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2-16.『ディアリナ:融合と完成度』

みなさま ブクマ、評価、感想、レビュー いつもありがとうございます

ここ最近、急にptが増えてちょっとビビっている作者でございます

今まで読んでくれていた方々も、最近読み始めてくださった方々も、

こんなマイペースな更新速度の作品ですが、よろしくしていただければと思います

     

 なにやらすごい顔をしているサリトスとコロナはさておくとして――


 あたしは周辺を見渡しながら、スケスケに訊ねた。


「融合壷以外にも、色々あるみたいだけど、あれらは何なんだい?」

「鍛冶を筆頭とした、職人用の簡易施設ですよ。職人系のマスタリールーマをお持ちでしたら、ご自由にお使いください」

「あいにくと、職人系のマスタリーは取得してないねぇ……」


 そもそも職人系マスタリーは不人気……どころか、取る理由が無いとまで断言されているレベル。

 元々ルーマとして保有してても、伸ばそうとする人はいないだろうし、そもそも誰も伸ばし方をわからない。


 ダンジョン探索には不要であると、そう言われているルーマさね。


「コロナ……素材の高騰は予測できるか?」

「即座にというコトはないと思う。だけど、わたし達以外がここに来るようになれば話は別」

「職人系マスタリーの価値の見直しは?」

「これも即座にはないかな。みんな融合壷で済ませちゃうと思うし、余計なルーマを覚える前に、利用券での完成度Cで妥協するんじゃないかな」

「同感だ。融合武具が壊れたらまた素材を集めて融合すればいい――という流れになるな」


 何やらサリトスとコロナがいつも通りに難しい話をしている。

 これにはあたしもフレッドも口出しすることはしない。二人の話は政治とか商売の話とかで、口出しできないとも言うけどね。


「でしたら、この技術がダンジョン内のみではなく、外でも普通に使えるとしたらどうでしょう?」


 スケスケの言葉に、サリトスとコロナが訝しむ。

 その反応をスケスケも予想していたようで、顎をカクカク鳴らした。


「技術基礎を綴った本も取り扱ってますので。

 皆さまが職人に対して余り興味がないのも、知識がないのも、これまでの歴史の中で、探索者(シーカー)たちとの関わりが薄くなってしまっているからこそ。

 逆に行えば、探索者(シーカー)をしていた人が興味をもって職人に転向する可能性だってあるわけですよ」

「だけどよ、基礎知識と基礎技術を身につけても、地上で披露する場がなくては意味がないんじゃないの?」


 フレッドが横から口を挟むと、スケスケは首を横に振る。


「無いなら作ればいいのですよ。自分に作る技術がないなら技術を持つ誰かに作らせればいい。そうでしょう、コロナさん?」

「…………」


 コロナの顔つきが変わった。

 あれはやる気を出し始める顔だ。あるいは、何かやらかす前触れか。


 あたしを巻き込まないなら、好きにして良いとは思うけど。


「流行の最先端という火付けを行い、燃え広がった流行でさらに稼ぐ――商人なら一度はしてみたい商いだと思いませんか?」

「……面白そうですけど、文字通りの火遊びですよね? 失敗したら火傷する――いえ、火傷じゃすまなそうです」


 そう口にするコロナだけど、顔を見る限りやる気にはなっている。

 ただ、やる為の踏ん切りが付かないんだと思う。


「では情報を追加しましょう。

 融合は完成度Aが最大値です。ですが、融合以外の場合は、この上にSというものが存在しているのです。

 たとえば融合と鍛冶。作り方も素材も違えど、同一の武具を作り出すコトができます。ですが、融合の場合はどれだけがんばってもA。鍛冶であれば極めた人が作ればS。しかも、AとSの性能差はかなり大きいものです」

「面白い情報だが……それでも、先ほど俺とコロナが話していた通り、Cランクを壊しては作り壊しては作りという形に落ち着けば意味がないだろう?」


 サリトスが口にした言葉の理解はできる。

 多くの探索者(シーカー)たちは、そう考えるだろうさ。


 だけど、あたし個人としては何度も買い直すくらいなら、丈夫で優秀な完成度Sの一品が欲しいけどね。


 ……ん? あれ? ちょっと待てよ……


「ねぇコロナ、サリトス」

「何、ディア姉?」

「仮にAとSに値段付けるとしたら、差はどれくらいになるの? もっと言うとCとの差もなんだけど」


 二人が悩み出すと、横からスケスケが人差し指を伸ばしながら答えてくれた。


「私の生前の話でよければ、だいたいAとSの差は二倍から五倍ほど。

 Cと比べると十倍以上……時と場合、あるいは品によっては百倍のコトだってありました」

「ありがと」


 あたしはスケスケにお礼を告げてから、コロナとサリトスに向き直る。


「あのさ、二人とも。

 あたしみたいに、CよりSが欲しいって客が一人でもいるなら、問題ないんじゃないか?

 Cだけ欲しいやつらにはCを売ってればいいんだよ。

 AやSは少数作るに抑えて、売れたら大儲け程度でいいんじゃないかい?

 それに貴族や大店の商人たちってのは見栄を張る。探索者(シーカー)だけでなくそういう連中も視野に入れるんなら、採算とれそうじゃないか」


 サリトスとコロナは顔を見合わせてから、うなずきあった。

 そのままさらに難しい話をしはじめたので、あたしは肩を竦めて、周囲を見渡す。


 まぁ、あたしの話が何かのヒントになったら充分さね。


「お見事」


 あたしが二人の元から少し離れると、スケスケが声を掛けてくる。


 取っ手のないカップで何かを飲みながら――って、何で飲めるんだ? 顎から流れでてこないのかな……あれ……?


 だけどあたしが疑問を口にするよりも先に、スケスケが笑いを滲ませたような声で告げた。


「ディアリナさんは商人でもやっていけるのでは?」

「実家が商家なんだけどねぇ……肌に合わないから探索者(シーカー)やってるワケさ。父親譲りの才能は、全部コロナが持ってるんだ」


 それが嫌だとは思わない。

 コロナが楽しく商人をできてるんだから、それはそれで良いんだ。

 あたしはあたしで、楽しく探索者(シーカー)をしてるんだしね。


「その分、あたしは武の才能みたいのがあったみたいだよ」

「母君は探索者(シーカー)や騎士様で?」

「いや普通に商家の次女さ」

「なるほど。でしたら才能というのは受け継ぐものではなく、自分に見合ったものを開花させるものでは?

 たまたまコロナさんが商人の才能を開花させただけ。

 ディアリナさんだって、開花したから探索者(シーカー)をしているのではなく、探索者(シーカー)しているうちに開花したのでしょう?」


 ああ――そういう考え方もあるんだねぇ……。


「さすが一度死んで生き返ったスケルトン。言葉に含蓄があるねぇ……」

「そう言って貰えるなら、蘇った意味があったというモノです」


 カラカラと音を立てて笑うスケスケに、あたしも釣られて笑みを浮かべる。

 そのままスケスケと雑談を興じていると、何やら影が薄くなってたフレッドが、賑やかにあたしのところへとやってきた。


「ディアリナ嬢ちゃん! 見てよ見てよ。おっさんがんばったわよー?」


 フレッドがあたしに見せてきた剣を鑑定してみると、山賊サーベル改という名前が出てきた。

 折れた山賊サーベルを職人の手によって復活ついでに強化された武器だって説明もでてくる。

 そして何より完成度が――


「やるじゃないかフレッド! 完成度Bだなんてッ!」

「だろだろー!」


 胸を張って喜ぶフレッドに、サリトスとコロナが目を光らせた。


「コロナ。山賊サーベル改の融合利用券を用意してくれ」

「うんッ!」


 あれよあれよと二人は山賊サーベル改の完成度Cを作り上げる。


「スケスケ。何か切って良いモノなどは無いか?」

「はいはい。少々お待ちを」


 サリトスに頼まれて、スケスケはどこからともなく試し斬り用の丸太を取り出した。


「もう一本頼む」

「もちろん」


 そうして試し斬り用の丸太を二本並べると、サリトスは山賊サーベル改[C]をあたしに手渡してくる。


「ディアリナ、頼む」

「あいよ」


 渡された剣をまずは軽く素振りしてみる。

 握り具合や、振り方は悪くないっていうか普通。

 だけど、武器屋で買うのより悪くないかもしれないね。


「ディア姉。その剣は折れても構わないから」

「りょーかい」


 あたしは軽い調子でコロナに返事をして、剣を構える。

 ルーマは使わず、剣とあたしの技量だけで切断するつもりで、丸太に向かって袈裟斬りをする。


 バキリ――という感触とともに、丸太の半ばで剣が折れた。


「それなりに太い丸太相手に、ルーマ無しでこれなら、ルーマを込めれば切断くらいは行けるね」


 折れた剣をコロナに返すと、フレッドがあたしに剣を手渡してきた。


「Bはもったいないけど、試し斬りの必要性くらいは分かるさ。

 折れても文句は言わないから、やってくれディアリナ嬢」

「ああ」


 フレッドから山賊サーベル改[B]を受け取り、あたしはさっきと同じように素振りをする。


「握り心地はさっきよりいい……。

 振った時の感触は軽いながらも、しっかりと剣らしい手応えがあるから、手元の狂いも少なそうだ。

 これなら確かに、完成度が高いやつの方が良いのは間違いないね」


 あたしは感想を口にしてから、もう一つの丸太へ向けて袈裟掛けに剣を振り下ろす。

 途中で引っかかりは感じたものの、強引に振り抜いてやれば見事に丸太を切断できた。


「ルーマを使わずこの切れ味……やっぱあたしは同じ武器なら完成度高いやつを多少値が張っても買いたいね」


 コロナとサリトスにそう言ってから、あたしはフレッドに剣を返す。

 だけどフレッドは首を横に振った。


「背中のデカい剣と短剣のフレイムタンだけだと、影鬼みたいな時に困るだろ。せっかくの片手剣。持っときなって。おっさん、剣は使えないしな」

「そうかい? なら、ありがたく使わせてもらうよ」


 とはいえ、抜き身のままだと危ないんでスケスケから紐と鞘を買って、フレイムタンと連ねるように腰に()いた。


「フレッドとディアリナのおかげで、見えてきたな」

「うん。しばらく探索者(シーカー)やろうと思ってたけど、今回の探索を終えたら商人に戻るね」

「俺も今回の探索を終えたら、少しやりたいコトができた。フレッドとディアリナには申し訳ないが……」

「良いって良いって。いつものコトさね。だろ? サリトス」

「そうそう。人やチームには、それぞれのペースってモンがある。

 旦那をリーダーとしたこのチームは、こういうペースってだけさ」


 他の探索者(シーカー)チームは知らないけどね。

 あたしたちはこうやってお互いに融通させながら上手くいってるんだ。


 他のメンバーから色々と融通利かせて譲ってもらってるんだから、こういう時は他のメンバーに融通利かせて譲ってやらないとね。

アユム「これで、もうちょっと職人たちに対する認識が変わってくれればいいんだが……」

ミツ「種は蒔いたというコトで、もうちょっと様子をみましょう」


そんなワケで二話連続で説明回っぽいのになってしまったので、次回は探索を再開したいと思っております

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