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4章17『度が過ぎた忠義』

いつものように眩い光が終わり目を開けるとそこは南国ビーチだった。


「アルフヘイムか。」


「そのようですね。」


そう俺は太陽の眩しい光に照らされながらそう言った。

この世界は妖精卿アルフヘイム。文字通り妖精の住まう国。

メイヴという昔の女王様が作った魔道兵器〈メイヴ〉。それがひょんなことから封印解除され今はメイヴが作った〈メイヴ〉を封印しておくための地下迷宮にいる。

地下迷宮なのに太陽があったりとか朝と夜の区別があったりとまさにファンタジーだがそこをいちいち気にしていると禿げてしまうので割愛。

そして。


「ここが異世界なのですねマスター。」


「「!?」」


その声に驚いた祈とエレインは声にならない声を上げた。

その声の主は、言うまでもないだろう。


「カマエル!? どうしてここに?」


「やはりマスターののみ以下の知能では当機の言葉を理解も覚えすらもしてませんね。」


赤髪ツインテで胸もあり、はっきり言って赤髪ツインテで巨乳高身長なんて赤髪ツインテへの冒涜だ! 死んで出直してこい! と思うかもしれないが、彼女はそのありきたりすらも凌駕する美貌を持ち合わせている祈の従者【忠義】のカマエル当人だった。


「まさかあの言葉がそこまでとは思わないだろ?」


「いえ、当機はいついかなる時もマスターのそばに居ると誓ったではありませんか」


「いやいや、ものには限度ってもんがあるだろ。」


「どうやら、当機の【忠義】はマスターに誓ったことは必ず実行される。なんて力があったのかも知れませんね。」


「知れませんね。じゃないでしょ!? まあいいわ気にしてたら火あぶりにされて死滅しかけてる毛根ごと禿げる。ここはアルフヘイム、妖精の住まう世界」


そうキレキレなツッコミを入れながら、祈は疲れこの世界の説明に入った。

なんか、他人に異世界の説明をするのって新鮮。


「妖精ですか? ではこのえーと……何でしたっけ?」


「エレインです。」


「すみません。当機マスターにしか興味がございませんゆえ。」


「おい、俺の娘だぞ。」


「そうですよ。ぷんすかぷん」


そうわざわざ怒ったことを口に出すというこれ以上に可愛いものはないだろうことをサラリとやってのけるマイドーターぱねぇっス。


「そうでしたか。では認識を飛び回る羽虫からマスターの娘さんに変えることにします。」


「私の認識ってハエと同じなんですか?」


「はい。何度か間違えて潰そうと思ってしまいました。」


サラリとエレインにそんなことをしようとしてたのか。と心の中で叫ぶ祈。

その変な空気を戻そうと祈は元の質問コーナーを再開した。


「それはそうとなんだ? 質問なら受けるぞ。」


「はい、マスター。このエレイン様はこの世界の住人なのですか?」


「いや、それは違うぞ。あくまで俺の魔法の一種でしかないな。闇魔法に属する召喚魔法それの召喚妖精って奴がエレインだ。」


「では、この世界とは関係ないのですね。」


「ああ、そうだ」


そう答えて次の会話に移ろうとしていると、遠くから水着を着ていたティターニャがこちらに向かってきた。


「旦那様ー! お身体取り戻したのですねー!」


「誰ですか? 今すぐ消えるか死ぬかしてください。」


そう言って【峻厳(ゲブラー)】を顕現させ〈五翼の太刀〝大鎌〟〉と言い出てきたのが所々が今にでも折れそうなほどの細さの柄を持つからくり仕掛けの大鎌。

それをティターニャ、オベロン、シュタ、アクアの首元で寸止めした。


「ちょっと待てカマエル。その気緑髪の娘が俺の嫁ティターニャで、その黒髪の男の人がその兄さんで、そこの人はアクア仲間だ。そこの人は……」


そう言って祈は手でOKマークをしてそれを見たカマエルは大鎌でその首を跳ねた。


「痛たたた。ちょっと祈様酷くないですかぁ。」


「あ、生きてたのー。それは良かったー。」


そう棒読みでシュタに言う。

シュタはデュラハンって言う首と胴体がバラバラな妖精さんだから首をはねられても死なない。それを分かっていてのネタだ。

タネを知らない人はさぞ背中に冷や汗が流れたことだろう。どこぞのマジシャンより凄いぞ。


「酷いじゃないですかぁ」


そうサタンとは違ったなんというかサタンは幼女ってイメージがあるから幼い感じでって言えるんだけど、シュタの場合は、なんというかおっとりした? が一番あっているのかな? ゴホン。

そうサタンとは違ったおっとりした声が聞こえる。


「いや、ごめんごめん。カマエル、全員仲間だよ。」


「そうですか、マスター」


そうカマエルに言っているとティターニャの声が聞こえる。


「ええと、どちら様ですか?」


「当機は〝天使〟と〝悪魔〟が住まう世界ヘブルの〝熾天使〟【忠義】のカマエル・フェイス、祈様――マスターの従者です。ティターニャ様。」


「従者? 何ですか? また祈さんは女の人を誑かしているのですか?」


ティターニャの方から冷たい目線――いや見つめられるだけで凍って二度と解けなくなるような目線が放出されている。心做しか言葉のはしはしに刺があるように聞こえた気がした。


「いや、そんなことをしている気はさらさらないのだけれど」


「ならいいです。どうせならばまた海で遊びませんか?」


「それはいいな。と言いたいところだけど……。ティターニャ達元の目的覚えてる?」


祈は周りの海で遊びたいと訴えているような目を見て言った。


「何を言う、海で遊ぶためだろ?」


「旦那様と海でデートを」


「海♪ 海♪ 海♪」


ダメだ完全に元の目的を忘れている。あれそういえば今何階層目だ?

地下3階、〈第二の試練〝海洋〟〉エリアで、今の進度は地下4回〈第三の試練〝炎獅子〟〉か。確か誰もあいつに勝てないから留まっているんだっけ。俺が元の体に戻るのを待って。


「ちーがーうーだーロー! 〈メイヴ〉を止めるためだろ!」


「ああ、確かにそんなこともあったな。」


「忘れていました。」


「お前らこの星の危機感大事にしろよ。」


〈メイヴ〉というのは、世界を壊す魔道兵器。それの的になると体が跡形もなく爆散する。極めて危険な兵器だ。まあ、危険じゃない兵器はないんだけどね。


「ほら、思いっきりバカンスしてないで行くぞ。ほら着替えて、ホントにもー」


そう祈はため息を吐き遊ぶ気満々バカンスムード100%の妖精4人を引っ張り出して着替えさせる。


「じゃあ、行くぞ。俺は無能じゃないからな。」


「おー。」「おー。」「おー。」「おー。」「おー!」「おー!」「……。」


完全にやる気のないさっきまでバカンスムードだった妖精4人と、やる気満々の祈とエレイン。残ったカマエルは黙っている。

カマエルの事だから、こんなことにじゃれるのは低脳のすることです。当機は高性能なのでこんなことはしなくても良いのです。とか考えているのだろうとかを祈は考えながら祠にある階段を降りていった。









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