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4章12『天使と悪魔の世界』

それからはとても簡単だった。

一人づつ風呂に入らずが(あ、二人で入ったってことじゃないよ? (あ、だからといって知らない人と三人以上で入ったってわけでもないよ))、食事も取らず、二人して脱力しベッドに倒れ込むように横に眠った。

朝起きると、そこは知らない光景だった。

アヴァロンでも無く、アンダーワールドでも無く、地球でも無く、アルフヘイムでも無くどこか懐かしさを感じるどの色にも白が混ざっているような天国と称するのが一番の光景に1人寝っ転がっていた。


ベッドに倒れ込むように半分足の方は床についていた状況で寝ていたものだから、この場所になってから少し寝ずらいなーとは考えはしたものの起きようとはしなかった。それが仇となり、いまないはずの腰がものすごく痛い。


「どこだここ、なんか懐かしいような。」


さっきも言ったと思うが、懐かしいような光景それを祈の網膜に焼き付けた。


「なんというか、身近な感じ、ものすごく自分に近い人の感覚がする。遥か遠くのことみたいな……」


「はあ、お母さんとかお父さんとかでしょうかぁ?」


「そうそれに近い感じかなー。……って、だれ? 君?」


そう小さい幼女が急に話しかけきたのに驚いてそう祈は少し多めに驚く。


「ひぅっ。ごめんなさいぃ。私は【憤怒】のサタン・ラースですぅ。ここで気持ちよく寝ていたので見ていましたぁ。ごめんなさいぃ。」


そう自ら名乗った【憤怒】とは程遠い幼女はビクビクしながらそういった。


「ごめんな、急に大きな声出して。俺は巡谷祈だ。見張ってくれていたのか? ありがとなサタン。――ってサタン!?」


「ひぅっ、ごめんなさい。」


そう祈はその幼女の名前を言ってから驚いた。

サタン。それは七つの大罪、【憤怒】の罪の悪魔。それにだ、自ら【憤怒】と名乗ったこと、そして名前にラース……『憤怒(ラース)』が付いていることからして、この世界は……

――ヘブルだ。

この世界のことは、【怠惰】の世界にいた【憂鬱】のグルームから聞いた。

ということはこの幼女が【憤怒】の〝魔王〟か。


「その身体と男口調からして、グロウさんが持っていた身体の方ですねぇ。」


「多分そうだ。」


「小さい妖精さんもいましたぁ。確か名前は……」


「エレイン。そうだろう?」


「はい。そのような名前だったと思いますぅ。」


「じゃあ決定だ。そいつのところに連れて言ってくれないか?」


「良いですよぉ。グロウさん吸収されて体もそう長くは持ちそうもないですしぃ。」


どうやら、ちゃんと物語通りにことが進んでいる。【虚飾】のグロウは【傲慢】の多分プライドって奴に吸収された。

だが、そこからが分からない。七つの大罪はもう出来上がっている。それ以上話が進むなんてことがあるのか?


「着いてきてくださいぃ。近くに【正義】の〝熾天使〟さんがいるはずですから匂いと気配でわかりますぅ。」


「お願いする。タイムリミットが近づいてきているんだ。」


「はい。できるだけ私も人助けがしたいですからぁ」


そうサタン・ラースと名乗る【憤怒】とは到底程遠い少女に付いて行った。


「止まってくださいぃ。誰かが来ますぅ。」


歩いて30分ほどの事だ。

サタンはそう言って祈を止め、あたりの気配を手当り次第に探っていた。


「この気配は、【忠義】のものですぅ。」


「【忠義】。〝熾天使〟か。」


「はいぃ。そうですぅ。〝熾天使〟の中で一番強く、好戦的な少女です。」


「呼ばれて当機登場。当機は【忠義】カマエル・フェイスです。あなた方のノミ以下の脳にしっかり焼き付けてください。」


ええと、状況整理いいか。

まずこの娘体の半分機会出てきてんだけど。なんとなくそんな気配というか音がする。カチカチカチカチと歯車のような音が時折聞こえてくる。そしてところどころ露骨に出ている歯車。

そしてこの美貌、可愛いにも程がある。赤いツインテールに片目が歯車の瞳をした巨乳少女。赤いツインテはロリ体型にこそ需要があるはずなのにどこかそそるものがある。そして、【傲慢】の対象として置かれているはずの【忠義】がまさかの毒舌キャラ。

この少女が〝見破る者(カマエル)〟と言われているのも納得が行く。その姿はまさに【忠義】そのものだ。


「当機の美貌に釘付けなのもわかりますが、あなた方ノミ以下の方々に見られている当機の身にもなって頂けますか。」


「あまり、戦いたくないのですがぁ。」


「当機を目にしてまだその低俗な口を開いてられますか。当機のあなた方低俗でしかない不良品方にはさっさとこの世を去ってもらいます。」


そう言って、カチカチカチカチと規則的ななっていた音が急に早く大きく鳴り出す。


「当機カマエル・フェイス殲滅を開始します。

峻厳(ゲブラー)】――〈エロヒム・ギボール〉展開。」


そうカチカチとなっていた音の原因、所々に出ていた歯車達が高速回転。そして分解され、その歯車がいくつもの短剣や、ドレスのようなものを作り、身に纏う。

そして片手になった手には大きな大剣が握られていた。


「【忠義】と【峻厳(ゲブラー)】の名を持つ当機の前で甘え妥協も一切許されませんよ。低俗な虫ケラ。」


そう羽のように広げた宙を舞ういくつもの短剣、片手しかない手に握られていた大剣をこちらに構え、カマエルはそう言った。


「祈さん少し下がっていてくださいぃ。出来れば私の目の届かないところへぇ。」


「へ? どういう事だよ。」


「少し怒りますぅ。起こった私は見境無く人を攻撃しますぅ。ですから――殺されたくなければさっさと逃げろ」


そう優しく【憤怒】とは程遠かった幼女は怒り、その少し口調の悪い言葉を最後に発した。

祈は体が、いや魂が逃げろと本能的に予感した。

この戦い少しでも関わろうとすれば命がいくらあっても足りないと。


祈が命さながらに逃げ、そして今カマエルとサタンが戦っていた。いやその緊迫した戦いはまるで遊んでいるようだった。


「【峻厳(ゲブラー)】――〈一翼の太刀〝閃光〟〉」


そうカマエルが叫ぶと翼上になっている12の短剣の一つが、光の速さ、いやそれ以上の速さでサタン目掛けて飛んでいった。

だがそれをサタンはさも同然のように交わそうとはせず、自らの腕でガードした。


「さすがは低俗な〝魔王〟の一対です。防御方法まで低俗だとは。」


「……。」


カチカチとなる音と共にカマエルの行動が速くなる。

まるでゼンマイを強くまいているように。時の流れが早くなっていくように。


「【忠義】――〈重力圧:58〉」


そうカマエルが言うとサタンの周りに強い重力が生まれ、あたりの地面が割れて窪んだ。

だが、その攻撃すらもサタンは素直に受け反撃をしようともしない。ただ怒りの表情を浮かべているだけ。


「はて、あなた不良品様には似合わないほど頑丈に出来ているようですね。当機には関係の無いことですけど。

【忠義】――〈重力圧:0〉」


そうカマエルが言いサタンを取り囲んでいた重力全てが消失する。

すると、そこだけ、無重力空間になる。気圧が薄い。否、ない状態ではポテチの袋でもなんでも爆発する。それは人も同様だ。

サタンは自らを血肉に変え爆散した。










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