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4章10『錬金術師』

「錬金魔法か……確かこっちではそれが主流なんだろ。見てみたい。」


「はい。いいですよ」


そう俺は答え、それにミティは頷いた。

錬金魔法。地上では魔法と同じもの要するには詠唱か魔法陣かどれかで発動させるのだが、それはどのようなものなのだろうか。


「では」そうミティは呟き踊り出したのだった。

その体全身の踊りとともに、体から光の結晶がこぼれ落ちるようにして、少しずつ少しずつその結晶の量を踊りの深さや早さで増やしてゆく。

そして少しすると、その光の結晶がミティの後ろ、相当な大きさの空き地のような場所に集まり、魔法陣を描いてゆく。

そしてその魔法陣がすぐさま完成すると、そこの地面に書き描かれた魔法陣の中央からモコりと土が飛び出したかと思うと、そこから噴水のように土が溢れ出し大きな像を作り上げていく。


「おお……」


祈はその驚くべき錬金スピード、再現度、などなどたくさんの観点に興味を持った。


「どうでしたか? これが私の錬金魔法です。【舞踊】というスキルで普通ならばかかる時間の半分以上の時間しかかかってないんですよ。」


そうだ。その踊りも豪勢で像もすごいクオリティだった。だが、祈が驚いているのはそこではない。錬金のスピードだ。

祈も前に空気中の物質から糸を作り、パジャマを作ったことがあるが、それを作る時間がものすごくかかっていた。少なくとも十分くらいは。

だが、流石は錬金魔法が主流の世界だ。この文章量、すごく時間がかかったものだと思っただろう、それは違う。この出来事は少なくても1分以内、いや、30秒未満の出来事だ。

その文踊りの速さも尋常ではなかった。1秒に三十もの動作はしているだろう。


「ああ、普通にスゲーよ。いや異常だよ。ほかの人たちもこんなに早いのか?」


「いえ、安定特化の詠唱は時間がかかりますし、スピード重視の錬成陣では姿形が安定しません。その代わり今の私以上の速さが出ます。ですがその不安定さにより錬成陣の使用者は本の一握りです。」


「へぇ、じゃあ今の【舞踊】はどうなんだ?」


祈はそうミティに質問を入れた。


「私の【舞踊錬成】は安定かつ早いです。言わば最強の術式という訳です。私実は結構すごい錬金術師なんですよ。この【舞踊錬成】も私のスキル【舞踊】があってのものですしね」


「へえ、凄いんだな。」


「はい、それはもう。何せ、この世界に来て錬金魔法を広めた地上人の錬金術師、ホーエンハイム・グランドアルケミックの子孫ですから。」


ホーエンハイム……その名前には聞き覚えがある。たしか錬金術を使い医化学の祖と呼ばれていた人だ。その名前を持つホーエンハイム・グランドアルケミック氏がここにいるパラミティーズ・グランドアルケミックの祖先だと言う。

しかもだ、その錬金魔法、元は地上のものだという。


「何せ、ホーエンハイムはこの世界に液体性、燃焼性、個体性この三つを唱え見事実証され一般化されたましたから、この三つの要素は、」


「三原質説だろ」


そう祈は口を挟むと、無表情ながらも少しだけ驚いた表情を見せてこう言った。


「はい、そうです。地上でも三原質説が主流なのですか?」


「いや、地球っていう世界にテオフラストュス・フォン・ホーエンハイムって言う錬金術とも医師だとも言われている人がいてその人が解いたのがそれなんだよ。」


「へえ〜。名前といい偶然の一致ですね。」


「そうだな。」


まあ、その三原質説も四代元素説もその両方が原子論によってどこかアニメや漫画のファンタジーの世界にしかいないようなもんだからな。

それでも結構な支持性があったからそうは凄いものなのだろう。


「そして私の錬金魔法の適正値90000超えですからね。私に錬成できないものはありませんよ。」


「人も?」


「いえ、それは試したことがないのでわかりません。魔法適正値の最大限がどこまでかも分かりませんし、何より人を錬成しようだなんて思うようなこともありませんし。」


「いや、それもそうだよな。クエスティングビーストみたいなバケモンになるわけにも行かないし」


「はい。ですから。絶対に私の前では死なないでくださいね。祈さん私の中でも好感度高いほうですよ。」


決して照れもなく、かと言ってからかっているわけでもなく、ただ言ってみたかのような感じでそう言ってきた。


「そうなのか。俺は死なないよ。――ってこれ死亡フラグじゃねーか。」


「シボウフラグ? 何ですかそれ。」


「ええと、こいつ絶対死ぬだろうみたいなことを言ってしまうこと。みたいな? 例えば『俺この戦いが終わったら結婚するんだ』とか」


「なるほど、分かりました。祈さんは死んでしまうのですね。」


「いや、何がなんであろうと俺は死なねーよ。」


祈はミティのその言葉に笑って答えた。

――この会話が死亡フラグになっているとは知らずに。


「たしか祈さんこの魂だけの姿であと1日くらいしかないんじゃないんですか?」


気がついたらもうそこは暗かった。もう夜になっていた。

残り一日ほどしかない。それが過ぎると祈はその魂の姿ではいられなくなり魂は消える。肉体と魂と精神。この三つがあってのヒトだ。どれかが掛けていたらそう長くはない。


「い、いや。まさか間に合わないことなんてないだろ?」


「どうでしょうか。こういうのって『あと少し……』ってところで間に合わないんじゃないんですか?」


「え? そんなことないよね?」


祈はそう不安げに声を漏らした。

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