4章6『雑談』
「はあっ! そうです。グロウさんが取り込まれたらパパが戻ってきているはずです……ほへっ? 残ったのって美少女に【虚飾】されているのだけじゃないですか……。」
そう声を漏らしたのは一部始終を離れたところから見ていたエレインだった。
たしかに【傲慢】のルシファーは【虚飾】のグロウを取り込んだのだが、その場に残っていたのは、美少女の姿のグロウその者だった。
「ホントですね。何かひょんなことで権能のみが残ってしまったとかでしょうか?」
そう答えたのはエレインの隣にいた警察服姿の【正義】のラファエルだ。
「んあ、そうだそうだ。いいよ今日はもう、流石にこの崇高なる我でも疲れたわ。」
そうルシファーは言い自らの跳躍力でどこかへ飛び去って行った。
ルシファーが遠くへ行くことを確認するとエレインとラファエルは倒れていた美少女の元へ行く。
「生命活動はしているけれど魂がここや〝虚飾の世界〟にいないみたいなのですよ」
「そうですか……。」
そのラファエルの言葉に安堵したのか不安がったのは分からないがそれらが合わさったようなぎこちない表情と声で言った。
「あっ、そう言えばあなたはどんな存在なんですか?」
そうその場の地面に座り込んでラファエルは仄々と聞いていた。
たしかにその疑問が湧き出てくるのもわかる、ラファエルの中ではエレインも【虚飾】の一部だと思い込んでいることもあるからだ。
そんなことを思ったエレインはラファエルの肩に座り話し始めた。
「ええと、まずここから話をしなければですね。
私とパパは異世界人なんです。パパは異世界を渡る力を持っていてパパの召喚妖精である私も一緒に世界を旅しているんです。
そして〝虚飾の世界〟にいた時は私は顕現出来なかったのでよく分かりませんが、グロウさんの話によればその世界の最中パパの身体はグロウさんに乗っ取られていたと思います。」
「へぇーっ。エレインちゃんで合っていましたか?」
「ハイ。合っています」
「エレインちゃんとパパさんは異世界人なのですね。」
そう以外みたいな顔をしてラファエルは言った。
「この世界に来てやっと顕現できるようになった私はどうにかパパを取り返そうとグロウさんと一緒に行動しました。短い間しか一緒にいれませんでしたがいい人でしたよ。」
「じゃあ、エレインちゃんはワタクシ側の人間ですか、【正義】の味方ですね」
「はい。もちろんパパもそうです。」
「じゃあ次はその、パパについて教えてくれないかな?」
そうラファエルは次の質問をする。
それにエレインは「いいですよ」と答え話を続けた。
「パパの名前は巡谷祈。地球という場所に住んでいた普通のこーこーせーでした。
ある時、パパは異世界にわたる力【転生】をひょんなことから手に入れました。
それで、一番最初に言った世界。私の故郷でもある世界アヴァロンで私はパパの最強の魔力によって召喚魔法で呼び出されました。」
「最強の魔力?」
「はい。パパはものすごく強いんですよ。それはもう〝魔王〟なんかとは話にならないくらいに強いんですよー。自慢のパパです。特に炎の魔法が凄くてチート能力たくさん持ってて、かっこよくて、優しくて……。」
「ねえねえ、もしかしてパパがいるんだったらママも居るんですか?」
「はい、いますよ。ママの名前はアーサ=グランドナイツです。もちろんママもものすごく強いんですよ。剣の達人で剣だけの純粋な勝負ならパパも負けてしまうかもしれないほどです。その強さ故に『円卓の騎士姫』なんて言う二つ名もついていて可愛くて……。でもママ今記憶喪失でパパや私と居た記憶を失ってるんです。
自分の名前も何もかもが覚えてない中で、ママはパパを愛していることだけは覚えていたんです。」
「記憶喪失? 人事かもしれないけど大変なんですね」
「いえ、今もママは記憶を失ってはいますが、ママも楽しそうですよ。パパはなんとしてでも記憶を取り戻そうと必死のようですが。
パパはカッコよすぎてお人好しですぐ女の子にちょっかい出して惚れさせて。本当にパパとママの一人娘である私の身にもなってほしいものですよ。
でもそれだけ、人の笑顔を救っているのも事実なので責めることもできませんが。」
「アハハ。いいパパなんだね。」
「はい。自慢のパパです。」
そんなエレインの体験談や何でもない会話を2人はずっとしていた日が沈んでもパパ――巡谷祈が目を覚ますまで。
「さて、次は私がラファエルさんに聞くばんです。」
「なんでもきいてくださいなのですよ。」
「では、この世界について教えて欲しいです。パパが目覚めた時に少しでも役に立てるように。」
そうエレインは手をぐっと握り強い意志で言った。
「では、まずこの星〝ヘブル〟は元々二つの星だったんですよ。
それが〝魔王〟が暴れたことにより二つの星は壊滅。流石にやりすぎだと考えた【憂鬱】のグルームが己の持てる力をすべて使って一つにしたのですよ。
それから一番最初の〝熾天使〟の方々が国を作ったのですよ。【慎重】は天使語で〝美〟を意味する『ティファレト』、【節制】は天使語で〝基礎〟を意味する『イェソド』、【正義】は天使語で〝栄光〟を意味する『ホド』、【堅忍】は天使語で〝知識〟を意味する『ダアト』、【勤勉】は天使語で〝慈悲〟を意味する『ケセド』、【忠義】は天使語で〝峻厳〟を意味する『ゲブラー』、【純潔】は天使語で〝勝利〟を意味する『ネツァク』それぞれその当時の〝熾天使〟の名前を付けたんです。
ですが現在の国はそれに加えあと四つあります。
メタトロンという天使が作った天使語で〝王冠〟を意味する『ケテル』。
ラツィエルという天使が作った天使語で〝知恵〟を意味する『コクマー』。
ザフキエルという天使が作った天使語で〝理解〟を意味する『ビナー』。
サンダルフォンという天使が作った天使語で〝王国〟を意味する『マルクト』があります。
紹介すると言ってもこのくらいですよ?」
そうラファエルは言っていたのをエレインはただ熱心に聞き頷いていた。
(きっとパパの事だから今どこかの世界のどこかでまた人を助けてたりするんじゃないでしょうか、なら私に出来ることはここで待つだけです。)




