5-23.『ミーカ:探索者共同攻略戦線』
少し間が開いてしまって申し訳ない。
プライベートで発生した突発イベント2つによるドタバタが落ち着き、
仕事の勤務時間も12月から減るので、
少しはペースを取り戻せる……と思いたい……
バドくんチーム&リーンズくんチーム&ギルマスコンビの共同攻略が開始されたネ☆
公平性を考えるとどうかとは思ったんだけど、ミツ様との相談の結果、リーンズくんたちとギルマスコンビを、時計塔攻略後、即9層攻略解禁させたのは、悪くなかったと思う。
サリトスくんたちのチームと合わせて考えれば、戦力としては申し分ないからネ☆
「それにしても、カルフさんの険しい表情と、コナさんが不参加の状況というのは」
「うん★ 間違いなく、コナちゃんはD-ウィルスにやられちゃってるのかもねぇ……」
コロナちゃんと違って、二重人格とかそういうのじゃないだろうから、病状が深刻化すると、どうにもならなかったんだと思う。
「だけど、居ないというのに引っかかりません?」
「確かに……ただ脳筋化しているだけなら、無理矢理ついてくるぐらいのコトしそうだけど☆」
D-ウィルスの目的って何なんだろうね?
どう考えたってただの病気なワケがないもん。
こう……ミーカちゃんのサキュバスセンサーにビクビクくるというか、同族嫌悪感があるというか……。
いや、ちょっと待って。同族嫌悪? そうか……同族嫌悪かぁ……。
本当に同族嫌悪的な感覚が正しかったとしたら、Dーウィルスの目的は洗脳や魅了による餌の確保……だったりする?
でも餌……餌ねぇ……。
感染者の人格を歪ませて餌として確保する――というのは、わからなくもないよね☆
餌に限定しなくても、自分の生存や種の存続の為に他者・他種族の人格や在り方を歪ませて利用するっていうのは、分かるんだ。
感染とは違うけど、マスターの世界にいるエメラルドセナガアナバチとか、ゴキブリをゾンビに変えて、自分たちの都合の良いように利用するしさ。
そういうのは、この世界アルク=オールには程度は違えど、存在はするし☆
D-ウィルスの大本の存在も、そういうタイプの生態をしてる異形の可能性はゼロじゃない。ゼロじゃないんだけど……。
しっくりくるようで、イマイチな感じというか。
んー……なんだろう。半分正解で半分不正解なところまでたどり着いた気がする。ただのカンだけど。
まぁこの想像が正しかったとしても、想像の域を出ないし、確証なんてゼロだから、あんま口に出来ない奴だよねー……。
あとで、創主サマとちょっとお話しよーっと☆
それはそれとして、共同攻略チームが探索を開始。
見慣れぬ街並みを不思議そうに歩きつつ、だけどサリトスくんたちからある程度の情報は聞いているのか、車道や歩道、横断歩道なんかの知識はあるみたいなだね。
ついでに、ソトバや墓石についても聞いているみたい。
『……ダンマスよ、貴様はそれでいいのか?』
そんな話を聞きながら、ポツリと呟くデュンケルくんの声を、原理不明のダンジョン製スーパーマイクが拾う。
『デュンケル様?』
チームの最後尾で足を止め、ナカネちゃんサマの墓標を見ながら呟くデュンケルくんに、アサヒちゃんも気づいたのか、声をかけた。
だけど、当のデュンケルくんは何でもないとだけ告げて、足早に先行するメンバーたちを追いかけていった。
なんというか、らしくないシリアスモードを見せられているような、何か重要なヒントを見たような……?
そんなシリアスなデュンケルくんだったけど、シリアスな時間はそこまで保たなかった。
そこには、いつものように(?)、ダンジョンのギミックに弄ばれるようなデュンケルくんがいたのであ~る☆
『泣いてッ、叫んでッ、散って行けぇぇぇぇぇッ!!』
衆愚なるヒトガタの群れを見るなり、何か急に飛び出していったデュンケルくん。
『不愉快だッ! 理由は分からんが不愉快だッ!! 貴様等が視界に入るコトが不愉快すぎる……ッ!!』
バドくんたちの静止を振り切って、両手に灯す蒼い炎を振り回す。
『クははははははははッ! 燃えろッ、燃えろッ! 我が恩讐の炎に撒かれて消えろッ! はーっはっはっはっはッ!!』
衆愚なるヒトガタの影響がちょっと強すぎるのか、完全にキレて暴れ回るデュンケルを示しながら、ヴァルトくんはメガネのブリッジを押し上げながら嘆息した。
『あのモンスターは衆愚なるヒトガタと言うそうだ。
戦闘力そのものはジェルラビと変わらないらしいが、見るモノの不快感と焦燥感を煽るチカラがあるらしい』
そうヴァルトくんが説明している間もデュンケルくんは暴れ周り――
『くくくくくッ、くはははははははッ!! ぐわ――――――ッ!?』
あ、自爆に巻き込まれた。
宙を舞い、ぼてりと地面に落ち――そして身体のあちこちから煙をあげながらも、何事もなかったかのように立ち上がり、再びその両手に炎を灯す。
相変わらず、妙なタフさを持ってる人だよね☆
『見ての通りの自爆や、ほかにも自分を生け贄に別のモンスターを呼び出すといった能力を持つ。そして戦闘をしているとどんどんその場所へと集まってくる習性もあるそうだぞ。
獲物を苛立たせ、自分たちの方へとたぐり寄せたら自爆やモンスター召喚でターゲットを袋叩きにするのが、基本的な動きだと、事前の報告があがっているな』
ヴァルトくんの説明を聞きながら、全員が頭を抱える。
どう考えても影響を受けまくりだもんね、デュンケルくん。
まさにターゲットとして打って付けの相手かもね☆
『雑魚が群れたところで雑魚だッ! どれだけ来ようとも燃やし続けてやろうともッ!! だけど自爆だけは勘弁なッ!!!』
だけど、どうにもこの問題はデュンケルくんだけのものでもないようで――
『あああああッ! クソッ! そういう能力を持っているモンスターだと分かってても我慢が出来ねぇッ!! クソったれがッ!』
叫ぶように毒づいたカルフくんが剣を抜き放つと、駆けだした。
『え、ちょ、カルフッ!?』
キルトちゃんが慌てたような声を上げるも時すでに遅し。
カルフくんはヒトガタの中へと飛び込んでいった。
最初はいつも通りのデュンケルくんだったけど、なんだかまたシリアスモードのデュンケルくんとなり、カルフくんと共にキレて暴れる。
『貴様らはそうやってッ、集まってッ、ただただアーヴェンティアを見殺しにしたッ!!』
『テメェらはそうやって、様子のおかしいコナを止めるコトなく見送りやがったッ!!』
……二人のキレ方……何かおかしくない?
「ヒトガタたちから影響を受けているんだろうけど……」
「もしかして、衆愚なるヒトガタって、野次馬がモデルなのでは?」
「ミツ様?」
「アユム様とナカネ様……いえ、二人以外の被害者を含めた全員をただ見てるだけの周囲に対するアユム様の憎悪のようなモノから生まれたのではないかな、と――そう思っただけです」
御使いサマの推測を聞いて、アタシの中でピンと来るものがあった。
恐らく、彼女の推測は正しいっぽい。
「だとしたら、デュンケルくんもカルフくんも、似たようなシチュエーションを経験してて、それがヒトガタたちの持つ能力の影響を強く受けてる……って感じかな☆」
それはそれで、結構厄介な能力かもしれないよね……。
「実際その現場に野次馬がいたかどうかではなく、目の前で大切な人を失った経験を持つ人の神経を逆なでするモンスター……というワケですか」
「そうそう。本来、そんな能力じゃなかったのかもしれないけど、ウィルスにやられたマスターが作ってたんなら、そういう影響もあるんじゃないかなってね☆」
つくづくこの階層は、マスターの心情の影響を受けているフロアだ。
『おまえら、少し落ち着けッ!!』
傷つけられても気にせず暴れまくる二人を見るに見かねたバドくんは、大量の水を降らせてヒトガタ諸共洗い流す。
直後に、ヴァルトくんが腕輪から糸を伸ばして二人を絡め取り、回収した。
『ゼーロス、お前さんはデュンケルな』
『了解だわい』
そして、それをベアノフくんとゼーロスくんが担ぎ上げる。
『こんな序盤にダンジョンの術中にハマってどうするんだよ』
『面目ない……。婚約者を失った時、周囲には信用のおける者しかいなかったハズなのだがな……。
アイツらを見ていたら、失われゆく最愛の者の命尽きる様子を、見てるだけで動きもせずニヤニヤしていた愚か者たちの姿が、突然脳裏に過ぎったのだ……』
グルグル巻きにされ、ベアノフくんにお米様抱っこされているデュンケルくんが、水を滴らせながらうめく。
カルフくんの様子を見るに、彼も同じ感じのようだねぇ……。
『とっとと抜けようぜ。
ヒトガタって奴は、デュンケルやカルフと、とことん相性が悪そうだ』
ケーンくんの言葉に、全員がうなずく。
そして、二人を担いだまま、共同探索チームは先へと進んでいくのだった。
色白ではあるけど、デュンケルくんってまさに水も滴る良い男って感じのビジュアルになってるね。ぐるぐる巻きにされて顔以外はボンレスハムみたいになってるけど☆
ミーカ
『相変わらず判断に困るよねデュンケルくん』
ミツ
『戦闘力は間違いなく高いんですけどねぇ……』
次回も、共同戦線メンバーの様子の予定です。





