3章13『作戦会議』
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場所が変わって地球の警視庁、異能課の中にて……。
「問題は敵にどれだけの異能者がいるかだ。」
「情報によると、【艦隊】【爆撃】【音速】【落雷】【陰翳】の五人の異能者が特に目立つようですね」
「そいつらが重要戦力なのですねェ。」
「こちらには……その……情報だけ……あります……。でも……あちらには……蛍達の……情報は……ありません……。」
「それだけが救いか……。こちらはその異能名で異能を想像することが出来るな。」
「そうですわねェ。」
そう俺、願、蛍、咲、信実さんで会議をしていた。
「司令。米軍は今北海道、十勝平野にいます!」
「そうか……。総員、いや戦闘員! 全員私について来い! 私も戦場にゆく! 警視庁異能課と自衛隊の連合国軍とアメリカ軍に応戦、いや勝ち取るぞ!!」
そう雄叫びをあげた司令こと信実さん。
「指揮は全てを私がとる! 総員行くぞ! 歴史に名を刻む英雄になってやろうじゃないか!」
それに続き再び言葉を連ねる。
「総員集まれ! 渡君、青森県に【転移】お願いできるかな? 」
「ハッ! 【転移】!」
渡と呼ばれた少年がそう叫ぶと彼から半径2m一帯が光り輝き俺を含む人が全員消えてゆく、この感覚は嫌というほど体験したことがある、【転生】する時のそれと瓜二つだった。
その眩さのあまり目を閉じ再び開くとそこには一度見たことのあるような光景が広がっていた。元札幌あたりから東京に行くまでに通ったことがある。
「渡君ご苦労だったな、帰っていいぞ。」
「ハッ! 失礼します、【転移】」
渡はそう言うと光り輝きこの場から消えた。
「さあ、後は海を超えるだけだな。」
「では、俺の出番ッスね。【凝固】!」
そう少年が叫ぶとここからでも見える海の波がその場で固まった。
「さあ、行くぞ! 敵にいつどこで出会うかわからん。心していくように!」
「「「ハッ!」」」
俺達はその信実さんの声と共に海に向かって……北海道に向かって歩き出した。
「聞こえます。ここから約50キロ総勢5000ほどの足音が」
そう言ったのは【音階】好きな音を出したり、聞いたりできる異能を持つ少女、異能課最高年齢の奏さん。一見あまり凄くない異能だがこれが地球の裏側で、小銭が落ちた音ですら聞こえるというのだから凄いのだろう。小銭大好き忍者も驚きの耳の良さというわけだ。
「5000か……こちらの軍は3000、部が悪いな。」
その奏さんの発言に信実さんはため息を一つこぼしそう呟いた。
「誰かさんと誰かさんのせいで日本の人口が半減しているこの状況では辛いな。」
そうまるで俺と咲に皮肉を言うように叫んだ信実さん。
「でもたしかに辛いな、2000もの違いがあると流石にやられに行くようなものだな。」
「でも今はワタクシがしましてよォ?」
「そうだな、今は咲が居る。それが最大の救いといったとこか、俺は今異能も魔法も使えないし。」
そう今は俺は魔法も異能も使えない。唯一咲を敗れる存在である俺はほぼ無力に等しいわけだ。
どうやら、カリバーンとクラウ・ソラスは出せるようだけど。
「あらァ? どうしたのですかァ? ワタクシを死まで追いやったというのにィ、弱気でどうするんですかァ? もっと胸を張ってもらわないとォ。」
「ムムム、あまり同意したくはありませんが〜、その通りですよ〜。」
「そうか? ……そうだな。もっとしっかりしないとな。」
最近は慰めてもらってばっかりな気がするな。シャンとしようシャンと、俺がみんなを守ってやらないと。
「それにしても、海の上を歩くって変な感じだな」
「たしかに……そうですね……。」
「なんか変な感覚だよね。」
そうこう話しているうちに北海道が見えてきた。まあ見えてはいたとは思うけど視覚的に大きくなってきたという意味合いで。
「では、陣はさっき話した通りだ。巡谷兄妹率いる軍、咲君が率いる軍を先頭に奏君の軍、蛍君の軍続いてもらう。最後の軍は私と診君率いる指揮と治癒の軍だ。」
北海道に上陸すると襟裳岬のあたりで再び作戦確認をした。
なぜ非力な俺が前なのか、未だにわからない。
そんなことを思いながらカリバーンとクラウ・ソラスを実体化。
「あれ? 魔力は俺に残っているのか?」
俺がそう声を漏らした理由は、クラウ・ソラスだった。
元々は【アマテラス】という火属性の最高魔法をこの柄に付与。そしてそれに魔力をつぎ込むことによって炎の刀身ができるという作りだ。
その炎の刀身がちゃんと作れた。ということは少なくとも俺に魔力が残っているという事になる。
「じゃあ魔法も使えるのか?」
俺はそんな疑問を解決するべく火属性の【ファイヤーボール】を発動させようと念じる。
……だが、その願いは届かず魔法は発動しなかった。
どうしてだ? 魔力はあるのに、クラウ・ソラスの【アマテラス】は発動できて【ファイヤーボール】は発動できないなんて。
まあ、そんなこと気にしている暇はないな。
「お兄ちゃん。お兄ちゃんは私が守るからね。」
「アハハ、義妹に守ってもらうのは頂けないな。自分の身は自分で守るよ、ただ願は俺が守る。何としてでも」
俺はそう言い返してあげた。
やはり守ってもらうだけじゃダメだ、そう思ったからだ。
「そう言えば、願はどうやって戦うんだ?」
「それはね、こうだよ。」
そう言って願は自らの手に【防護】の異能をかけその手でそこら辺の高い草を切った。
「【防護】はあくまで防御の膜のようなものを貼るだけだからその膜を鋭く尖らせて切る。あまり殺したくはないけど、日本の平和のためなら……」
「無理しなくてもいいんだぞ?」
「いや、自分の身は自分で守らなきゃ。それに私達はこの国の未来を背負ってるんだよ、殺したくないなんて言ってる場合じゃない。」
その願の目は何処かおかしく人殺しの目……いや、人殺しになりかけの目になっている。
俺はもう、何万の人を殺しているから後戻りはできない。それは分かっているが願はどうだろう? 俺の巻き添えをくらいこんな血も涙もない戦に駆り出されている。
「ごめんな、願。」
「お兄ちゃん。私は私の気持ちで、この国を守りたいという気持ちでこの戦に出たの。お兄ちゃんは何も悪くない。あと、百回謝ってもらうより、一回のありがとうの方が嬉しいんだよ?」
俺はそのみんなの笑顔を守ろうと心から決心した。




