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005 面接


 試験は全部終った。

 ソウスケはちょっと後悔と不安が顔に過ぎっていたが、アマネはすっかりリラックスしていた。


「試験終ったし、後は面接だけだね。 さあ行っくよん」

 ソウスケとアマネは最後の面接を待つ控え室へ向かった。


 実技試験を終えたソウスケとアマネは他の受験生と共に、大教室でただひたすら待っていた。

 白猫ギンは、いかにも猫らしくまるくまっていたが、しかし浮いていた。 アマネとソウスケの頭上、3メートルぐらいの手の届かない高さでふんわり浮いていた。 青竜シエルも同じように二人の上空をほとんど逆さまになって風に流されるように浮いていた。

 シエルに至ってはいかにも暇ですと言わんばかりの状態で漂っていた。 緊張感しているのが馬鹿らしくなるような雰囲気だ。 どちらにしても、この二匹にとっては試験も学園もあまり興味は無さそうである。


「面接で何を聞かれるか知ってる?」

ソウスケがしばらく続いていた沈黙を破った。


「はっはっはっ、何~なんも調べて無かったけど」

能天気に舌を出すアマネだった。


ソウスケはそのままズコッと頭を垂れたて……そのまま眼を瞑った。

また長い沈黙が続いた。


 さらに小一時間は待たされただろうかギィーーと重い扉が開いてカツン、カツン、とハイヒールで歩く足音が教室に響いた。 ソウスケは目を開けると職員と思しき女性が教壇に立っていた。

 その後は受験番号順に一人ずつ呼ばれて面接室に入っていく。


 ようやくソウスケの順番がやって来た。 ソウスケは緊張の面持ちで面談室に入ると、そこには大きなテーブルがあり、いかにも小役人ですといった風貌の縦縞のボテッっとした服を着た男性と、もう一人はよく顔を見知った女性がいた。

 そこには学長のソフィアがピンク色に赤い花柄のワンピースを着て座っていた。


小役人風の男性が手早く書類をチェックしながら、淡々と喋った。


「君は合格だ、学費は奨学金で全額免除される」

そう言いながら大きな印章をバンッ!と書類に押印した。


「寄宿舎に入れるがどうする?」

「入ります!」

 ソウスケは即答した。


 小役人風の男はまた大きな印章をバンッ!と書類に押印した。 そしてもう用は無いとばかりに、顎でクィっと扉のほうを示唆して、部屋から出ていくよう促した。 結局ソフィアはその間なにも喋らなかったが片目をパチリとウィンクを飛ばしてきただけだった。 質問らしい質問もなし。 小役人はひたすら事務的で受験生などにはまったく興味はない、そういった扱いだった。 もしかしたら学長のソフィアの計らいで、面接はほどんどフリーパスだったのかもしれない。

 いずれにしても緊張しまくっていたソウスケにしては拍子抜であった。 自分は何を心配していたのだろうと、もう苦笑いでもするしかなかった。


___________________________________________


 全員の面接が終わり、黄昏時が訪れようとシていた時、ソフィアは学園の最上階にある学長室に戻っていた。 その隣にはルビーのような赤く艶やかな髪をした男がいた。 ソフィアの秘書のキーラウェアである。

 ソフィアの手にはロゼが注がれたワイングラスが、キーラウェアの手にはバーボンと氷が入ったウイスキーグラスがあった。

 

「あの子たちはどうだった?」

「ちゃんと二人とも入学できたわよ」

「それは上々」

「ソウスケくんには学生自治会のハンターパーティに参加してもらう予定よ。 例の封印の問題を彼らに片付けてもらいましょう」

「それが良いね。 彼女のほうはどうするんだ?」

「邪教の一派がうちの新入生に手を出そうとしてるらしいのよ。 アマネさんにはそっちを何とかしてもらいましょう」

「あまり手を出すなよ」

「大丈夫よ、巧くやるから。 それに手助けしちゃったら意味がないじゃない」

「解っているならそれでいい」


「さあ、若者たちの明日に乾杯!」

「乾杯!」


___________________________________________



 ソウスケとアマネは入学と寄宿舎の入寮の手続きを済ませて、先程まで待たされてた大教室に戻ってきた。

 案の定そこにはシエルとギンがまだ浮いていた。


「こいつら、ほんと気楽だな」

「ほんとに気楽よね」

 そんな他愛のない会話としながら、二人と二匹はそのまま街に出た。

 すでに太陽が沈みかかっていた。


「ソウスケ君、合格祝いしよっかー」

 試験の疲れは何所へ消えたやら、いつもの元気なアマネが復活していた。


「いやぁっほーー」

 アマネは両手の拳を天に伸ばして、ジャンプしながら可愛く叫んだ。


 アマネの頭上には『セレーネ』と呼ばれている青緑色の大きな月が出ていた。ソウスケは月をみていて風情があるというよりは、とても神秘的な情景に思えた。


「ここの月は大きいし、青緑色だな」

 ソウスケは月を見ながら呟いていた。


「月にまつわる昔話は色々あるわよ、大昔に王様が月に追放されたとか、巨人族が住んでいるとか、でも兎が餅つきしているって話は今のところ聞いた事が無いわね」


 二人と二匹は港に近いアマネ一押しの酒場に入った。 日本であればお酒は二十歳からだが、この世界では十五歳で成人とみなされて酒場への出入りは自由だった。 だが、中身は至って真面目な日本人の高校生である。 アマネの強い説教の末に二人はお酒の代りにトリピカルジュースを片手に食事を盛大に楽しむ事になった。


 酒場を見渡してみると商談をしている交易商人やハンターらしき男たちで賑わっていた。


 ソウスケはピンク色のトロピカルジュースを、アマネはレモン果汁に似たトロピカルジュースを、それぞれ手にして乾杯した。

 シエルとギンはというと、飲み物より料理に視線が注がれていた。


 料理はアマネがチョイスしてオーダーしてくれた。 魚介類のスープ、大きな蒸しエビ、これまた大きな魚の切り身をステーキ、茹でたてのポテト、パスタのような麺料理などが次々と出てきた。 二人と二匹は盛大に食べた。 ここは貿易港だが近くに漁港もあるので新鮮な魚介類が安く食べられる人気の酒場だった。


 昼間の試験の実技や今後の学園生活の話題で盛りっているうちに、夜がだんだん更けていく。

 ちなみに、シエルとギンも食べるものを食べて満悦だ。


 ソウスケは今日の剣技の対戦で相手の教官を二回も失神させた事を思いだしていた。

その事をアマネに話していると、


「剣術の授業が楽しみね」

 そう言ってアマネはクスクス笑っていた。

(俺の事は心配してくれないのかよ)

 そんあソウスケの心の嘆きは虚しく港の酒場に霧散していった。


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