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3章17『死ぬ間際』


(何か無いでしょうかァ?)


そう思いながら咲はジャックを見つめる。


「侵掠すること火の如しデしたカ? 日本最強の異能者を殺せるとハ……光栄ダネ。」


そうまるで勝利を過信したようになにか説明をし始める。


(侵掠すること火の如し? 確かどこかで聞いたことがありますわァ。

考えてくださいましィ、ワタクシのたくさん持っている異能の中で使えるものをッ)


「ナニを考えているんダ? この状況でまだ俺を殺そうってカ? 遠距離攻撃は爆撃の威力で相殺さレ、近距離は俺に殺されル。相手が悪かったナ。」


そう言ってジャックは、再び何かをつかむようなモーション付きで爆発を遠距離に、咲の近くで爆発させた。


(おやァ? さっき近距離の時はそんな動作はしてなかったですわァ。なぜその手の内を明かしておいてわざわざモーションなんてェ?)


そう思い咲は次々に襲い来る爆発を切ったり避けたりしてジャックの懐まで行く。

そして咲はすかさず左手は上空からかきおろすように、右手は地面から飛び出すような振りで攻撃を仕掛ける。

すると、丁度ジャックに当たるであろう数センチほど前で件ぐらいなら吹き飛ばせるほどの爆発が二つ生じた。

爆発音に紛れて聞こえなかったが確かに先は見ていた、ジャックが口を動かし「爆」と2回言うのを。


(なるほどそう言うことですかァ。モーションか「爆」の発言かが爆弾のスイッチという訳ですわねェ。他にも情報が欲しいですわァ、残念ながら今は無限の命があるとはいえ圧倒的に相手が悪いですわァ)


「どうしたんだイ? 攻撃を止めテ?」


「いえ、なんでもありませんわァ」


(もっと情報をッ……)


そんなことを考えているとジャックはモーションを三度起こした。すると爆撃が咲のすぐ側(・・・・・)で三度起こる

それを何を今更と言うような手つきで咲が切る。

その切った煙の中から出てきたと思うと辺りにジャックの姿はなかった。


(どこへ隠れたのでしょうかァ?)


咲はキョロキョロと周りを見渡す。

耳を済ますと合戦の声と上の方から「爆」と連発した声が聞こえてくる。

咲はまさかと思い上を向くとそこには案の定ジャックの姿があった。

咲が上を向くとジャックは「爆」と言うのをやめて急降下してくる。


「この圏内なら行けル。爆、爆、爆ッ!!」


ジャックはそう叫ぶと先の周りに3発の爆発が起こる。

咲はそれに気を取られ瞬時にその爆発を切る。

そして再び上を向くとジャックはもう頭の上で先の頭を握っていた。

ドゴーン。と普通の爆発より少し鈍いような音がした。その理由は咲を爆弾としているからだ。


「ッシャァ!! 貰っタァ!!」


ジャックは勝利を手にしそう叫んだ。

咲の体が再生しては爆破、再生しては爆破、再生爆破、再生爆破と言うように何度も何度もドゴーンという音と共に咲の命が一つずつ減ってゆく。

ちなみにこれは発言の爆発ではなくモーションの爆発。いつもジャックが握っていたのは遠くの空気。これを握って爆弾に変えていた。それを咲という人間にすることによってほぼノーモーションで発動できる。という訳だ。


(嗚呼、ワタクシは死んでしまうのですかァ? このままこの国の人口半分ほどの命がすべて無くなって死んでしまうのでしょうかァ?)


ここでやっと咲は命を沢山得てしまい失っていた殺される(・・・・)という恐怖の感覚を身に実感した。


(嫌ですわァ、まだ死ねませんのォ、祈さんをこの手でしっかり殺すまで死ねませんのォ。)


その恐怖は時に人を狂わせる。いや時にではなく確実に人を狂わせる。その狂いに生まれた狂気が行き場を失い日本の人口の半分の命を所持している咲を確実に壊してゆく。


「まだ死なねーノ? これで123回目だゾ?」


(嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌。嫌ーァッ!?)


まるでその心の中は咲が殺してきた人々の心を一斉に代弁するかのように人が死にたくないと思う思いの数10000倍ものその思いが咲の心の中に入り乱れる。


(い……や……。い。や。い、や、いや、嫌ですわァ、死にたくありませんのォ、嫌ですのォ、祈さんを殺すまでェ……。


――そうですわァ。【規則】を使えばいいじゃないですのォ、長いこと使いませんでしたからァ、忘れていましたわァ。【規則:【爆撃】】ィッ!!)


そう心の中で唱えるとさっきまで何度も何度も打ち砕かれた爆撃が終わり頭蓋骨がやっとの思いで再生した。


「!? ……ッ!? どうしテ!? ナゼ使えなくなっタ!?」


急に最大戦力である【爆撃】が使えなくなったことによりジャックは狂った声で喚き後退した。


「さてェ、私の体よく楽しめましたかァ? 次はあなたの番ですわよォ?」


「爆! 爆!! フッ! フッ!!」


少しずつジャックに近寄ってくる咲に対抗するようになんでもない言葉をそう唱えたり、ただ空気をつかんだりしているジャック。

それに対し、さっきまで今日日に溺れていた咲はSのスイッチが入ったかのようにどこから出したか拷問道具のようなものをたくさん持ち本当に少し15秒に一歩くらいのペースで歩んでゆく。


「イヤ、イヤダ!? 死にたくなイ、オレは死ななイ。」


そうさっきまで強気だった少年は態度を急変させ怯えるような声でそう命乞いをする。


「そんなのはァ、知りませんッ、ワタクシが死んだ130回分の死を体験してもらいますわァ。」


「ソ、ソンナ……い、イヤダ!!」


そうジャックは逃げるが勝ちかのように咲に、敵に背中を見せて無我夢中で逃げ出した。


「そうは行きませんわよォ。」


そうやって咲は少し歩くペースをあげて追いかける。

が、まるでそうなることが決まっていたかのように、流れ弾が飛んでくる。

まるでさっきの爆発でたくさんの方向の敵味方が死んだ仇討ちかのように……。

その流れ弾は見事ジャックの脳天に当たり痛みを請うことなく死んでいった。


「無様な死に方ですわねェ、ただ目の前の敵に恐れをなして背中丸出して逃げた挙句、脳天に流れ弾をくらい殺したのが敵か味方かもわからず死んでいくだなんてェ。滑稽で仕方がありませんわねェ。

そのせいで、ワタクシが【爆撃】の力を奪えなくなったじゃなりませんかァ。これは姿形を全て粉々にしないと許せませんわねェ。」


その後、ゴシャ、ブシャ、ゴシュ、グチュ、グチョ、バキッという鈍い音がそこに鳴り響いていたという。




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