4章1『創星記』
ここは天使と悪魔が住まう世界〝ヘブル〟。
この世界は半分に割れたもの同士をくっつけたような形で、片方は白く神々しい天使の世界だった場所、片方は暗く邪悪な雰囲気を醸し出している悪魔の世界だった場所。この世界〝ヘブル〟では元々二つの星があった。
天使の住まう神々しい〝ヘブン〟と悪魔の住まう禍々しい〝ヘル〟という星がありお互いはお互いのことに不干渉で、お互いがお互いの星を認識している程度だった。
――あんなことが起こる時までは……。
あんなこととは、〝魔王〟と〝熾天使〟という不死にも近く特殊で強力な【権能】を使う。その〝魔王〟や〝熾天使〟は天使や悪魔の身体を乗っ取り自らの強欲、憤怒、色欲、怠惰、傲慢、暴食、嫉妬、憂鬱、慎重、節制、正義、堅忍、勤勉、忠義、純潔のままに生きた。その時はただそれだけのために。
ただそんな〝魔王〟と〝熾天使〟の『平和』な日々にも終わりが来た
〝創造主〟がそんな不出来な作品を見てこれではいけないとでも思ったのだろうか、〝創造主〟は〝悪魔〟と〝天使〟を作ろうとしたところそんな不良品ができてしまった。それを悔いていたのか。
ヒトなのに人ではない。人が有する九つの感情と七つの心それらが分離しそれぞれの個体を……魂を作り出した。
神様は地上に……〝ヘブン〟に降りた7人の〝熾天使〟と〝ヘル〟に落ちた8人の〝魔王〟と未だに個体を決められずに〝自分の世界〟に閉じこもる〝魔王〟ひとりの計16人の作品にこう言ったのだ。
『私は君たち不良品を、一つの完成した作品に作り替えたい。
欲深で、怒り激しく、時に情欲に身を任せ、怠け、おごり高ぶり、よく食べ、嫉妬深く、憂鬱になり、自らを着飾るそんな人と呼べる存在に。
慎重、節制、正義、堅忍、勤勉、忠義、純潔でそんな人に頼られるような存在にしなければいけない。
ならば、君らを一つにまとめよう。』
そう脳内に問いかけるようにその案をこじつけた
『これよりゲームを始める。
なあに、簡単なゲームだよ。自らの兄弟を取り込み最後まで生き残ったひとりが勝ち見事自分の〝役割〟を果たせ人となれる。』
この16人は〝創造主〟にノーと言う方法はなく、一方的に押し付け生存権と人になれることを計りにかけてゲームを始めた。
このゲームが始まると、〝魔王〟は欲深な為お互いを殺そうとする。
その戦いは度を超え自分の星〝ヘル〟を半壊、そしてその反動で〝ヘブン〟も半壊し少しやりすぎたかと考えた1人は〝ヘル〟と〝ヘブン〟を合わせそのまま兄弟に喰われた。それが今、【怠惰】の世界にいる【憂鬱】だ。
〝熾天使〟は良いものばかりなので自らの行動を改め〝創造主〟にやめろと訴えかけ続けた。
すると、〝熾天使〟は〝創造主〟に背いた罰として
『永遠の命の剥奪と、代替わりごとの記憶のリセット』を咎とした。
永遠の命を失ったということは人に近づいたという解釈もできる。ならば得だということにしておこう。
代替わりごとというのは、〝熾天使〟は乗っ取った身体で新しい生を成す。それもちゃんとした方法で、そして出来た最初の子、その子がオギャーと生まれたと同時に〝熾天使〟がそちらに移り変わる。いや、繁殖するという方があっいる。
だが、母体は日をなすごとに〝熾天使〟の力が薄れていくそして子が物心ついた頃には母体の〝熾天使〟は消滅し身体のみが残る、いわば植物状態となる。
繁殖すると言ったが母体からは女の子しか生まれない。
そうやって代々受け継がれていった。
半壊した二つの星を合わせた後、【憂鬱】に敬意を評して〝熾天使〟達は世界の復興を目的に次第に七つの国を作った。
それぞれの国に【慎重】は『ティファレト』、【節制】は『イェソド』、【正義】は『ホド』、【堅忍】は『ダアト』、【勤勉】は『ケセド』、【忠義】は『ゲブラー』、【純潔】は『ネツァク』とその時乗り移っていた自らの名前をつけ自分の〝役割〟を信仰するようになりその国の姫となった。
このことにより自分たちの子をなすための男性体は難なく手に入るようになった。
これがこの世界の成り立ちそんな感じだ。
「お手伝いいただきありがとうなのですよ」
そういったのは橙色の髪に雪を思わせるほど白く艶かしい肌、瞳は鮮やかなメラメラと燃える正義の赤。彼女の雰囲気といい容姿といいは華奢というより健気や強気を思わせるような大きく飛び出た胸。少し動く度に彼女の胸はプリンのそれより良く揺れる。そんな彼女の特徴は美人と自称する人でさえ自分のダメさを憎むような美しいフォルムではない。彼女一番の特徴といえばやはりこれだろう。少し歩けば見えてしまいそうなほど短いスカート、胸のあたりがきつく今にでもボタンが外れてしまいそうなミニスカポリスという奴だった。
彼女の名はラファエル・ジャスティス。ヘブルに大きくそびえつ大国『ジャスティス』の姫だ。
そんなラファエルがお礼をしていたのは他でもない〝魔王〟だった。
「カッカッカッ、勘違いするでない。我が望むはお主ではない貴様だ【虚飾】」
そんなことには目もくれず、『傲慢』や『中二病』という言葉が板についてならない鶴ペタどチビの少女【傲慢】のルシファー・プライドが九つの感情の中で唯一の男、【虚飾】のグロウに指さした。




