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1章19『ヤンデレストーカー』

やっぱりさっきから誰かがついてきてるな。


「誰だ? そこにいるんだろ? 出てこいよ」


俺は街の外れに行きストーカーさんを呼び出す。


「祈。どうしたの?」


「祈さん。どうしたんですかぁ〜。」


と心配する声と


「ハイパパ。たしかに居ますよ」


それを報告する声が聞こえる。

風魔法で優しくここへ運んでみる。

すると、隠れていた人は女の子だと気づいた。


「何よアンタ。アタシはアンタにはキョーミないの。アタシがキョーミあるのは……ハアハア……ハアハア」


その女の子は修道服を着た所謂シスターさんだった。金髪より少し白ぎみな銀髪とはまた違った所謂プラチナブロンド位の髪の色でベールと言われるその帽子みたいなののせいで髪の長さはよく分からない。目は茶色寄りでなんというかまあ、theシスターみたいな感じだ。だが、その口調はシスターというよりかはギャル気味? だ。


「アタシ、アンタに一目惚れした。アンタが欲しい。あの時アンタを見たのも神のご示し……」


そう、シスターさんが告白したのはもちろん俺…………ではなくランスだった。

え? シスターさん女だろ? ランスを男と間違えたとか?


「アタシは、グィネ、グィネ・ホワイトプリースト一応ギルドにも入っていて赤ランクのプリーストなの」


グィネ……グィネヴィアか……まあ、ランスロットと不倫関係だったのは知ってるけど……まさか同性愛迄だったとは……いや待てよ、俺最初ランスの事ずっと男だと思ってたっけ……


「僕はランス・レイクシーフ、女だよ?」


それに気づいたランスは、自分が女だと指摘する。


「構わないよ。アタシ男だから」


へっ? いや確かに胸ないなーとは思ったけど。美しすぎない? 顔とかモヤは女じゃん。修道服のスカート部分の切れ目から出てる足だってむっちゃ細いし毛生えてないじゃん(いや、それに対しては剃ってるだけなのかもしれないけれど)。女じゃないの?

ならいいのか……じゃなくて、ランスは、一応俺の恋人だから所謂男の娘の手には渡せない。


「いや。僕、祈大好き。だから、あなたとは付き合えないし、祈と分かれるつもりもない。」


「いや。いやいやいや。アタシは何としてでもアナタが欲しいの! そうかそうか。アナタが悪いのね……アナタが存在するからアタシはランスに見てもらえない。」


ヤベェ。ヤンデレスイッチ入っちゃった。俺殺されるんじゃ?

グィネさんは、どこから出した!? と突っ込みたくなるような赤い大剣を取り出すとそれを俺に向けてきた。


「この炎の魔剣カリバーンであなたを殺す。『太陽の魔剣士』のあなたにとって本望でしょ?」


魔剣カリバーン。それは、この世に存在する4代魔剣の一つ『湖の魔剣アロンダイト』『炎の魔剣カリバーン』『地の魔剣デュランダル』『風の魔剣ロンゴミアント』がある。それに神器『聖剣エクスカリバー』『黄金の聖杯』がある。これは結構有名だな。

4代魔剣と神器どちらか一つでも見たことがある人は本の一握りしかいないらしい。

その魔剣は炎を纏っているわけではなく、俺の【太陽】のスキルと同じ様な効果らしい。まあ、倍率は全然違うけど……


「させない。祈は僕が守る」


「やめて、ランスを傷つけたくない。ああ、そうかこれを使えばいいのか……」


グィネが出したのは、禍々しい装飾が施された杖のようなものだった。


「あ、あれは『眷属化の呪杖』魔剣クラスの魔法具ですぅ〜。」


眷属化? 何それ操られるの?


「ランスはアタシのもの、誰にも渡さない」


グィネがそう言うと眷属化の呪杖から黒い煙のようなものが出てきてランスを包み込んだ。


「グィネに手を出すものはたとえ祈であろうと許さない。」


その煙に包み込まれたランスは、目の輝きを失いよく見る洗脳系のものにかかってしまった感じになってしまう。

ランスは、アロンダイトを手に取るとそれを俺に向けてきた。


「さあ、ランスあいつを倒してしまいましょう。アタシたちの愛を邪魔するものを排除しよう」


そうグィネが言うと二人が切りかかってくる。それを俺はクラウ・ソラスで受け止める。


「クッ……やめろ目を覚ませランス!」


俺のその声にはランスは全く反応を示さない。


「マリン! 援護頼めるか?」


「オウ! マスターの為に時間ギリギリまでやってやろうじゃねーか!」


それに反応したのは、支援系魔法の善マリンではなく、攻防系魔法の悪マリンの方だった。


「では、私が回復役をしますね、パパ」


「ああ、頼むエレイン。」


「そんなに女を連れてるならアタシの邪魔をしないで、アタシはランスが欲しいの。ランスはアタシのもの。誰にも手出しさせない。」


グィネは、そう訴えて来る。その声に応えるようにランスが攻撃に移る。

クソッ……これじゃあ攻撃できないヤベェ本当に殺されちまう。何とかならないのか……あの杖を壊すとか……

……なッ? あいつ大量のアンデッドを出してきやがった。ヤベェヤベェ……これじゃあ数の差で圧倒的にこっちが不利だ。ランスがいる中で広範囲の魔法は使えない……


「【ヒールド】っ!」


そんな声が聞こえると、目の前でうじゃうじゃしてたアンデッド共が一瞬で消滅した。善マリンの方か……ナイス。


「じゃあこれでッ! アタシたちの邪魔をしないで!」


グィネがそう叫ぶと眷属化の呪杖が黒く光り俺らは動きを止められる。

その隙を逃さずランスは、俺をアロンダイトで切り裂く……


「カハッ……コフェッ」俺は即死とまでは行かなかったが完全にあと数分で死ぬだろうと実感した。俺を切り裂いたランスの目も顔も無表情で俺を切ったという罪悪感は微塵も存在していないと感じられた。俺が意識を切らすのと同時にエレインは消え去った。


「そんなぁ、そんな祈さん嘘でしょぅ? 祈さん……そうだ……【バニッシュ】ッ!!」


善マリンがそう叫ぶとあたり1面に白い光が発される。

……バニッシュ……光魔法の最上級の浄化魔法。魔法の効果を全て無効化させる大魔法。全てとはいえ魔剣の力は失われない。失われるのは術者による魔法と、対象者がある魔法……つまり、眷属化の呪杖の効果は失われる。が、その能力の強さに魔力量は比例してない。普段なら百人単位で全員気絶……要するに魔力切れを起こす魔法を1人でやったのだ、当然マリンが無事なわけがなく……その場に青ざめた顔でバタリと転がる。

そのバニッシュの効果でランスの目に光が戻り自分がしたことを冷静に悟る。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………ああ、ああ。祈。祈。祈…………」


目には物凄い量の涙が溢れかえるように流れる。そこに残っていたのは血のついた(・・・・・)祈の服と祈の血(・・・・・・・)


「アハ、アハハハ。アタシとランスの邪魔をするから……当然の報い。神も許してくれる。アハハハ。さぁ行こうランス。その幼女を殺せばアタシ達がやったとは誰も感づかない。」


ランスはグィネのその言葉を聞き、アロンダイトを手に取る……


「アナタが……アナタが悪いの? アナタと僕のせいで祈は死んでしまったの?」


アロンダイトで、眷属化の呪杖を切り落としランスはそう聞いた。


「いや、違う。アタシもランスも悪くない、悪いのはすべてアタシ達の邪魔をしたアイツのせい」


「うそ、うそ! この眷属化の呪杖で僕を操って祈を僕に殺させたんだ……全部全部全部!? アナタがアナタが悪いんだ……責任とってよ……死んで責任とってよ」


まるで狂ったように、いや狂ったランスはそう喚いた。


「いや、死ねない。アタシはランスのために……」


「そんなこと頼んでない……死ねないんだったら僕を、僕を殺して……今すぐ! 僕を殺してよ! もう僕がこの世にいる必要は無い……アナタが責任を取って死ぬか、無限に等しい命を持つこの僕をしっかり殺すか……どっち!? 選んでよ!?」


「いや、いや死ねないし殺さない。罪を償えと言うならアタシは、一生ランスについて行くそれで……」


「じゃあ死ねッ!」


ランスは、アロンダイトを振り下ろす。

……ガキィーン……それを防いだ剣の金属音が聞こえる。

その剣を防いだのはカリバーン。いや少し言い方を変えなければいけないな……




その剣を防いだのは、カリバーンを持った(・・・・・・・・・)祈だった(・・・・)……





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