5-40.『サリトス:激突、乱れ吹く烈風の果て』
「押しつぶしッ、斬り潰すッ!」
ルーマを纏いその刀身を伸ばした両手剣を大上段に構えていたディアリナは、それをアユムに向かって振り下ろす。
いつぞや退廃の王を両断した大技だ。
あの時と違い、リスクの大きい強化技のオーバーレッドは使用していないが、その威力は充分だ。
あるいは、あの時より成長したディアリナが繰り出すこの一撃は、あの時と同等の威力があるのかもしれない。
「ったく、これで終わらないなんてイヤになるね」
大地に斬り跡を残す一撃を受けながらも、立ち上がるアユムを見ながら、ディアリナがぼやく。
「だが、効いている。やはり周囲の奴らを倒せば倒すほど、耐久力は落ちていくようだな」
デュンケルの言う通りだ。
さすがにピンピンしているとは言い難い動きになってきている。
その時、ふと――視界の端にこれまでなかったモノが見えた。
思わずそちらに視線を向けると、これまで存在していなかった洞窟のようなモノと、その周囲にいるミーカたちの姿が目に入る。
こちらの視線に気づいたのか、ミーカは軽くこちらへと手を振ると、洞窟へと視線を戻した。
……ふむ。洞窟に関することは任せろ――ということで良いのだろう。
あの洞窟が何であるかは分からないが、ミーカたちが出張らなければならないモノであるのは間違いない。
そして、あの洞窟の関係者はアユムを解放されたくない――といったところか。
……なるほど。恐らくはウィルスの発生源あるいはそれの管理者の居場所に繋がっているのだろう。
だが、今はアユムの解放を最優先にしたいからこそ、ミーカたちはあれを抑えている、と。
この推察はそこまで外れていないだろう。
「お前らッ、ここが正念場だぞッ!
アユムを解放して欲しくなさそうな奴が、ちょっかいをかけ始めてきてるようだからなッ!」
ベアノフの声が響く。
奴もミーカたちの存在に気づいたか。
そして、似たような推測に至ったのだろう。
「カルフ、抑えろよ」
「分かってるッ! ここのダンマスを助けられれば、コナを助ける機会が増えるかもしれないんだろッ!」
リーンズがカルフに声を掛けると、不満そうながらそれを堪えて剣を握るカルフがうなずく。
カルフの暴走の心配もなさそうだと安堵した時フレッドの咆哮が響いた。
「新しい大技のお披露目だッ!
ネガティブレインボウ……行けッ!!」
暗澹とした虹色に輝く光に包まれた矢が放たれる。
それは巨大なエネルギーの奔流となり、アユムへ向かって収束していく。
「うおおおおおおお……ッ!」
アユムはそれを手にした刃で受け止めるものの、受け止め切れずに弾かれ、暗い虹色の濁流に飲み込まれた。
吹き飛ばされ地面を転がるアユムの身体から、僅かに煙が伸びる。
そして、すぐに立ち上がって見せるものの、どこかフラフラした様子だった。
畳みかけるべきラインを越えた。
ここからは、一気に押し切るべきだ。
そう直感したのは、たぶん俺だけではないのだろう。
「お? ちゃんと効いてくれてるじゃないのッ!」
フレッドがそう喜ぶと同時に、ナカネの声を高らかに叫んだ。
「オーラ、解放ッ!」
頭上で手を交差させ、気合いとともにそれを開くように振り下ろす。
次の瞬間、ナカネを中心に冷たい突風が吹き荒れた。
「つき合うぞ、ナカネ。オーラ解放ッ!!」
ナカネの横に並びたち、デュンケルが吼える。
次の瞬間、デュンケルを中心に熱い突風が吹き荒れた。
「リト兄、ディア姉、フレッドさんッ!
私とデュンケルさんで押し切れなかった時の後詰めはお願いッ!」
「任せろ」
こちらを見て告げるナカネにうなずくと、彼女もそれにうなずき返した。
「ディアリナ、フレッド。チカラを溜めておけ。
これで倒せなければ、後はないぞ」
「わかってるさね」
「おっさんも、おふざけナシでいくぜ」
俺たちは改めて構え直し――それを確認すると、ナカネとデュンケルは飛び出していく。
「ナカネ――おまえのその、人を思う暖かき冷気と、我が恩讐に燃える冷たき炎を合わせる」
「相反して消滅したりしないかな?」
「オーラによるチカラは物理的なソレとも、魔術的なソレとも恐らく異なる。問題なくいけるはずだ」
「信じるよ、デュンケルさん」
ナカネの言葉に、デュンケルは笑みを浮かべることで答えとすると、一歩先行した。
「アユムッ! おまえの心にこびり付く――その凍てついた罪悪感を先ず溶かすッ!!」
そう吼えて、デュンケルは炎を纏った両手で地面を叩いた。
「獄陣炎檻鎖ッ!」
次の瞬間――地面から無数の炎の鎖が吹きだし、アユムに巻き付いていく。
「グ……ッ!?」
アユムが巻き付いた鎖を解こうともがく。
ふつうの相手ならば解くことが叶わないまま焼かれていくだろう。だが、アユムならば恐らくはすぐに解けるはずだ。
だが、それを待っているほどナカネも甘くはない。
「広がり、覆えッ! 氷雪の大地ッ!!」
ナカネを中心に、足首ほどに積もった雪が現れて広がっていく。
そして、ナカネがその雪に触れ、告げる。
「極陣氷棺鎖ッ!」
すると、地面から無数の樹氷がせり上がり、アユムを囲い込んだ。
炎の鎖に巻き付かれ、樹氷の檻に閉じこめる。
こうなると、アユムと言えでも簡単には脱出できまい。
「デュンケルさん。アーツの共鳴の要領で、オーラの共鳴とかできないかな?」
「面白い。やってみようではないかッ!」
ナカネの纏う氷雪のオーラと、デュンケルが纏う炎焦のオーラが混ざりあう。
とはいえ――色が混ざるワケではなく、マーブル状に混ざり合っているようだが……。
そのマーブル状のオーラを両手に纏わせ、ナカネはアユムの頭上に向けて手を掲げる。
「降り注げッ、氷炎の雨ッ!」
赤い炎の雨が地面やアユムに触れるなり爆発する。すると、その爆心地が凍り付いていく。
「その身で受けろッ、慈悲と恩讐の焦雪ッ!」
両手にマーブル色の炎を纏わせたデュンケルが、炎の雨をすり抜けていく。両手からたなびく炎が、デュンケルを追いかけるよう雪を溶かし、露出した大地を凍てつかせ――
雨だけでなく、アユムすらもすり抜けた時、デュンケルの凍らせてきた大地から火柱が吹き荒れた。
氷と炎に包まれるアユムに向けて、ナカネは氷雪のオーラを、デュンケルは炎焦のオーラを剣に変える。
『雪火双陣・――』
二人は両手剣のようなサイズになったそれらを構えると――
『炎始氷焉譚ッッ!!』
――二人は同時にその剣を振うのだった。
マッドスタッバー
『お? そろそろスタンバっとくか?』
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最近、ウェスタン風ファンタジーな新作を書きはじめました。
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