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3章14『戦争勃発』

俺らは歩いて十勝平野に着くと、もはやそこは戦場だった。

日本のウクライナと呼ばれるほど田畑が盛んなその土地は荒れ、炎が地を這い、血肉が地にこべり付き、形容するならばそこは地獄。そんな状況だった。


「うわぁ」


俺はその状況を見てそんな声を漏らしてしまう。

俺らはその地獄の状況に目をくれている暇はなくただひたすらに進む。


『前方2キロにいます』


そんな声が脳内に響き渡る。これは支援隊にいる【念話】の異能を持つ人を中継に、奏さんの【音階】の異能によって敵の距離を知らた。


「願。行くか……」


「うん。」


俺らはそう合図し合うと相手に向かって走り出した。

二キロなんて軽いものだ、俺はすぐに敵の先頭にたどり着いた。

それを俺は無慈悲に切り落とす。それに続き願と俺ら率いる軍、咲の率いる軍が攻撃を仕掛ける。

なんだ……。米軍ひとりひとりは弱いじゃねーか……。それにしても変じゃねーか? 俺はいつもこういう時に【転生】しているはずなんだが……。

あと、敵ひとりひとりが弱すぎるのも変だ、こんなんじゃ5000なんて飾りみたいなもんだぞ? それほど自分の軍の異能者五人に絶対的な自信があるということか?

俺はそんなことを考えつつも、両手に握った二つの剣で敵を薙ぎ倒す。


そんな時、俺らの遥後ろ蛍の軍あたりだろうか? そこから悲鳴が聞こえる。


『どうした!?』


俺は疑問に思いそう言葉の通り言葉を送る。


『【陰翳】……です……。大丈夫……わざわざ……蛍の……トコに……来てくれるだなんて……好都合……。』


『そうか、気をつけろよ』


『はい……。』


【陰翳】その言葉から察するに影を司る感じの異能だろう。そんな奴が【発光】の蛍の元に行ってくれるだなんて好都合すぎる。

何せ、光対闇の戦いだ、断然光が勝つに決まっている。

そんな希望を載せて俺はそう伝えた。


「敵ノ首とったリ!!」


「お兄ちゃん、まず自分のことを心配して。いくら雑魚とはいえ侮れないよ」


そう言って俺が仕留め損ねた米軍が俺に切りかかってくるところを願が【防護】を利用した手刀で切り落とす。


「ありがとな。」



□□□



時を同じくして、蛍の軍の当たりにて。


「マズ一人……」


そう全身を影で包んだ小柄な少女が言った。

それに挑発するように一筋のレーザービームが少女を穿つと少女が纏っていた影が消える。


「あなたの……敵は……蛍です……。」


「ホウ……面白イ、光ノ異能カ」


「はい……そうです……。あなたの影を……浄化する……光です……。」


「我が影ヲ浄化? フッ生ぬるいゾ少女ヨ。」


そう再び影を纏うと影の少女は自らの影を伸ばし蛍に攻撃するが……

蛍は自らを光らせ周りを飲み込む影の一部を消す。


「ナカナカやるようだナ。名乗っておこうではないカ、我は米軍六天皇<陰>のマリア・シャドウ、」


「マリアさん……自己紹介……している……暇が……あるん……ですか……?」


(え? 今なんて……? 米軍六天皇? それじゃあ異能者は……6人……?)


「そちらこソ、考え事ですカ? 周りがガラ空きダ。」


そうマリアが言うと蛍の光を手で包むかのように蛍を中心とした(・・・・・・・)半径100m程度の影の球体が蛍を包む。


「そんなこと……しても……無駄……です……。」


そういった蛍は自らの光の量を強めて影の檻を壊そうとするが……


「ムダムダ、ソの影は光に屈さなイ」


そう何処からか声が聞こえる。その光で満たされている(・・・・・・・・・)その球体にはその声の主<陰>のマリアはいない。

まるで光の力を吸収しているかのように、風船の様に光の面積が広まり蛍を中心とした(・・・・・・・)半径200mの影の球体となる。


(そうだ……! 知らせないと……6人……だってことを……)


そう思った蛍は【念話】を送ろうとするが……


「……くっ……なに、この……ノイズ……」


脳内がノイズで満たされ頭が痛くなる。


「知りがたきこと陰の如し。でしたカ? 我が<陰>の称号を得た理由ハ。我の影の中では他人がそれをすることを許さなイ。」


「では……あなた達……六天は……<風林火山陰雷>……この6人……ですか……?」


蛍がそう思った理由、それは「知りがたきこと陰の如し」このフレーズだ。

そのフレーズが書かれているのは風林火山陰雷という武田信玄の軍機に記されているというあれだ。

『其疾如風 其徐如林 侵掠如火 難知如陰 不動如山 動如雷霆』意味は、『故に其の疾きこと風の如く、其の(しず)かなること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、知りがたきこと陰の如く、動かざること山の如く、動くこと雷霆(らいてい)の如し』だ。


「そうダ。マァ知っても今ここで死ぬのだから関係の無いことだガ。」


そうマリアが言うと手に持ったクナイのような短刀で影と共に蛍に切りかかる。


「死に……ません……。そっちこそ……蛍に……殺されないように……して……ください……。」


少しずつ少しずつじわじわと蛍の皮膚が切り裂かれてゆく。


(考えて……この影を……振り払う……方法……。)


蛍がそう考えながら敵の斬撃を少しずつ受ける。


(この際……少し、避けて……考える……。)


蛍はそう考えながら敵の追撃を避けると、影が揺れていること(・・・・・・・・・)に気がついた。

なんの影かは答えるまでもないだろう。自分の影は自らの光によって作ることは無い。

ならばどの影が……それは、この外郭が少し揺れた。


――それも蛍が動いた分だけ(・・・・・・・・)


(なるほど……そういう事……ですか……。

この場所は……風船の……ような……影の膜で……覆われている……のではなく……大きな影の場所に居る(・・・・・・・・・・)

でも待って……ならばあの……マリアさんが……身に……纏って……いた……影は……どうなる……? ああ、分からない……。戦うしか……ない……?)


蛍はこの場所がどういった場所かどうかは分かったが、まだ相手の異能の全てを調べられていない。そう思っていても、流石にずっと受け続けるのにも無理があると思ったのか、【発光】の異能で、レーザービームを小規模でずっと放出し擬似的なクラウ・ソラスのような剣を作る。かと言って違うところは炎と光、柄があるかないかそこら辺だろう。

それを片手に作り片手は所謂銃の手というヤツをしてそこから光の弾丸を出す。


「さあ、何処からでも……かかって……来てください……。」


「その威勢の良さだけは褒めてあげるヨ。」


そう言ってマリアはクナイを構えてまるで忍者のように軽やかにステップで素早く攻撃を仕掛ける。


「全て……見えている……。」


(なんてったって、影の具合で……全て……分かる。)


蛍は片手の光の銃を使い影がある方向に発砲する。


「残念ながら……このあなたの空間は……蛍の……ものです……。」


そう蛍はかっこよくマリアの足をを射止めた。










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