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4章14『元の身体』

「そういえばマスター」


少し前を歩いている半機械少女のカマエルが後ろを振り返りそう言った


「なんだ? カマエル」


その言葉に祈はそう聞いた。


「あの時マスターは当機を庇いましたが、当機の〈三翼の太刀〝守護〟〉があればあのくらいの攻撃なら軽く守れましたよ?」


防護なのだったら多分シールド状になるんだろうなー。とか考えながら祈はその自分の妄想にシールド状だったら太刀じゃなくね。というツッコミを入れた。


「え? マジで。」


「はい、多分ですが。マスターが当機やサタンの危機を察していたのならもしや守れなかったかも知れません。

このようなのみ以下の知力の〝魔王〟ごときに殺される当機ではありませんが。」


「じゃあファインプレーということにしておいて」


「はい。そのような事にしておきましょう。ありがとうございますマスター」


そんな会話をしながらこの広大な野原を歩く。

この世界のことやお互いのことを話した。


「え? じゃあカマエルは国のお姫様なの?」


「はい。正確に言えばゲブラーの王女です。」


「え? そんな人を従者にして俺よかったのか?」


「はい、当機の国の人々は当機が〝熾天使〟なのも〝役割〟が【忠義】なのも知っていますから問題ないと思います。

まあ、たまにそれがわからないノミ以下の脳の持ち主の方々もいますがそこは目を瞑ってもらえると嬉しい所存です。」


「そうか。おっ、あれはもしかして……」


「はい、マスター。あそこにいるのがホドの王女【正義】のラファエル・ジャスティスです。」


遠目から見た彼女の第一印象は、警察の人だった。

祈は息を切らしながらサタンを抱えて走り出した。それを追うようにカチカチと早めな音を鳴らしながらカマエルが着いてくる。


「ハアハアハアハア……あった。やっと見つけた……。」


「パパ? パパなのですか?」


「ああ、エレインただいま。」


「遅いですよ。何日待ったと思っているんですか。」


そう半分泣いた――というか完全に泣いていて涙をボロボロと零しながら祈の服の身体に抱きついて言った。


「感動の再開なのですよ。」


「やりましたね、マスター」


「マスター? パパこの機械少女は誰ですか? あとサタンさんがどうして一緒にいるんですか? パパ? ちゃんと答えてください。」


そう問い詰めてくるエレイン。


「ええと、かくかくしかじかで……。」


「なるほど。まあいいでしょう。パパの事です。」


そう理解が早くて助かるエレイン。

実際はかくかくしかじかなんて言ってないよ、あくまでのアレで……。はい。嘘吐きました。多分エレインは聞く前に大体のことを予測しているのだろう。ホントできた娘だ。


「じゃあ、我が身体へ戻りますか。そういえばどうやってやるんだ?」


「知らないのですよ」


「力になれず申し訳ありませんマスター」


みんなの言葉は変わらずNOだった。


「え? ここまで来たのにまさかの元に戻り方がわからないパターンかよ。」


「頭ゴッツんとかキスとかはどうでしょうか?」


なるほど……入れ替わってる? 系の奴の定石みたいなやつか。とか考えながら祈は一つ残念なことに気がついた。


「どっちも、頭がないから出来ないじゃん。」


八方塞がりになってしまった。ここまで来て元に戻る方法を知らない。それは、魔王の部屋についたのに魔王が不在くらいゲームクリアできない状況だった。

レベルが足りないとか、石がないとかわかっている情報があるならいざ知らず、何も情報がない中どうやって元の体にもどれと?


「そういえば、この身体本当に俺のか? どっからどう見ても美少女なんだが」


「これは、【虚飾】の権能で変わっているだけです。」


「そうなのか」


「話は聞きましたぁ。私に任せてくださいぃ。」


そういったのはさっきまでやっと【憤怒】の感情を抑え気絶していたサタンだった。


「まず自分の今の身体から自分の世界へ戻りますぅ。そしてこちらの身体へ戻るんですぅ。」


「ええと、自分の世界とは?」


「〝天使〟〝悪魔〟なら自分の魂の世界をみんな権能として持っているはずです。」


「俺この世界の人間じゃないんだが。」


また、可能性が亡くなった。


「……いや、待てよ。もしかしたらできるかもしれない。どうやって権能使うんだ?」


「それはですねぇ。権能の名を言ってその後に〈世界〉と言うんですぅ。」


「ええと……権能名……あったこれだ。」


そうポッケに入っているスマートフォンを取り出しアプリでこの世界の能力を確認。すると見事、権能たるそれがあった。


「【寛容】。」


「【寛容】ですか。当機ですら受け入れたマスターにピッタリの権能ではありませんか。」


そうカマエルは言った。


「では、自分の世界を開いてみてください。」


「分かった。【寛容】――〈世界〉!!」


そう祈は叫ぶと自分の視界が1度光ったと思えば一気に暗転した。


「ここから、自分の体に戻ると……」


そう考えていると、遠くの方から誰かの声がした。


「自らの権能に溺れるな、自らの力を過信するな。受け入れるということはそれ以上の力が必要になる。」


その声は、あの時聞いたグロウの時の感覚のそれと同じだった。


「ん? なんだ? 誰だ?」


「我は〝創造主〟なり、また会おう【寛容】の少年よ。」


そう言って再び視界が暗転した。



□□□



「【寛容】か、お主は我の失敗作を全員受け入れてくれるのだろうか?」


そう言ったのはさっき祈に話しかけた〝創造主〟当人だった。


「【虚飾】、【憂鬱】は退場した。残り15……。

受け入れる力。咎めず許す力。それが寛容。【憤怒】のもう一つの反転体……

さあ、見ものだね。君たちのことをここから見ているよ。」


そう〝創造主〟は言い再び闇に消え去った。





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