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5-13.『サリトス:地下通路を突破せよッ!』

ここ最近、長期的に転移転生ファンタジーの日間に顔を出させて頂いているようです。

さらに、新しいレビューも頂きました。


皆様、ありがとうございます。

今後とも٩( 'ω' )وよしなに!



 進行方向にある黒い塊に対し、遠間から矢を射って破裂させ、モンスターを呼びだし、可能な限り小さな動きかつ最速で生まれたモンスターを倒す。


 右側の壁に寄った俺たちは、それを繰り返し、確実にゆっくりと地下通路を進んでいく。


 奥に見える突き当たりとの距離からして、今いるのは地下通路の半分くらいを進んだ辺りだろうか。


「今のところは順調だね」

「ああ。油断はせず、このまま行こう」


 出てくるモンスターは、最初に戦ったバーニングファイター、ふれふれフラワー、水滴フクロウ。


 その他、実験体ゾンビの上位種である被検体グール。


 酔いどれドリの上位種である泥酔ドリ。


 空飛ぶヘドロの塊――ヘドローン。


 ベーシュ諸島に主に生息している小さな角に一つ目の小鬼――その亜種である風呼び小僧。


 ……などなど、かなり多彩なモンスターが出てくる。


 被検体グールと泥酔ドリは、基礎能力が高まっている以外は下位種と変わらないので対処はラクだ。


 だが、初見モンスターのヘドローンと風呼び小僧は中々に厄介な連中である。


 ヘドローンは宙を漂うヘドロの塊のようなモンスターで、いるだけで異臭を放つ。たまらない異臭ではあるが、臭いだけなら問題はない。

 

 臭いより厄介なのが、ヘドローンが持つ面倒な毒だ。

 スペクタクルズによれば、生き物の肉体を蝕む毒と、金属を劣化させる毒を使い分けるとある。


 その情報だけで充分に厄介であることが理解できたので、出会い頭にナカネの氷のブレスで凍らせることにしている。

 そもそも粘性と弾性に富んだその身体に対して、剣や矢などがあまり効果がないので、ナカネに頼んでいるとも言う。

 一度、ディアリナがフレイムタンの呪文効果であるブリッツで焼いたのだが、それが大失敗だったので以降は、凍らせることをメインにしたのだ。


 ヘドローンは炎のブレスを受けると、毒とヘドロを撒き散らしながら爆発するのだ。

 幸い、それを浴びるものは誰もいなかったものの、爆発に巻き込まれた他のモンスターたちは酷い有様になっていたので、以降はヘドローンを炎で攻撃するのを禁じた。


 もう一匹の厄介なモンスターは風呼び小僧だ。

 捻りハチマキに、ハッピというベーシュ諸島の独特な祭り衣装を身に纏った、一つ目小鬼の亜種だ。


 手にはウチワという扇に似た道具をもっていて、これで風を起こす。

 そして、近くにバーニングファイターがいると面白がって、頭の炎へ向けて風を送るのだ。


 風呼び小僧の風によってバーニングファイターの頭の炎が大きくなる。

 頭の炎が大きくなると奴らの気性は荒くなり、しかもパンチの威力があがる為、かなり面倒なことになる。

 だがもっと厄介なのが――あの頭の炎に風を当てられ続けると、炎の色が変わりだすことだ。


 赤かった炎が、オレンジ色になると、より気性が荒くなっていくだけでなく、その身体も一回り大きくなり、グローブの色まで変わってしまう。

 色の変わったバーニングファイターにスペクタクルズを当ててみたところ、フレアグラップラーという上位種だった。

 風呼び小僧の風を浴び続けたことでランクアップしていたようだ。


 フレアグラップラーはかなりの強敵なのだが――水滴フクロウが一緒にいる場合、フクロウのいたずらによって炎が小さくなりバーニングファイターに戻ってしまうことがある。


 そんなありがたい水滴フクロウのいたずらは、バーニングファイターを弱らせるものの、ふれふれフラワーに対してはその逆で、相手を成長させる。


 このようにモンスターの組み合わせによって、同じモンスターでも強さが大きく異なるのが、この地下通路での戦闘だった。


 俺たちは出てくるモンスターの組み合わせに応じて手早く倒しながら、さらに地下通路を進んでいく。


 だいたい四分の三を過ぎた辺りだろうか。

 正面に見える突き当たりの壁がだいぶ近くなってきたところで、フレッドが何度目とも知れない矢を放つ。


 近くにあった黒い塊が弾け――そこから、風呼び小僧が五体現れたッ!


 初めて戦う組み合わせだが、風呼び小僧そのものはそこまで強いモンスターではない。


 これまで通り手早く倒すだけだ。


 俺とディアリナで、一匹づつ瞬殺する。残り三匹。


 フレッドが矢を放つ。

 これで、残り二匹――そう思ったのだが、風呼び小僧は風を巻き起こして矢を失速させた。


「なッ!」


 倒せなかった。

 しかし、すでにナカネが動いている。


 フレッドが倒せなかった風呼び小僧に、ナカネのブレスが突き刺さる。


「悪いね、ナカネちゃん!」


 ナカネはフレッドのお礼に手を挙げて応えると、即座に別の風呼び小僧へと向き直った。


 俺とディアリナも残り二匹を対処するべく動きだし――


「あ」


 俺たちが間合いを詰める僅かな間に、ナカネに向かって飛びかかった。

 ナカネは冷静に飛びかかってくる風呼び小僧を見据えて(かわ)す。


 だが、躱した先でもう一匹の風呼び小僧が待ちかまえていたかのように、ウチワを煽った。


 瞬間――突風が巻き起こされ、ナカネが吹き飛ばされる。


「あ! やば……ッ」


 目を見開くナカネの姿を視界に捉えつつも、ようやく間合いに入った俺は、片方の風呼び小僧を切り捨てた。


 次の瞬間、ナカネは黒い塊にぶつかってしまう。

 塊が弾けて、ナカネの周囲に黒い水たまりが五個生まれる。


 完全に囲まれている形だ。


「フレッドッ!」

「わかってるッ!!」


 水たまりから出現したのは、風呼び小僧二匹、水滴フクロウ一匹、バーニングファイター一匹、被検体グールが一匹。


 その五匹全員が、自分たちの中央で尻餅をついているナカネを見下ろしている。


「ナカネ脱出だッ! 他の塊にぶつかってもいいから逃げろッ!!」


 俺が声を上げ、ディアリナが駆け、フレッドが矢を(つが)える。


 ナカネは素早く立ち上がると、一番動きの遅い被検体グールの脇を抜けようと動き出す。


 だが、動き出すと同時に背後の風呼び小僧が、ナカネに向かって突風を放った。


「うわぁぁぁぁ……ッ!」


 被検体グールを巻き込んで、ナカネは再び吹き飛ばされる。

 吹き飛ばされた先には、黒い塊が浮いていて、突風によって近くを転がるナカネに反応するように弾けた。


 今度も五匹。

 バーニングファイター一匹、ふれふれフラワー二匹、ヘドローンが一匹、泥酔ドリが一匹だ。


「もぉ……何なのぉッ」


 ナカネは毒づきながらもすぐに立ち上がり、その場から逃げ出そうとするが、こちらと合流するルートにはバーニングファイターとヘドローンが立ちはだかっている。


 好戦的で動きも早いバーニングファイターと、動きは鈍いがその肉体そのものが毒みたいなヘドローンは、その脇を抜けていくというのは難しいだろう。


 それでもナカネは冷静だった。


贖罪(しょくざい)氷十字(ひょうじゅうじ)よッ!」


 掲げた杖から、氷の十字架が放たれ、ヘドローンを襲う。

 氷に捕まり動けなくなったヘドローンの脇を抜けようとするナカネだったが、バーニングファイターが踏み込んでいった為に、彼女はそれを躊躇(ためら)って足踏みした。


 そこへ、被検体グールの腕が振り下ろされる。

 咄嗟にナカネはそれを飛び退いて躱すものの、躱した先は黒い塊に囲まれた場所だ。


 幸いにしてまだナカネに反応していないが、動き方次第ではあれらからもモンスターが生まれることだろう。

 俺たちもナカネを助けに行こうとするものの、面白がって適当に突風を起こしている風呼び小僧たちのせいでうまく動けない。


「フレッドッ! ナカネの離脱支援を頼むッ!」

「したいんだけどねッ、いたずら小僧の風が邪魔で、矢の軌道がブレブレになっちゃうよのねッ!」


 楽しそうに突風を起こす風呼び小僧を見た別の風呼び小僧が同じように突風を起こす。

 デタラメに吹き荒れる風のせいで、動きがとりづらい。


 そして、その風を受け、バーニングファイターのうちの一匹の色が黄色くなっていくのが見えた。


「え? ちょッ、まさか……ッ!

 待って! 待ちなさいってばッ、そこの酔っぱらいッ!!」


 意識を目の前に向けていた時、ナカネの声が聞こえて、そちらへと視線を走らせる。


 すると、ナカネのすぐ近くにいた泥酔ドリが、フラフラとした足取りで黒い塊に近づいていくところで――


「キェェェェェェ――ー!!」


 怪鳥音も高らかに、跳び蹴りをかましてくれた。

 そして、黒い塊が破裂して、ヘドローンが三匹と、水滴フクロウが一匹出現する。


「サリトスッ! 腹を括った方がいいんじゃないかいッ!?」


 確かにディアリナの言う通りか。

 風呼び小僧に吹き飛ばされたり、泥酔ドリが蹴っ飛ばしたりして、黒い塊が破裂すれば、モンスターが増える。


 現状、周囲にいるモンスターの数を思うと、いちいち対処していても対処しきれないだろう。


 それに、風呼び小僧とバーニングファイター、水滴フクロウとふれふれフラワーというコンビが、多数発生してしまっている状況だ。


「……やむを得まいか……」


 ディアリナの言葉に俺はうなずき、フレッドへと視線を向ける。

 どうやら、フレッドも同じ考えのようだ。


「ナカネちゃんッ! 黒い塊のことは気にせず逃げるわよッ!」

「弾けてからモンスター出現までのタイムラグを利用して駆け抜けるッ!!」


 フレッドと俺の言葉にナカネはうなずくと、彼女は自身の背後にいるヘドローンたちを凍らせると、凍ったヘドローンを跳び越えた。


「邪魔なんだよッ!!」


 直後に、ディアリナは自分の目の前にいるふれふれフラワーを両断。


 それが合図となって、俺たちは一斉に地下通路を走りはじめるのだった。



ミツ『さすがアユム様。いやらしい配置になってますね』


ミーカ『実は、最初から最後まで全力で突っ走っていくのが正解なんだよネ、この地下通路って☆』


ミツ『放置されたモンスターたちはどうなるんですか?』


ミーカ『周囲に敵がいないまま一定時間経つと消えてボールに戻るみたいだネ☆ その一定時間以内に別の敵が姿を見せると、ターゲットをそっちに切り替えて一斉に襲うんだって☆』


ミツ『他のチームに押しつけるデュンケルさんと、他のチームに押しつけられるデュンケルさんの両方が目に浮かびました』


 次回もサリトスたちの地下通路攻略の予定です。



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― 新着の感想 ―
これはひどいwww
[一言] 一気読みしました。とても面白かったです。 更新楽しみにしてます。応援してます。
[一言]  デュンケル、アップしといてー(笑)
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