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4-6.第二階層、解禁後 一番乗りのチーム

コナたちがダンジョン探索を始める、少し前のお話


「うーむ……フロア8。思ったよりサリトスたちも足踏みしてるなぁ……」


 フロア8の攻略トップはデュンケルで、攻略状況は50%くらいだろうか。

 誘惑(not異性からの魅了)の多いエリアだから、仕方ないかもしれないけどな。


「ただいまー☆」

「おかえりミーカ。どうだった、フロア8は?」

「いやー、マスターの記憶からどういうモノかは漠然とはわかってたつもりだけど、実際体験するとヤバイネー☆

 これ、下手するとたどり着いた探索者(シーカー)はみんながみんな完全足止めかもネ☆」

「そのレベルか?」

「マスター、地球の娯楽溢れっぷりは、この世界にとって異常なくらいだって認識しよう☆」


 正直、ラヴュリンランドには色々と足りないモノが多いと思ってたんだけど、ミーカの様子を見る限りはそうでもないようだ。 


「サリトスくんたちが何のかんのと楽しんじゃうのも仕方ないよネ☆」

「うーむ……」


 そういうモンだろうか……?


 様子を見ている限りだと確かにミーカの言う通りなんだけど……。


「アユム様。そもそもからして、この世界に娯楽は乏しいんです。

 神話や、神話ベースの寝物語などは、基本的に口伝です。お芝居や歌などは僅かな人たちが。本などはダンジョン産のものか、貴族や上級商人たちが趣味で作るもののどちらか。

 庶民としては探索者(シーカー)から訊く探索譚が最高の娯楽なくらいですからね。そんなコトよりダンジョン行こうぜという合い言葉は並じゃないのですよ」

「チェスやトランプみたいなものもほとんどないからネー☆」


 ミツとミーカに補足されて、ようやく合点がいったかもしれない。


「だとすると、俺的には大人しめなラヴュリンランドも、サリトスたちには未知の娯楽の山なのか……?」


 ミツは神妙に、ミーカは楽しそうに。

 実に正反対の表情で二人は首肯した。


「そうか」


 これはもしかしたら、ラヴュリントス史上最大の試練になるかもしれないな……。まったく意図してないのに……。


 とにもかくにも。

 サリトスたちが遊びすぎてて動きがない。


 多少、夜になると出現するモンスターを狩って、素材を確保したりはしてるようだけど……。

 なので、ほかの探索者(シーカー)をメインに見ることにする。




 サリトスたちのチームが緑狼王(りょくろうおう)を倒し、フロア6へと足を踏み入れてから二週間。


 そろそろ他の探索者(シーカー)もフロア6へ招くことにする。


「ミーカ。台本はあるから、前回同様アナウンスを頼む」

「おまかせあれー☆」


 もっとも、緑狼王の部屋が通れるのは、解禁から十四日間だけだ。

 十四日経つと、緑狼王が復活するようになっている。

 ボス部屋の入り口である扉の数字が表示されるようにしておいたから、気づくやつも多少はいるだろう。


 もちろん倒せば、また十四日間は通行自由になる。


 緑狼王の部屋の奥。

 階段のある小部屋にアドレス・クリスタルを設定しておいたのもそういう理由だ。


 通り抜けたいならとっとと通り抜けてアドレス・クリスタルを登録すればいい。そうすれば、復活しても問題なくフロア6に挑戦できるしな。


 もちろん、倒した上でフロア6へと向かう場合、お宝のあるエクストラフロアへと行くことができる仕様だ。


「ミーカさんがアナウンスするなり、一斉にアリアドネ・ロープ使ってからに……」

「わっかりやすーい☆」

「でも、一番乗りはボス部屋付近で探索されてたチームのようですね」


 ミツが示すチームは、いつぞやコロナと絡んでいたオノ使いの男と、女剣士、女ブレシアスの三人組のようだ。


「リーンズくんと、キルトちゃんと、ニューズちゃんだね☆」

「リーンズはあいつらとチームを組み直したんだな」

「そのようですね」


 なんてやりとりをしていると、なぜかミーカが俺に向けて怪しい視線を向けてくる。


「なんだよ……?」

「いやー……マスターのわりとえぐい精神攻撃の影響受けてボロボロ状態から立ち直った子だからさー、ニューズちゃんって☆」

「俺、何かしたか?」

「ピンクの津波って、ちゃんと対処できないと外道な結果になるんだよねーって話だよ☆」


 言われて、だいたい理解した。

 それは悪いことしたような気がするけど、対処できなかった方も悪いと思う。


「ま、チームメイトもチームメイトで若干の問題があったから、今回の件が無くても遅かれ早かれ解散してたかもネ☆」

「ミーカさん、詳しいですね」

「そりゃそうだヨ☆ なにせ、傷つき方が尋常じゃなかったから。ちょっとだけ、メンタルケアしたんだから。夢の中でネ☆」


 夢の中で何をしたのかは敢えて聞かないことにしておこう。


「わざわざそういうコトをした理由は?」

「え? だってマスターってラヴュリントスが関わった人死にを可能な限りゼロにしようとしてるんでしょ? なら、思い詰めて自殺しちゃいそうな場合も、そこに含まれてるかなーって☆」

「……お、おう。そうか。そこまで考えてなかったな……」


 完全に失念していた。

 ダンジョン内で仲違いしたあと、ダンジョンの外で問題が発生する場合を考慮してなかったぜ……。


「なんつーか、ありがとな。ミーカ」


 ノリは間違いなくサキュバスでも、ミーカも俺の為にがんばってくれてるようだ。本当にありがたい。


「いえいえー☆ 夢の中とはいえ、なかなか激しい子と楽しめたから、問題ないよー☆」

「台無しだよッ!」

「一気に感動がなくなりましたね」

「キルトちゃんと出会って以降は、夢の中でもキルトちゃんの姿を求めてくるから、ワタシはキルトちゃんの姿に変身して――」

「言わなくていいからッ!」


 ちょっとでも感謝と感動をしたのが間違いだったかもしれない。


「ともあれ、三人がフロア6を歩き始めてるよー☆」


 言われて視線を移す。

 


 フロア6からは、1~5までと雰囲気を変えてある。


 紅葉やイチョウ、その他の赤や黄色に紅葉した木々が作り出す和風の森だ。

 廊下には、稲荷神社のような鳥居の群れを設置。

 ジェルラビによる阿吽の狛犬……ならぬ狛ジェルラビなんてのも設置してある。


 紅葉した森の中にある神社の参道。

 フロア6だけなら、イメージはそれだ。


 モンスターに関しては、ここから少しずつ特殊な奴を増やしていく。

 特にモンスター同士の相性(シナジー)も増やしていく予定だ。


 とはいえ、フロア6はその助走段階。

 出現モンスターは、空飛ぶつぼみとバケタローがメインだ。


「バケタロー、かわいいよねー☆」

「リーンズさんが思い切り顔を引っかかれてますけど」


 アイテムを拾おうとすればバケタローで、階段かと思えばバケタロー。


『クソッ、またこのキツネかッ!』

『リーンズ、落ち着いて……』

『今、癒しのブレスをおかけしますね』


 これはかなりストレスがたまるだろうなー。

 わかってて配置してるんだけさ。


『悪い……このフロアにはイタズラ好きのキツネがいると分かった。

 二人とも気を付けてくれ』


 顔の傷を癒されたことで落ち着いたのか、リーンズはそう言って先頭を歩き出す。


「アイテムも階段もリーンズさんが率先して触りに行ってますね」

「顔の引っかき傷なら、ニューズのブレスですぐに治してもらえるからだろうな」

「馴れてきたのかバケタローと分かった瞬間に素早く首根っこ捕まえてるよ、リーンズくんってば☆」


 空飛ぶつぼみに関しても、特性を把握して以降は、リーンズかキルトが瞬殺している。

 二人が倒し損ねても、ニューズがブレスでトドメを刺す。


「チームワークいいじゃないか。

 リーンズ以外はあまり見た記憶ないけどさ」

「サリトスくんたちばかり追ってればネ☆」


 言われてみればそうかもしれない。

 ニューズに関しては、背徳の城の玉座にいけるチームに在籍をしてたんだから、それなりに見所はある方か。


「キルトさんに関しては初めて見る気がしますけど」

「そりゃあね☆ ソロ探索者(シーカー)で、二人と組んでから初めてラヴュリントスへ来た子だから」

「ふーむ」


 細身の長剣で戦っているキルトを見ると、まったく戦闘スタイルが違うのにサリトスを思わせるなにかがある。


「立ち振る舞いがサリトスに似てるな……」


 たぶん、サリトスと同様に貴族と関わるコトの多い探索者(シーカー)なのかもしれない。

 あるいは――サリトスともども、貴族の出身……って可能性もあるだろうけどな。


「あっさりフロア6は抜けましたね」

「途中から完全に落ちてるアイテム無視しちゃってたねー☆」

「いいんじゃないか。あれだけバケタローが出てくるなら、無視した方が楽そうだし」


 自分で設定して置いて言うのも身も蓋もないけど、フロア6と7はバケタローが存在する限り、落ちてるアイテムを集める気には起きないしなー。


 ともあれ、リーンズたちはフロア7へ到着だ。


 基本的な部分はフロア6と同じだけど、ここでは提灯があちこちに飾られてたり、大小いろんなファンシーキノコが生えてたりと、フロア8の雰囲気の一部が見え隠れしてるフロアだ。


 イメージとしてはお祭りの飾り付けがされた参道といったところか。

 もっとも、出現モンスターたちには明るい雰囲気に反して、自分でもちょっとえぐいかもと思える配置になっている。


 この第二階層の表テーマは、神聖と娯楽。

 ようするに神社でお祭りだ。まぁ娯楽の部分に気合いを入れすぎたところもあるけど。


 そして、裏テーマは光と闇でもある。


 なので夜になると、神聖と娯楽が反転。

 邪悪と恐怖が表に出てくる――みたいな感じだ。


「でも、リーンズさんたちは、夜になる前に抜けられそうですよね。ここ」

「だな」

「ちょーっと残念かもね☆」


 抜けられるなら抜けられるで、なにも問題はないんだけどな。


『看板を読む限り、可能な限り早めに抜けた方が良さそうね』

『同感だ。この階もバケタローがいるだろうから、気を付けてくれ』

『第一階層の流れを思うと、ここからが本番になるはずです。気を付けていきましょう』


 看板を読み、警戒心を高められるなら、上出来だろう。

 そのうち、こいつらもトップ争いに加わってくるかもしれないな。



ミーカ『明日、もう一回、フロア8へ遊びに行ってこよー☆』

ミツ『あ、ミーカさん! ご一緒させてください!』


アユム『みんなの冒険はここで終わってしまうのか……?』


次回も今回の続きの予定です。

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