認してから、ゆっくりと額縁に手を伸ばした。


「触る分には問題ないみたい」

「動かせそうかい?」

「んー……? これ、固定されてるカンジするなぁ」

「そうか」


 ここまで堂々としてるから何かありそうと思ったけど、無視して進んじまってもいいのかね?


「……ッ?! コロナッ、絵から離れろッ!!」


 オレがぼんやりと思考していると、サリトスの鋭い声が響いた。


「え?」


 何が起きたか分からないのはオレだけでなく、コロナちゃんもだったらしい。


 突然、絵が水面のように波打ち波紋が広がり出すと、そこから絵の具そのもののような色合いと見た目の触手が吹き出すように現れて、コロナちゃんに巻き付いた。


 出現に、一切の気配を感じなかったッ!?


「コロナッ!!」


 咄嗟にディアリナがサーベルを抜いて切り払う。

 だが、絵の具が周囲に飛び散るだけで、触手そのものは切り落とせていない。


「ディア姉ッ!」

「コロナッ!!」


 コロナちゃんに巻き付いたまま触手は絵の中へと戻っていく。コロナちゃんが絵の中に引きずり込まれていく。


「このォッ!」


 躊躇うことなく、ディアリナ嬢ちゃんは地面を蹴って絵の中へと飛び込んだ。

 まるで水面に飛び込むような波紋と共に、コロナちゃんとディアリナ嬢ちゃんは絵の中へと消えていく。


「フレッドッ! 追うぞッ!」

「了解だッ! 警戒だけは密に頼むぜッ!」

「もちろんだッ!!」


 そうして、オレと旦那も二人を追って、絵の中へと飛び込んだ。 

アユム「……サリトスたちを気にしすぎててバドたちの超絶バトル見逃した……」

ミツ「録画とかしてないんですか?」

アユム「えー……見るならライブ映像のが良いー……!」



次回は、絵の中での出来事の予定です。



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[一言] 主人公が脇役(裏方)、でも、主人公が全力で楽しんでる あまりみない書き方で楽しいですね
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