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3章25『耳が良いと……』



□□□



それとほぼ同時刻、同世界の奏軍戦地にて、

そこも流石に一日もたったこともありしっかり戦地となっていた。

その中に一つその異型な戦場なのにも関わらず屈強に佇んでいる大きくも小さくもない一本の木があった。その木は、化学兵器にも人間兵器とも呼ばれる異能者の力にも屈さず、戦場の中でまるで自分は関係ないことかのようにのうのうとあった。


「ウワァァァァ」「ぐわあああ」


そんな声が当たりそこらじゅうから響き渡る。その普通の人の耳でさえ脳の奥まで染み込んでくる絶望に満ちた叫び声を人間兵器と称される異能者の一人海音 奏はその人々の何倍の音量をその脳に響かせていた。

それがなぜかと言うと、その悲鳴の原因はまごうこと無く『死』だ。それなら構わない、いや、構わなくないのだが、そんなことをあーだこーだいう気力は奏にはない。

その『死』の原因は敵と戦っている最中敵に切られて死亡なら、わかる。だが、その死はただの死ではない、いや普通に刺されて死んでいるのはいるのだが。


――その方向には味方しかいなく、被弾跳弾の可能性はない。


まるで、仲間に不意打ちをされたかのような死に方だったのだ。

遠方からクナイが飛んできて確実に仕留める所を射止める。だが、さっきも言ったと思うが、その方向には味方しかいない。

そのクナイの存在ですら仲間はその人に刺さるまで分からなかったのだ。

まるで存在を消している(・・・・・・・・)かのように……

そのクナイが飛んでくる方向と敵を探るため、異能のおかげで世界の裏側でコインを落とした音とそのコインが裏か表かですら分かるという常人離れした聴力を持った警視庁異能課最高年齢でギリギリ異能を手に入れた少女、奏がその聴力を駆使して探しているところだったからだ。


その方向と、位置はだいたいわかってはいた。その位置はさっき説明したのうのうと佇んでいる木の枝の上。そこに何者かがいる。

え? じゃあ早く仕留めろって? それを今から言おうとしていたんだよ。

その木の枝の上、木の枝から1メートルほど上を目掛けて奏は銃を発砲。敵がこちらが的に気づいたと気づいていなければ確実にヘッドショットしているはずの正確射撃。その正確射撃は警視庁内、いや国内の警察内で類を見ないほどの正確性、拳銃の最大飛距離である100m超えるか超えないかぐらいギリギリの距離にあるのにも関わらず的確に敵の眉間があるであろう位置に正確に弾を運ぶ。


だがそこには普通の人が見ても人はいない(・・・・・)。なら何故、そこにいること、そして眉間の位置が分かるのか。

それは全て奏の異能【音階】の力にある。普通の人間は生活する上で視力に80%頼っているという、その次に聴力というように続いてゆく。だが、奏は違う彼女の情報はほぼ全て聴力から得ている。


話を戻そう、その敵はどうなったのか。

その敵はこちら側が銃を発砲したことに気がつきその場から、気の上から軽々と飛び降りる。それも普通の人は全く気がついていない。


(逃げても無駄です。どうやらあなたは存在を消す異能ではなく存在感を消す異能です。ならば消えるのは対象物の存在感のみ。あなたが発する普通の人なら気に求めないであろうその音は消えていない。音が出ているのであれば私からは逃げられません。)


奏はそう思いそちらの方向に、言葉のとおり目もくれず二三度発砲する。何人もの人がが動いても動かなくても当たらなく、それでして敵には当たる場所を正確に見抜き即座に発砲。その奏が発砲した弾は見事、敵の靴に的中しなぜ? と思っているような顔をしているのは奏は手に取るようにわかる。


(んなっ? まさかここの隙間から私をめがけて打ったというの? そんな馬鹿な……)


そう敵の少女は思っていた。その弾は靴に当たったとはいえあまり出血はない、なぜなら、少女の靴ギリギリに当たったのだから。

それを知った奏は


(やらかした。敵にこちらが気づいていることを教えてしまった。)


そう思い奏は1次場所を変えることにする。跳弾性がなく真っ直ぐにしか飛ばない銃の弾は言わばその方向をたどれば必ずその銃を持ったものに出くわす。それを未然に防ぐためだ。


((あちらがこちらの存在が気づいているのであれば……少しまずい。))


その二人の思考は完全にシンクロしていた。

ただその思いには、まずいと言っているのとは裏腹に勝利へのビジョンを直視しているかのような言い方だった。

そんなおぞましいような緊張感に苛まれている両者。その片方、かなでの方の脳内に一つの声が聞こえてくる。


『みんな、聞こえるか? 今情報が入った。異能者は6人それぞれ〈風林火山陰雷〉の中の一つの称号を持っている。』


それは【念話】を通じての信実真の声だった。

その情報源は〈風林火山陰雷〉の内の〈陰〉に打ち勝った。蛍のものだった。

蛍は無事命を吹き返し今や診によるドクターストップを受けて入るが元気良好な状態にはある。


(異能者は6人? じゃあこの人が事前に手に入れた情報の中にはなかった、六人目か……。多分その称号は〈林〉。徐なること林のごとくの〈林〉だ。)


そう奏は少しだけ情報を手に入れ笑顔になる。


(さあ、〈林〉を打ち滅ぼそうじゃありませんか)










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