4章13『忠義』
サタンは己の体を血肉とかし爆散したがスグに時間が巻き戻ったかのように復活する
「そうでしたね。当機達〝熾天使〟とは違いあなた方脆弱な〝魔王〟は死なない体をお持ちなのでしたね。」
「……。」
「当機達はいずれ死にます。それは人に近づいた証拠でもあります。ですがあなた方脆弱で低俗な〝魔王〟は死なないだけの頑丈な体を持っているだけで悦に浸っています。そういうのはいいですよ、滑稽で」
そうカマエルの挑発的な毒舌はサタンにはまるで聞こえていないかのようにサタンは立ち振る舞う。
「当機カマエル・フェイスの【忠義】の名の元に先代が成し得なかった〝魔王〟討伐を終わらせます。」
カチカチカチカチ、そう早くなる歯車が回る音が聞こえてくる。
半分が機会で出来ているカマエルはその音を轟かせまるで死の刻印をサタンに押し付けているようにも見えた。
「【峻厳】――〈二翼の太刀〝鱗甲〟〉」
そうカマエルが言うと、12の翼上に広がった短剣が自らのなくなった右手に装着、そして手の形を作り鋭利で棘のある剣に変わる。
そしてその右手の棘剣と左手の大剣でサタンの体を薙ぎ払う。
「ん……。そろそろ……。」
そうサタンが言ったかと思うと、その拳でカマエルの右手、棘剣を殴った。
そうして、キシキシと亀裂が入りバラバラに砕け散った。
「1……。」
そう数字を数えたかと思うと、サタンは二激三激と復活してゆく歯車の武器を壊してゆく。
「5……6……」
その数字が上がっていく毎にサタンの力が上がっているように見える。
「それがあなたの権能ですか。当機と似ていますね。
【峻厳】――〈四翼の太刀〝粉塵〟〉」
そうカマエルが言うとその棘剣だった欠片が見えないほどに細かくなる。
「クハっ。」
そして、その細かくなった歯車がサタンの内部に入り、内部から切り刻んでゆく。
――これで二回目。
「まだまだ行きます。ハァッ! ハァッ!」
そして再生してはその歯車で再び殺し、また殺す。
――四回目、五回、六回……二十回、二十一回……。
その位サタンが死んでから学習をし、その場に歯車だけを置いて常識を超えた高速移動をして死の連鎖を回避。
「【峻厳】――〈十二翼の太刀〝剣翼〟〉」
それを見てカマエルは、粉々の剣を12の短剣で出来た羽に戻した。
「……。死ね……。」
そうサタンは言葉をこぼすと少し拳を後ろに引き、タメなんかは数秒なのに、その攻撃が全てを終わらせるような気迫を感じた。そう、まるでその一撃で世界が終わるような気すらした。
「フェっ……。なんですかこの気迫。この当機すらおも屈すというのですか。」
「ヤベェ、あれを受けたらッ……」
そう言って祈はその戦場に――サタンの前にカマエルを庇うように立っていた。
なんというか、それをやらせたらいけない。そんな気がしてならねぇんだよ。自分の身を徹してでも。
「やめろ、サタン! 声届いてるんだろ? それをやったら世界が壊れる。それをお前らは望まないはずだ。」
「あなた。当機を庇っているのですか? 無駄だと思いますよ。二つの世界を半壊させたのは誰でもなくサタン当人です。」
「それなら――それだからこそ辞めさせないと。再び同じ過ちをさせるわけにはいかない。」
「当機理解しかねます。何故そこまでして当機を、この世界を守ろうとするのですか?」
「それは、お前を殺させちゃいけないって心がうるさいんだよ。絶対今サタンにお前を殺させたら俺は絶対後悔する。」
「そんな事のために、あなたは自らの命を犠牲にするというのですか。さすがは低俗な〝天使〟と〝悪魔〟ですね。」
「そうだな。」
そんな会話を俺が目の前に立ち塞がっていて攻撃を少しためらっているサタンの隙をついてする。
そして、祈は次、サタンの説得に入る。
「サタン。やめろ。同じ過ちをしちゃいけない。」
「うぅ……。やめろうるさい……。邪魔だそいつ殺せない……。」
「だめだ。なら一層よけられない。今すぐ憤怒をやめろ。」
「うぅ……。うるさい……。」
そう言いサタンは自らの耳を塞ぐ。
「ちゃんと聞け! 憤怒を制御しろサタン。」
「無理かと思われます。憤怒に溺れたサタンには自我はありません。」
「そんなことないと思うぜ。なら何故、こんなうるさそうにしてるんだ? なら何故、俺が来た時に攻撃をやめた? 自我はあるけど制御し切れてないからじゃないか?」
「うぅ……。」
サタンはそう耳を塞いだまま、自らの力を制御しようとする。
すると、バフンとなにか小規模な爆発がしたと思うと、バタりとサタンが倒れた。
「よく頑張ったな。」
祈はそうサタンの頭を撫でてやった。
「当機状況が理解できません。当機は守ってもらったということでいいのでしょうか?」
「ああ。心が殺させちゃいけないって叫んでたからな。サタンを守った結果おまえも守ったってことになってるだけかもしれないが。
一応言っておくが俺に敵対心はないぜ。」
「それじゃあ、たかが人風情が当機を守ったということですか。不可解です。」
「そうなるな。出来れば俺の身体の元へ連れて言ってくれないか? 確か、【正義】って奴が近くにいるはずだから。」
「敵対していた当機すら守り当機を仲間に入れようと、何たる寛容、何たる傲慢でしょう……この方です……」
そうカマエルが言いひと間を置いてから再び口を開いた。
「当機【忠義】のカマエル・フェイス。今は亡き〝創造主〟に忠義捧げていましたが、新たな忠義に値するマスターを見つけました。
このようなひと風情に忠義を捧げるとは屈辱の極みではございますが、当機カマエル・フェイスは今からあなたの所有物です。」
「へ? 何どういうこと?」
「当機は【忠義】です。自分で忠義に値するひとを探すという使命があるのです。」
「じゃあ、それが俺に当てはまったと。」
「はい、左様でございます。……はっ当機とした事が、マスターの名を伺っていませんでした。」
「ああ、俺? 俺は巡谷祈だよ」
「祈様ですか。ではマスター行きましょうか。案内します。見失わない程度に着いてきてください。」
そう言われ、祈は気持ちよく眠っているサタンを抱えてカマエルについて行った。




