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4章19『炎使い』

それからほんの少しの時間がたち。


「は、ハァハァ……息が息ができない……」


老人は行くぐるしそうに悶えていた。

その理由は明確だ。炎の燃焼による酸素不足や、不完全燃焼による一酸化炭素中毒。


「はっハァー! やはりこの世界の科学力は最底辺だな。」


「祈君? それは我が国を愚弄しているのと同じだぞ?」


「そこ気にしなくていいから。」


そうオベロンのツッコミで喋るバランスを崩してしまった祈は咳払いをし再び説明をしだした。老人がどのように死ぬのかを教えるために。


「まず、カマエル、炎ってどうやって出来てるか知ってるか?」


「はい、マスター。『激しい酸化』でできる熱の塊でございます。」


「まあ、大体あってるな。流石はカマエル。

じゃあ、この場合何が燃えている? 炎は何かの媒介がなければ生まれない。ならば何がこの場合燃えているんだ?」


そう祈は次の質問をカマエルに投げかけた。

この中でちゃんと会話を出来るのがカマエルしかいない為だ。


「まさかマスター。『空気中の参加すると有毒化する物質を燃やさせてた』とでも言うのですか?」


「ああ、大正解だ。カマエルは二つの魔法反応しか検知できていなかったみたいだが実は俺大まかに三つの魔法を発動させていたんだ。

そいつの名は――錬金魔法。


――知ってたか?


――あの炎今はもう消えてなくなっていたが冷たかったんだぜ(・・・・・・・・)


本来なら俺は空気中の水素を燃やしているんだが、テメェには無理やり参加すると有害化する空気中に一番ある物質――窒素を燃やしてもらってた。」


「窒素を? そんなことが可能なんですか? マスター」


「化学だけでは出来ないんじゃないか? それに窒素の酸化は窒素が熱を吸収しちまうから本来できない。それが冷たくなる理由。わざわざ視覚認識とか色々すんのにむっちゃ労力使ったわ

――だが、錬金魔法で無理やりやらせたと言っただろ。本来できないことを無理やりやらせたんだ。それはもうめんどくさい錬成までしてな。」


ファンタジーの世界だ。そんなことも当然できるだろ。って言う俺の妄想を実現させただけだ。俺には【思考実現】って言う何でもアリにさせてしまうスキルがあるから

多分本来はできないよ? あくまでチートファンタジーということで許してください。


「そして二つ目。カマエル。今炎が消えてるな、どうしてだ?」


「はい、マスター。それは先程言った通り『燃焼するための酸素がなくなったから』でございます」


「じゃあ、カマエル。ヒトが一番必要な空気って分かるか?」


「はい、マスター。酸素でございます。」


そう流石に分かってきたティターニャ達は「まさか」みたいな驚愕の声を漏らす。


「じゃあ、俺が展開していた風魔法。何をしていたかわかるよな?」


「はい、マスター。当機達に酸素の膜を作っていました。」


「だから俺らは、呼吸ができるがテメェには作ってない。だから酸欠になる。」


そう祈は淡々と説明しているが、老人はそれを聞くのが精一杯と言ったところだろう。理解しているかどうかは知らないが。


「じゃあ、三つ目。」


「まだあるんですの?」


祈の三つ目の発言にティターニャはそう声を漏らした。


「ああ、これが最後だ。カマエル、俺の最後の魔法処理分かるか?」


「はい、マスター。この空間を地魔法で密室にしています。」


「正解だ。じゃあ、カマエル。密室空間で換気をしていない中で燃焼をするとどうなる? それも酸素が薄い中でだ。」


「はい、マスター。不完全燃焼――即ち一酸化炭素が出来てしまいます。」


あくまで普通の炎でだが、まあ細かいことを気にしていたら禿げる。あくまで冷たい炎でも同じ現象が起こると仮定する。


「そうだ。これでピースが全部揃った。」


そう言って祈は三本指を老人に向けて突きつけた。


「有害物質の窒素酸化物、一酸化炭素。そして酸素不足。これは確実に『炎』がもたらす死だ。最初は無理やりだがあとの二つこれは『炎使い』として大事なことだろ。」


自分のことは自分が一番知っているように、自分が一番使っているものはそれ以上に知らなければならない。祈の場合は『炎』これがそうだ。

そんな『炎』を極めた祈の前でどんな小細工が通用するというのだろう。


「まあ、爺さん怠惰だったな、知らないものは知っている者にはどうやっても勝てないのよ。

あと強いて言うならば、妄想力の強さをものすごく語っていた人がいたことかな。

それが爺さんの敗因だ」


そう言って老人が息絶えたのを見届けると祈は風魔法と錬金魔法を使って空気の全てを元に戻す。

それじゃないと気圧とかなんだのほんだので扉が開いた時大変だからな。

老人が死ぬと扉の開くガタンと音が鳴る


「さ、空いたみたいだ。行こう次の階へ」


「はい、マスター。どこまでもついて行きます。」


「誰も思わなかっただろうな。まさか自分の権能を悪用されて自分の権能で死ぬだなんて。」


そうオベロンが言い着いてくる。

それに続きティターニャ、アクア、シュタが着いてくる。

階段を降りるとそこはまた殺風景な薄暗いダンジョン風の地形だった。


「ヴ。トラウマがフラッシュバックしてくる。」


そう祈が呟くとエレイン、オベロン、シュタがどんよりとした目つきになってしまった。


「どうかしたのですか? マスター」


「ああ、第一の試練〝迷宮〟って言う試練があったんだけど、それを何周してもゴールできなくて5時間ほどさまよった挙句、正規ルートがボタンを発見せよだったんだから泣きそうになった。」


「旦那様。それって、トラウマって言わなく無いですか?」


「ま、まあいいの。トラウマなの。もうね。うん。思い出しただけで泣きそう。」


そう言い本当に涙が出てきた4人。そしてティターニャは祈とエレインをヨシヨシして話をそらしてこういった。


「それで今回のええと、第四の試練は何なのでしょうか。」


「ああ、そうだったな。えーと……


――第四の試練〝空間〟だってさ」


その言葉がこのとてつもないほど広く暗い『空間』に響き渡った。


この物語はフィクションです。

窒素は燃えません。


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