4章4『限界突破』
――『虚飾』それは『内容が伴わないのに外見だけを飾ること』。
――『虚飾』それは『上辺だけの体裁』。
――『虚飾』それは『みえ』。
そういう意味を持つ【虚飾】がグロウの〝役割〟。
『虚飾』それは、地球では八つの枢要罪から七つの大罪となる時に、『傲慢』と同列視された。『憂鬱』が『怠惰』と同列視されたのと同時に。
その開いた一つの枠をあとから奪い取るように『嫉妬』が勝ち取った。
何度もいうがそれが地球での『虚飾』の〝役割〟だ。
その【虚飾】は今【傲慢】に圧倒なる力で勝っていた。
醜い姿をした大きな『形』は、自らの『形』を美しい華奢な少女になり、さっきまでいた〝魔王〟本来の姿より何倍もの力を持っているように見えた。
それはまるで『虚飾』の逆、『外見が内容に伴っていない』のだった。
(このままでは完全に負ける。アレをするしか……。)
そう思っていたのは【傲慢】の少女ルシファーだった。彼女はいつもの言動とは違ったような雰囲気でそう思っていたのだからそれは凄くやばいのだろう。
「【傲慢】――〈限界突破〉ッ!」
【傲慢】の少女はそう叫ぶと蝙蝠の羽が黒く光り、蝙蝠の一対の羽が消え鳩のような天使の羽が6対も生えてくる。しかもその羽は天使のように白くはなく輝いてはいない、その羽は堕天した天使のように黒く濁っていた。
頭には薄汚れたいわゆる所の天使の輪っかがあり、さっきまで来ていた服とは違った傲慢そのものを纏ったような服を着て、体の周りに金星のような小さな球体が不規則に回っている。
それのすぐあとに、エレインがなにかに気づいたように驚く声を発した
「ここら辺一体の小民族と思われる生命が次々へと死んでいっています。」
「そんなまさか、〈限界突破〉を〝魔王〟がするだなんて……」
「どういう事ですか?」
その意味があるような言葉にエレインはそう問いかける
「〝魔王〟が〈限界突破〉をすると周りの命を奪うのですよ。反対に〝熾天使〟は周りを癒す力がありますが十年に一度くらいでしか使えないのですよ」
「えっと……それは分かりましたが、そもそも〈限界突破〉って何ですか?」
「それは、言葉のとおり限界突破、〝魔王〟や〝熾天使〟はその極限の力本来の力とはいきませんがそれに近い力が出せるのですよ。でもその代わりに代償が必要なのですよ。元々人になりたい〝魔王〟達は人への直接的な被害を好まないのですよ」
そうそれこそが〈限界突破〉だ。
ルシファーは〝魔王〟――【傲慢】のプライドの力を極限に吐き出した。
〈限界突破〉はあたりに代償をもたらす、そこまでして掴みたいものはなんだ?
「【傲慢】ッ――〈凍結スル冷気〉!」
そう【傲慢】のルシファーが叫ぶと周りに浮いていた金星のような球体が眩い光を発し、あたり1面に絶対零度−273.15 ℃の何倍も低い冷気が放出される。
その冷気にグロウは凍てついてしまう。
(へ? どういう事だ? 前は凍ってないはずだ。あの肉体にやはり何かがある。)
だが、ガラガラガラ、そんな音が聞こえてくる。
「なんの音だ?」
その音が何の音か本当はわかっているのに、そう声に出して聞く。
その音の原因はグロウが崩れ落ちる音――否、グロウの幻影が崩れ落ちる音だ。
それが崩れ落ちるとともに本体が姿を現す、その本体はこの何もかもが凍る世界にビクともせずただ単に佇んでいた。
「あれ? 私の姿また戻っちゃっているじゃないですか」
そう言ったのは他でもない、『形』なる何かだ。その見るのも困難とも言えるその姿や声。【虚飾】のグロウの〝魔王〟の姿。
「まあ仕方ないですわ、この姿で戦いましょうか……。」
そうあまり乗らない調子で怨嗟の声よりおぞましく、恐怖に怯えた悲鳴より恐れてて、そんな声が混ざったような声で言った。
グロウはその足のような『形』を伸ばしてたくさんに振り払う。まるで何も考えないでも当たると過信しているように。
「【傲慢】――〈光速の魔刻〉」
そう叫ぶと金星のような球体が眩い光を発し、ルシファーに光の刻印が付けられる。
すると、その空気も何もかもが凍てつく世界の中を光の速さ、1秒で地球を七週する速度で移動、攻撃を繰り返す。
凍てついた空気の中の酸素や窒素、それらがあたりに霜を作る。その霜でさえも凍っている世界で動く度に風ではない風が出来、至る所に鎌鼬の原因だとも言われる真空で切れるという現象が起こる。
「んん、痛いなぁ。あとうるさいですわよ」
その光速であるはずのルシファーになん本もの『足のような何か』で拘束、攻撃される。
「カッカッカッ、カァ〜ッカッカッ!! 愉快愉快。茶番は終わりにしようではないか。」
そうルシファーが負けを認めたのか高笑いをする。
地球の史実上では『虚飾』は『傲慢』に負けて取り込まれる。
だがそうはいかないみたいだ。




