4章7『地底世界』
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「ここか、裏側は……」
そういったのは姿形がない透明人間だった。
その正体は噂のパパ――巡谷祈の魂が服に乗り移ったものだ。
祈は今、アヴァロンのアクアレイクの北北西に位置する、グレートグラウンドから一番近い湿地の町マースで、この世界に戻ってきてからこの街にいる人間全員がいなくなるという怪現象を解決すべく、事の発端だと思われる、緑の騎士ベル=シラックが居た闘技場の壁にそびえ立つそこに行くための道がない場所の手がかりを探しに向かっていた。
裏側に何かあるかと探った祈は闘技場のその場所のちょうど裏側にいた。
そこには……。
「ビンゴ! バッチリ真後ろに建物がある。」
ちょうど闘技場に隣接するような大きな建物それもあそこにあった場所の扉の大きさとバッチリ合っている。
祈は恐る恐るその中に入っていく。
中には勿論のこと人一人いない。それもそこを多くの人が通った形跡もなく争った形跡もない。
「うーん。ますます怪しいところだなー。」
まずここは間違えなく敵の緑の騎士の本拠地で間違えないだろう。
多くの人が通った形跡がないにしろ10人程度の人数の形跡なら余裕で見つけられた。
祈は恐る恐る建物の奥にあったと上の階へと行く階段を上っていく。
すると、そこには……。
「やっぱりなここにあったか……」
そこにあったのは、大きなこの建物には不相応な大きさの扉。この扉の模様といい間違えないだろう。闘技場の壁に面するスペースの扉だ。
だが、祈は少し考えた。
(いや、ここはあの扉とは直接は繋がっていないな。少し間があるはずだ)
そう思った。何故ならば、この建物の奥行きそのすべてを行っていない。そして少しあそこの場所の真後ろとズレている。要するにはまだこの奥に一つ間がありその奥にあの場所と繋がるはずの扉があるということだろう。
祈はそう考え、重苦しい扉を押した。
ガガガガガ、ゴゴゴゴというような鈍い音を立てて扉の開かれる。
その奥にあったのは建物の残りの間、教室一つくらいのスペースの間があった。
「なんだこの間……。」
その間に合ったのは下の階へ行くための階段と少しずれた場所に同じような扉がもう一つある。ただそれだけの間だった。
(きっとこの先は、あの間だろう。じゃあ、この階段。なんだ?)
とにかくには最初にそのもう1枚の扉を開ける。
鈍い音と共に薄暗かったその間に輝く陽光が祈の網膜に焼き付かれる。
(やっぱりそうか……。)
急に暗いところから明るいところへ行ったことにより一瞬眩しさで目が眩むが直ぐに視界が冴え渡り、目にしたことある光景を目にしたことのない場所から見た。
やはり、ここは闘技場の緑の騎士がいた場所だろう。
「じゃあ、この階段がなにか怪しいな。」
そうまた中に戻り、階段の前に立ってそう言った。
見た感じこの階段1階――一個下の階に続いている階段ではなさそうだ。それよりももっとした地下1回やそれより下まで続いていそうだった。
「降りてみるか……。」
そう祈は呟き一段一段丁寧に階段を降りてゆく。
長ーい長い階段を一段一段。降りてゆく。
「ンな。長すぎだろ。どこまで行くんだよ。」
そんな先の見えない、ロウソクが規則的に並んだ小さい急な階段をかれこれ一時間以上は降りているつもりだ。
だが、見えるのはロウソクの光と先の見えない階段のみ。
「こんな時誰もいないと寂しいな。」
そう呟いてから一時間から二時間。やっとロウソクの光とは違った自然の光が見える。
「それよりも、どうしてこんな階段が長いんだ? 」
少なくともこの階段を降り続けて3時間ほどだ。1分に2階分くらいのペースで降り続けているから、大体360階くらい降りたことになる。
そんな地下に自然の光らしきものがある。不自然にも程がある。長い階段といいもうあの光は星の真ん中にあるマグマかなにかとも予測できる深さだ。
理解不能だ。だが言えることはひとつある。ここは異世界だ。地球でいう普通は通用しない場合が多い。
――例えば、地底世界だとか……。
それからその光だけを目指してただひたすらに下に降りていった。
光が大きくなり、あと1階分降りるとその光にやっと届くくらいにに降りた。
「なんだよここ……」
それは想像していたとおり……否、想像を絶するほどの光景が目に焼き付かれた。
「地底世界かよ……。」
そこの光景は、花が咲き乱れ、高原の上には大きな城がそびえ立ち、山も海も風も太陽も空も街も町も人も虫もモンスターも、何もかもがある世界だった。そこは地底と言うにはあまりにも美しすぎる世界だった。
「まさか地底世界があっただなんて……。とにかく今は情報だ。この地底世界の情報が欲しい。」
そう言って祈は階段を離れ近くにある街に向かう。
地底世界があるだなんて想像もしてなかった。だがそれは確かに人の心の中で一度は想像したことがあるだろう場所だ。
(地底世界か……どんな所なんだろうか……? 待ってろよ。多分すぐそこだ。この世界にアーサは居る。)
そう祈は心の中で叫び、咲き誇る花園。そこを歩き出した。




