4章2『強者と弱者』
「私でして?」
そう男の身体、声でお嬢様口調で答えたのは、ルシファーに名指しで呼ばれた【虚飾】のグロウだ。その男グロウの特徴といえばやはり体半分を火傷痕で覆っているのと、コウモリの羽、鳩のような羽のどちらをも持っていないその二つだ。
「貴様からただならぬ気を感じる。【虚飾】貴様どこの身体を使っている」
「さあ、私にもよくわかりませんわ」
「フッ、如何なる嘘も我が【嘘を見抜く者】にもよれば見抜くのも容易いことよ!」
嘘は見抜かれる。そんな能力【嘘を見抜く者】や摂氏6000度の炎を出す【漆黒の紅蓮地獄】、絶対零度−273.15 ℃の寒さ出す【純白の氷結地獄】そのようなチート能力、いわゆる所の俺KAKKEEEE、自らの中二病を体現させる能力だ。その能力の強さはその者の想像力に比例する想像力が強ければ強いほど【傲慢】の権能は強くなる。
「その小さい妖精や羽のないその体がその証拠。」
「この身体の主が〝私の世界〟に入ってきましたわ。その時にこの人だと実感したのですわ」
そうグロウはルシファーに語りかけた。
そのゆらぎのある実態で。まるで何かを隠しているような形を見せていたかのようだった。
「いざ勝負。【傲慢】の我としては勝負を仕掛けるのは具の骨頂。だがこの【傲慢】な我がその恥を偲んで貴様に宣戦布告する! 喜びたまえ我にここまでさせたのは貴様が初めてだ」
そうルシファーは【傲慢】故のプライドすらも捨てグロウに宣戦布告した。
「良いでしょう、私でよければ戦いましょう。そこのジャスティスさん見ていてくれませんこと?」
「よいのですよ。但し、あまり周りに被害を及ぼさないようにしてほしいのですよ。」
その言葉を合図に両者は攻撃を仕掛ける。
方や身体と魂が合っていないかのような戦いぶりを、方や可憐な動きで応戦を。
それぞれの戦い方でお互いを制そうとする。だが……
「一見互角で戦っているように見えて【傲慢】の方はギリギリと言ったところでしょうか……」
「そうなのですよ。【虚飾】の方は体と中身が合っていないようですが、力自体は膨大なのですよ。【傲慢】の方はその攻撃をギリギリ良けていますよ」
それを遠くから見ていたエレインとラファエルは呑気にそんな会話をしていた
その中で【傲慢】はとうとう【権能】を使い出した。
「【雷霆の剣舞】ッ!!」
そうルシファーが叫ぶと幾筋の雷が落ちる、大半ははグロウ目掛けて、一筋はルシファーの手元に落ち、1振りの剣を作る。
その刀は雷のようにジグザグしビームソードのような刀身を持っていて両手剣の部類に入るほどの大剣だ。
その大剣を振るとたちまちにあたりに雷撃や閃光が散りばめられる。
「クッ!?」
そうグロウは幾筋の雷と雷剣の小さい雷撃と閃光のせいでそう声を漏らす。
それに応戦すべく、炎に特化した身体の能力で炎を出し、それをメラメラと燃えるような形をした大剣にする。
それを両手でまるでそれが早さ重視の短剣かのように振り上げる。
そのスピードはまるで……と言うより完全にルシファーには防ぎきれていなかった多少かするなりでこのままでは一方的にじわじわとやられていくだけだ。
「【壮大なる磁気】」
そう叫ぶと磁力と雷で電磁砲を作り自らを砲丸と化しその威力でスピードを高める。
「カッカッカッ、我が迅速には勝てまい。――んなっ!?」
ルシファーはそう高笑いをするがそう驚愕の声を漏らす。何故ならば、グロウがその音速おも超える速さに追いついているという事実。追いついているというよりそれさえも越してゆく加速力に。
(不味いかもしれないな、攻撃系は効かず力や速さも超越できない。――ん? 何かがおかしいぞなんだ? 何がおかしい?)
そう内心では甲高い声でルシファーは思う。
そう思ったのはグロウの少しの動きの誤差だった。さっきの攻撃するタイミングと今の攻撃するタイミングでは早くなったとはいえ、0.1とかなりの誤差があった。
そんなことを見逃すわけがない。
戦いにおいて一番大切なのは相手を見ることだ。それに続き力とか知力とかが加わり強くなる。例え力持ち力もあって勝てていてもそれより強いものには勝てない。たしかに偶然はあるさ。だが、偶然なんて聞こえのいいようなロマンチックなことを言っているがこの世に蔓延る、奇跡、運命、偶然etc……そんなもんはすべて『必然』だ。前の行動、今の状況そんな見えない変数が分かっていれば『偶然』なんて言葉は『必然』に変わる。
その心が大切だ。因果応報だとか塞翁が馬とかそんな感じだ。未来は不確定じゃない決まっているんだこの一分一秒の間に……。
(やはり、身体についていけてない。)
その相手を見る力は『自分より強い相手』と手合わせすることにより活性化される。敵の弱い所をつき、相手の思っていた盲点を攻撃する。それが『強者』に対しての『弱者』の戦い方だ。
この場合、この二つはどちらに割り振られているのか……。




