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3章29『奏VS〈林〉決戦』

はっきりと言っておこう。

今少しだけ奏の勝機(・・)が無くなろうとしていた。

それは何故か? それは、先程から無数にどこからとも無く出しては投げを繰り返している手榴弾だ。

その普通の人でもうるさいと感じ、時には難聴などにも追い込む『手榴弾』それをいくら音璧で守ろうと爆発音までは消せない。

音を操る異能だけれども音は消せない(・・・・・・)。そして、普通の人の何10000倍以上の聴力でその爆発音を近距離で聞いたらどうなるだろうか?

もし難聴にならなかったとしても、周りの音が(・・・・・)聞こえなくなる(・・・・・・・)。すると不思議と耳に頼りっぱなしだった奏は仕方なく目を頼るほかなくなってしまう。

最強の耳が、自らの耳の良さに自爆(・・)したのだ。


『手榴弾』と言ってもいくつかの種類がある。

発煙弾(スモークグレネード)催涙弾(ティアガスグレネード)破片手榴弾(フラグメンテーション)攻撃手榴弾(コンカッション)発光弾(スタングレネード)などなど殺傷するものから殺傷に至らない目くらましのものまでもがあるのだ。それが行き交う――一方的に投げられている中で奏は目だけが頼りになっているのだ。んな、勝機が無くなろうとしているだろ?


(少しまずいかも知れませんね、音が大きすぎる)


たらりと、奏の両耳から血が流れる。あまりにもの音の大きさに鼓膜が破れたのだ。

もう耳が使いようにならない。


……とでも思った?

異能はもとよりと言ってもまだ10日ぐらいしか経っていなんじゃないか?『物理限界』を超える力とされた。

それは手から炎を出し、ものを消す時点でそうだろう。

そんな中、彼女に与えられた『物理限界』が音を出す(・・・・)だけだと思った?

それは違う。彼女に与えられた、『物理限界』はそこじゃない。耳が良いことでもない。音を聞きとること(・・・・・・・・)だ。

誰が、耳でしか音を聞けないと言った? だれが、耳でしか聞いていないと言った?

『物理限界』すらも人間の限界ですらも遥かに凌駕する力【異能】。それは個人個人に備わった『思い』だ。こうであれと願えば、こうなる力。それが【異能】

たとえ耳が潰れたとしても音は聞こえる(・・・・・・)

そもそも、そもそもの話だ。鼓膜が破れると音が正確に聞こえなくなるだけ。つまりは、雑音に聞こえるだけだ。何も問題ない。

雑音から必要な情報だけを取ればいい。それだけの話。


(大丈夫。まだ聞こえる。)


そして、煙幕に身を潜め、奏が耳から血を流していることを見て(やっぱり)と自分の認知が間違っていないことを確認したニンジに、正確に、的確に銃弾を当てていく。


(どうして? 耳は潰れたはず。)


その降り注ぐ銃弾を軽い足取りで、避ける。

ニンジが不利な状況には変わりはなかったという事だ。


(規格外かよッ!?)


そう心の中で叫びつつも、最後の『まだ勝てる』という希望を捨てきれず、沢山の遠距離武器を投げつける。

がそれの全ては、奏に聞こえている。そのモーションを起こした直後にはもう、音璧を来るであろうその場所の半径1mのみに起こす。


(そう来ると、思ってましたよ。だからッ!?)


その意外な行動に奏は驚愕し、焦り、操作を誤り音璧を解除してしまうことになった。

なぜかと言うと、弾が予測していた位置とは違う場所に来たのだ。手裏剣が手榴弾を押し、違う方向、だが音璧の貼っていない場所目掛けて飛んでいったのだ。

その焦りのせいで奏は、全身がズタボロ。常人ならばたりと倒れてしまうほどの重症を負ってしまった。


(っしゃあ! 敵討ち取ったり〜♪)


噴煙の中から出てくるのを待つニンジ。

その表情は勝者の不敵な笑みと、勝利の喜びが混じった顔だった。

だが、そう簡単に奏が折れるはずない。そうだろう?

奏は粉塵の中から出ることもなく、その方向から打ち込まれた一筋の光。

奏はいとも容易くそのがら空きな胸元に銃弾を撃ち込んだのだ。


(え? 何で?)


そう勝者の笑から一転。今にも死ぬかのような顔に変わりその場にノックバックと心臓を打ち抜かれたことにより倒れ込んだ。

だが、ニンジは最後の力を振り絞り、その場に這い上がる。


「ここで! コファ、ここで負けるわけにはァッ、行かないんですよクフォ」


そう口から吐血をしながらも必死に抗おうとするニンジ。

その手には、巻物のような物が握られていて、それを口に加えた。


(このままでは……。せめて相打ちに……。)


そう必死に足掻き、何かを念じるようにして、自らの目を抉り潰した。

その行動に、奏はクエスチョンマークを浮かべるほど怪奇な光景。だが、それが意味ある行動だと知るのはすぐだった。

その光景を捉えていたのは奏の()ではない。奏の()、正確に言えば聴力()だ。そう、まるで同調(リンク)しているかのように、かなでの視力が失ったのだ。


「ははっ、かハッ、これであなたも、けふぉ、高調子には戦えまい。【隠密】――《蟇変化(がまへんげ)》」


そう、目から血を流し、心臓部からも血をドブドブ流していて生きているのがおかしいほどのニンジの身体が見るのもおぞましい(がまがえる)になる。

変化というのも擬態という意味ではなく、変身という意味だ。正真正銘の奏の2倍ほどの高さの巨大蟇に変身し、傷がなくなっていた。だがしかし、ニンジも目は潰れている。

ニンジが襲いかかろうとすると……。

再び彼女を貫く銃弾何発も何発も彼女の体を射抜いてゆく。


「身体が大きくなるだけなら、当てやすくなるだけです。安らかに眠りについてください」


そう最後に、戦いの幕引きに奏は言葉を発して残った中心部、心臓を今度こそ正確に撃ち抜いた。





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