1章20『【転生】の意味』
その剣を防いだのはカリバーンを持った祈だった……
「祈? 何で……?」
そうランスは、安堵と疑惑の声を漏らした。
「ああ、それはだな……」
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「やあやあ。どうやら死んだようだね。これで二回目だよ? 今回は事情説明とかしたいから僕の世界に来てもらったよ。」
そう言ったのは、女の子と言うには男らしく、男の子と言うには可愛らしい人がいた。
ここは? 天国か? 地獄には到底思えないし……それにしても本だらけだな。あたりを見渡しても本本本。本ばっかりだ。中には見たことのある本や見たことのある言語で書かれた本がある。でもその中でも、見たことのない文字で書かれた本が種類別に分けても30はあった。
「君は……?」
「よくぞ聞いてくれました。僕の名はスア。アヴァロンや地球などを管理している神様。何度か会話はしたけどあったのは初めてだったね。」
「神様? スア? じゃあ君が俺に異世界転移スキルを与えた神様?」
「ああ、そうさ。それだけどね。少し伝え忘れがあったんだ。」
「伝え忘れ? それってもしかして俺の二回目の死と回復魔法が急に使えなくなったことと関係ある?」
「流石だよ祈君。感が良さ過ぎて困るよ。
そう、【転生】のスキルについてのお話。祈君は、死んでもいないのにどうしてスキル名が転生なんだ? とか疑問に思わなかったかい?」
――まあ、それはな……俺は転移する度に死んでるわけじゃない。あくまでも死んで異世界に行く転生のスキル名は、ただ移動するだけの転移とは違う。だからこの説を信じていたと言ってもいいけど、やはりあまり信じたいものではなかったしな…
「僕が与えたはずの君の【転生】のスキルは、前も言った通り本来ならば自由に異世界に転移することが出来るスキル【転移】なんだ。
それがどうしてか、【転生】のスキルに変わっていた。僕のミスではなく。
このスキルは、ずっと自由に転移はできない。むしろ今のままだ。
でもその代わり死んだ時、その肉体と精神全てを再構築して、死ぬ少し前の状態にして次の世界に送る転生を持っている。あとついでに言えば無制限だ。どんだけ死んでもこの能力が働かないことは無い。」
「でも、流石にそんな不死に等しいことなんて……あ……」
「そう祈君も思った通り、そこで君が疑問に思っていた回復魔法が急に使えなくなったことが関係する。
その【転生】のスキルはペナルティなしではない。
その1、他者が関与した他殺とみなされる場合。
この場合は、次の世界で一番必要になる能力が無くなる……いや、殺された人に渡される。
例えば、あの時君は、傷だらけのアーサを見つけた。その時に必要になる回復魔法が殺された相手、斬崎咲に回復魔法が渡された。
その2、他社が全く関与されない自殺とみなされる場合。
この場合は、自殺した世界には二度と行けなくなる。簡単でしょ。」
「じゃあ今回はどっちに何が渡されたんだ?」
「それは、ランスに狂気が渡された。」
「? 狂気なんのために使うはずだったんだ?」
「それはね。今から君はアヴァロンに僕が返す。その時の復讐心がランスに渡された。本来なら、君がグィネを殺していた……と思う。」
――狂気? それは能力なのか? まあ、狂気は時に人の強さを高めてくれる。それが亡くなったのか、俺から……
「でも、この狂気が選ばれて正解だったね。狂気がランスに渡されなかったら再びランスは操られ証拠隠滅のためマリンが殺されていた。あとついでにグィネもね……それは君にだけど……」
「そうなのか……一つ聞いていいか?」
「うんいいよ。何?」
「他殺と自殺の境界線について」
――これを知っておかない限りは、容易に死ねない。いや知っていたとしても死のうとはしないけど……
「うん。それはね……
例えば、Aさんによって崖に追いやられてるとする。
その時君が後ろに地面がないことに気づかず後ずさりして転落死したとする。
それは、他殺。Aさんによってだからね。
後は、BさんがCさんに切られそうになっていてそれを助けるために飛び出しBさんに切られ死んだ。これは完全に他殺。
だから他者が関わっていれば他殺になる。ならないとすれば……
例えば君の愛する人が死んでしまったとする。それで悲しみの果て首を括った。
これは君の愛する人のせいではあるけど、自殺。直接、死に関与してないから。
こんなんでいい?」
「ああ、ありがとな。」
「じゃあ、そろそろ行かないとやばいな。行って来なよ救世主さん。」
そう言われ俺は光に包まれてその場から消え去った。
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「……ってな感じさ。」
さっきまでのは全て話した内容です。ご注意ください。
それを聞いたランスは、安堵の表情を浮かべて俺に抱きついてきた。
「うう。祈。祈。心配したんだから、本当にコイツ殺そうか僕が死のうか迷ったんだから……グスン。」
「ああ、ごめんな。ランス、エレイン心配かけて……」
ああ、説明をする前にエレインをちゃんと呼び出しておいた。勿論こちらも半べそで抱きついている。
「んで、あんたはまだ俺を殺そうとするのか?」
俺は地面にしゃがみこんでいるグィネにそう聞いた。
グィネは、首を振って降参の意思を告げる
「いや、アタシはいいや。でもランスは諦めない。アンタとはライバルであり、助けて貰った恩人でもある。恩人の借りはカリバーンをあげる。カリバーンはアタシよりアンタの方が輝いてるから。」
「いやでも……」
「いいよ。アタシ魔剣所持数この世で一番だから。他にもいっぱい魔剣持ってるし。」
そう言ってグィネは沢山の魔剣を出す。うわこんなに沢山……
「じ、じゃあ……お言葉に甘えて……」
「あ、あと……アタシも一緒に連れてきなさい。」
まあ、そんな感じで魔剣使いの修道女グィネ・ホワイトプリーストが仲間になった。
もしかしたらこの調子でアーサまで……そういや立場的には俺はガヴェインだけど恋愛系だとグィネヴィアよりだよね。
あとそして、この街を後にした。
「うわあぁぁ〜。ドドドどうしてあなたがここにいるんですかぁ〜?」
馬車の中で目覚めた善マリンは空手の戦闘ポーズで構える。
「ガオーーー!」
「ヒィぅぅ〜。もしかして祈さんの仕業ですかぁ〜?」
「ああ、そうだよ。」
「良かったですぅ〜。祈さん生きてたんですねぇ〜。」
結構前にみんなに抱きつかれたのが終わってからまたマリンに抱きつかれた。
「ごめんな心配かけて……」
そう言って俺は善マリンの頭を撫でてあげた。
「心配したんですよぉ〜。本当にぃ〜。」
俺らは何とかやっと家に着いた。
「「「「ただいま〜」」」」
そう俺ら、俺、マリン、ランス、エレインは言う。
「お帰りなさいませ。」
「おうおかえり。」
それに応じるようにニマーヌとタリシエンが言う。
「あの、ええとアタシはグィネ・ホワイトプリーストと言います。お世話になります。」
「おお、また祈は、かわいい女の子をアーサに怒られるよ? ……女じゃないな?」
そうタリシエンは、肘でつつきながらそう言った。1回タリシエンも騙されたみたいだ。ケケケ、なんかいい気味。
そんなことをしていると俺の体を光が包みそこから消えた。
「グィネ、これが祈のスキル。突然消えるから注意」
「私も始めて見ましたぁ〜。」
まあ、何だかんだで楽しそうだ……何でここから消えてるのにこの状況がわかるのかとか突っ込んだら負けだからな。なんというかあれだアレ、なんとなくだなんとなくそう思ったんだ!