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4章24『加速』

「さて、命令通りあなたを殺しますよ。何をさっきから羽虫のようにヒュンヒュンやっているんですか?」


「あれー? もしかしてー、気づいていましたかー?」


そうさっきまでカマエル以外の誰もが風だとともっていたそれが実態を表す。

その速い行動に反してほんわかスローリーな少女は速さ重視なレイピアを両手に持ち上流階級な感じの気品や丁寧さを感じられた。圧力も


「わたしはー、〈風〉のー、ヴァン・ラピッドですー」


「はて、あなたはそんな自己紹介をしている暇や余裕があるのでしょうか?」


「いいからー、私が名乗ったんだからー、そっちもー、名乗ってほしいなー」


「良いでしょう。カマエル・フェイスこれが野蛮で低俗な羽虫以下のあなたを殺す〝天使(ひと)〟の名前です、その散歩歩けば忘れてしまう鳥のような頭の隅々まで刻み込んで逝ってください。」


「野蛮なのはー、そっちじゃないかなー? ホートちゃんまでー、殺しておいてー」


そう声が届いたその時にはヴァンはカマエルの懐にいた。

――秒速340.29m。それが音の早さだという。この距離ならば三往復は可能なほどの速さだろう。そんなバケモノじみた100m走を約0.3秒で走る速度。その攻撃にカマエルが追いつくはずもなく……


「はて、あなたの速さはここまでですか?」


それをわざわざ〈十二翼の太刀〝剣翼〟〉から〈二翼の太刀〝鱗甲〟〉に変えそれでしてその2振りのレイピアを軽く止めた。それも驚きや焦りの表情一つ見せずに。


「わたしのー、異能名はー、【音速】ですがー、光くらいには速くなれますよー」


「ではその、無駄な足掻きを誠心誠意見せてください。当機が軽くひねり潰してあげます。」


――光の速さ。いわゆる地球7周半の速さ。物理法則を超えない限りその速度には到達しない速度。それを出せるという前から見続けてきたようなモノ。物理限界を軽く超える【異能】だからこそできる芸当。


「それほどですか? 光ってものはもっと早いですよ?」


その速度に軽く、汗の一つも流さずに着いていくカマエル。

傍から見たらバケモノその者である。これで〈十翼の太刀〝疾走〟〉を使っていないカマエル当人のみの力。そして、その圧倒的余裕の差どちらが価値なんてまるでもう決まっているように。


「光の速さはこの程度ですか。つまりませんね」


そう言ってカマエルは〈エロヒム・ギボール〉の半分を使い同時展開〈十翼の太刀〝疾走〟〉を使いさらに加速する。

それを機に攻防が反転する。さっきまではカマエルが遊びの遊びをしていてそれこそ0.3よりも程遠い力で遊んでいたおかげでヴァンが攻撃に入れたがカマエルがほんの少し本気になり0.9位の力で攻撃を仕掛ける。

もしかすると、カマエルの方が祈より強いのではないか、と思わせるようなその光景人の目ではもう視認できないほどのその速さ。第三者にはこう見えているだろう風対風と。


「あなた少しはすごいですね。当機に0.9程の力を使わせるとは……」


「じゃあー、100%を見てみたいかなー」


「100%だなんて、この軟弱な世界が滅びてしまいます」


かつてヘブルでの話でだ、二つの星を割ったのは【憤怒】のサタンだという。だが、その話には少し間違いがある。サタンが割ったのは自らの星〝ヘル〟とたくさんの小惑星そしてもう一つの星〝ヘブン〟をかすっただけだ。では誰が〝ヘブン〟を壊したのか、それはもうだいたい分かっているだろう。カマエル――初代フェイスその人だ。もとより強い力を持ちえたフェイスすなわち『忠義・信仰』の力はそれをなす事に力が増してゆく。『忠義・信仰』はそれより強い『忠義・信仰』を呼びまたそれが『忠義・信仰』を呼ぶそうやって代々受け継がれた【忠義】の権能にはとてつもない忠誠心と主を守るための力がたくさん詰まっている。今使っているのは1人分のフェイスやく100代に渡って貯められた忠誠心の一人分の力でしかない。

そしてその一人分の力それは主なき忠誠、信仰の力それでさえ強いのに本題『忠義』を成すとするとそれは強大な力を得る。

今のカマエルがその状況だ。初代フェイスが『忠義』を捧げてそこから99代にわたり主が居なかったためその増えた力はもう既に99代分の『信仰』をも超越している。

それの100%蓄積された百人以上の力を出すとなるとこの星が耐えられるかわかったものではない。


「じゃあー、わたしもー、120%だすからー、あなたもー、出してねー?」


そうヴァンが少し力を入れたかと思うとカマエルが目で追えなくなるほどの速さになる。それはもう、物理限界という域を軽く超越している。

物理限界を超えた力それすらも限界が来る。その限界をも超え光の速さ七周半という速さですら怠け者に見えてしまうほどの速度だった。

あと勘違いして欲しくないから言うがまだ一分とたっていない。


「そこまで来るとなると当機にも限界というものがあります。この手はあまり使いたくないのですが……

峻厳(ゲブラー)】――〈零翼の太刀〝加速〟〉!!!!!」


カマエルが一つため息を吐きそう叫んだ。

刹那。その瞬間だ――時が止まった(・・・・・・)。否、時が遅れた。

この世界、この場所で唯一動いてられるのは、音速を、光速を超えた2人のみ。


「あれー? 遅くなったなー?」


「それもそうです。現実世界の1秒を500万約倍――体感時間にして約83,000分。ですが時間経過はあちらの方なので秒速三万キロの当機達はたかが人の歩く速度時速4キロに成り下がってしまったわけです。」


その説明にヴァンは絶望の顔色を見せた。

そして、あれほどまでに余裕に入り浸っていたカマエルの顔に余裕が消えていた。

例え、一秒を引き伸ばしたとしても結果としては同じこと、ただ全てのものの動きが遅くなるだけ。それは1秒で三万キロを動く光を1秒で0.06ポッチしか動かない人の歩く速度になり下げることだって出来た。


1秒を体感時間83,000分にするとなると流石に度を超えすぎている。その行為それすらで自らの消滅――死だって有り得る禁じ手〈零翼の太刀〝加速〟〉それを使った理由はただ一つしかない。


――面白そうだから。


自らの面白さがタメに自らを測りに載せるそれがカマエルなのだ。

命令に従っているだけではつまらない。そんなつまらない人生など嫌だ。そういったカマエルが人だと言える【忠義】自らの意思、形だった。

〝魔王〟〝熾天使〟にだってちゃんとした感情というものを持っている。ただそれを薄れさせるほどの〝強い感情〟があるだけだ。

それはもちろん、自らの〝役割〟を背徳することになることだってあるのだ。


ただ、それを行うのはせいぜい4秒程度約33万分――5555時間――231日の間に敵を仕留めなければならない。

4秒を超えると自らの部品部品が邪魔をし合い挙句には機能を停止する。

それはカマエルにとって死当然のものだ。だからこの〈太刀〉は禁じ手なのだ。

大いなる力は身を滅ぼす。これをカマエルに教えた張本人?なのだから。





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