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1章14『二つの厄災』

目を覚ますとそこは地球の俺の部屋だった。


「ハァッ!? 何で今起こっちゃうんだよ!? ふざけんなよ! アーサ、ランス。俺が戻るまで、ちゃんと生きてろよ……」


今起こってしまった異世界転生に俺は怒りを隠せなかった。

クソ、今丁度一週間で世界を一度滅ぼした紅白の双竜戦やってんだぞ。


「お兄ちゃん? 戻ってきたの? お兄ちゃん大変!!」


ドタバタと階段を登りながら願はそう言った。

……あ、そうだエレイン。


「あれ? パパ、ここは地球ですか?」


「ああ、そうだ。」


エレインもどこか心配気に窓越しの太陽を見る。


「お兄ちゃん大変なの! とにかくこれ見て」


願が見せてきたのはスマホのニュース番組だった。


『ええ、昨日突然全世界で起こった異能発症。なんと20歳以下の人にしか発症していない模様です。この異能を手に入れた斬崎 咲少女は異能を使い日本国内で猟奇殺人をしています。外出の際は、少年少女に気をつけて下さい。』


異能だって……なんだよそれ、しかも全世界の20歳以下の全人間が、そんな能力を手に入れたら世界中がパニックになる。俺がいない間に地球が何故こんなことになってる?


「私も、異能持ってるよ。【防護】って言う異能なんだけど見てて……」


そう願が言うと服をすべて脱ぎ捨てた。……が、胸などには眩い光のような物があり一切えっちい所は見えない。


「これが私の異能。本来は守る異能なんだけど、〇〇を守る、とか具体的に考えると、こんなことも出来る。例えば、こんな感じで……」


そう言って、願は俺の手を掴み願の胸に当ててくる。そして、願は器用に俺の指を無理やり動かし揉ませようとする。……が、胸から1ミリほどのところに見えない障壁が生まれる。


「お兄ちゃん、もしかして本当に揉めるとでも思った? 揉みたいならもんでもいいよ、ほらほら〜♪」


そう願が言うと障壁が無くなり、俺の手は願の胸に当たってしまう。柔らか……いや、硬っ! なにこれ硬っ!


「願いもしかして、全然成長してない?」


「うるさいわ!」


そう俺は鉄拳で制裁された。あれ? 拳で殴られてるのに柔らかいところに当たってない?


「これも活用法で、私の腕を盾と化して攻撃力を上げてるの。要するにめちゃくちゃ硬くなる。胸が硬かったのもこのせいです。このせいなんです。決してまな板ではありません。」


そう願は、「貧乳じゃないもん貧乳じゃないんだもん」と涙ながらに訴えてきた。まあ、まだこれからだと思うよ。気にすることは無い、世の中には「貧乳はステータスだ。希少価値だ。」とか言っている方々もいらっしゃるようだし。


「私の推測によると咲ちゃんは私の反対の能力だと思うんだよね。」


「咲ちゃん?」


「私の同級生。斬崎咲ちゃんは、その名前になぞらえて、『Saki the ripper』切り裂き咲って呼ばれていじめられてたらしいの。ダークな感じの少女だったから余計に……その事が咲ちゃんの異能になったんだと思う。私も、お兄ちゃんのことを守ってあげなきゃとか思ってたからだと思うし。」


なるほど、自分の中の強い欲望が異能として具現化される。ということか……

ということはその斬崎咲ちゃんはそういう願望があったという事か……人を殺してみたいとか……

そういや、俺もこの世界の人間だし、高校一年だし異能か発症しててもおかしくないな。あ、そうかスマホで確認出来るのか……

ええと……地球で……あっ、これか……。


「【消去】異能の効果を一定時間消すことが出来る。か……」


ん? あれ? 願の裸姿が……みぇ…………。


「ちょっとお兄ちゃん!? 何してんの!? クゥゥゥッ変態! エッチ! ラノベ主人公! 」


「なんかすいません。ごめんなさい。許してください。この通りです。」


俺は、願が怒っているので人類最大の兵器DO・GE・ZAで対抗する。


「……そんなに。……そんなに見たいの? わたしを……お兄ちゃんなら……」


そう言って願は俺に抱きついてきた。チョッ……色んな所当たってる……


「いやいやいや、やめてやめて、ほや服着て」


俺は服を魔法で浮かび上がらせ願に被せた。あれ? なんでほっぺた膨らませてんの?


「むぅ。仕方ない、お兄ちゃんがそう言うならそうしといてあげる。いつか必ず責任とってもらうから……」


「……あっ。そうだその斬崎さんは願の友達なの?」


俺は身の危険を感じ話をそらすことにした。


「え……うん。まあ、そうだけど……」


『ええ、速報です。速報です。今、札幌テレビ塔前に斬崎少女がいる模様です。危険ですので近寄らないようお願いします。』


そうニュースの声が聞こえた。


「願。俺ちょっとテレビ塔まで行ってくるわ。付いてくんなよ」


「え? お兄ちゃん? 本当に言ってるの?」


俺は黙り込んだまま家を出て、そのまま自転車に跨りこぐ。

流石にここにずっと住んでる俺だが、最短ルートとか一度も考えたこともなかった。

中二病たるものになった時によくてっぺんに登って高笑いしてたっけ


「エレイン。いるな、ここから札幌テレビ塔までの最短ルート。どの道を通っても構わん。」


「はい。パパここから目的地まで、このルートでこのスピードなら20分程度です。」


「分かった。ナビ頼む。」


そうして俺は、ものすごい勢いで自転車をこいでゆく。俺は色々補正があるからそんなに疲れないが、自転車がどうやら悲鳴をあげてる。


「この早さだったらあと何分だ、エレイン。あとしっかり捕まらないと振り飛ばされるぞ」


「はい。大丈夫ですパパ。あと推定時間ですが、あと5分です。」


「Ok。」


俺は全速力でこいで五分もかけずにテレビ塔に着いた。どうよ、完璧じゃんか。


「アハハァ! アハハハハァ! 人がどんどん死んでゆきますわァ。楽しいですわァ。いいですわァ。おや? あなたは誰ですかァ……まあ、ワタクシが知ったこっちゃないですわァ。今ここであなたはしぬのですからァ」


そこには、全身真っ黒なゴスロリを身にまとい、その美しい真っ黒な髪や服と雪のように真っ白な肌が真っ赤な鮮血で赤く汚されている少女こそが斬崎 咲さんだった。

斬崎さんのその言葉遣いは狂っていて、何か俺に使用としたようだったが、俺の異能【消去】があるから斬崎さんは、その手に持っている漆黒の剣しか使えない。


「クッ。あなたなにをしましたのォ? ワタクシのォワタクシのォ! 偉大なる異能に何をしましたのォ!? 」


「ええと、まずは自己紹介。俺の名前は巡谷祈。持ってる異能は、【消去】言葉だけでわかるな、異能を消去する異能だ。大人しく捕まり法の裁きを受けろ。」


「そんなァ、そんなことはあり得ませんわァ。ワタクシの異能を返してくださいませんかァ? ……あっ。そうですわァ。殺してしまえばいいんですわァ。ワタクシったら天才じゃないですのォ?」


斬崎さんはそう言ってゆらゆらと、剣を引きずりながら歩いてくる。あまり女の子にこんな例え方したくないんだけど、その姿は血に飢えたゾンビのようだった。


「アハハハハァ。ほらァ、逃げないでくださいよォ。祈さん。ほらすぐ逝かせてあげますからァ。痛くしませんからァ。」


「来い。クラウ・ソラス。」


俺がそう叫ぶと、クラウ・ソラスが手に現れた。

スマホのアプリになんか転生した場所に呼べば自由に持ってこれる【転生】のスキルの副特典みたいなものの一つが、この炎の剣クラウ・ソラス。

それに魔力を流すと炎の刀身が出来上がる。


「何ですのォその剣はァ? 異能は一人ひとつなはずですわァ。なんですのォ。あなた何者ですのォ。」


俺は、漆黒の剣を振り上げてくる斬崎さんの剣をクラウ・ソラスで受け止める。

すると斬崎さんの剣が真っ二つに切れた。


「何なんですのォ。何なんですのォ……。ワタクシは負けませんのォ。祈さんは、私の異能が一つだと思ってるんですかァ。【複写:消去】。アハハハハァ、アハハハハァ! ワタクシを見くびりましたね。私の異能は、【武装】異能の力は思いの強さ(・・・・・・・・・・)ですわァ。ワタクシの武装は、殺した人の全てをも武装できる。アハハハハァ、アハハハハァ! 【武装】コール! 無限の狂剣(インフィニティレイン)!」


そう狂った声で狂った表情で叫ぶと、空に無数の剣が現れ、重力に抗えないかのように、俺を目指して落ちてきた。

俺はたしかに異能を封印したなのになぜ……異能の一部でしかない異能が使える?

クッ……逃げないと……なっ? 動けない。


「アハハハハァ。逃がしませんよォ祈さん。嗚呼、あなたは死ぬと分かった時どんな声でェ! どんな表情でェ! 喚いてくれるのォですかァ? 嗚呼、興奮してしまいますわァ。」


ああダメだ……俺死んでしまうのか……


「エレイン。戻れ……」


「でも、パパ。」


俺の言葉に、躊躇うエレイン。


「良いから、戻れって言ってんだ!」


「は、はいっ! 分かりました、どうか生きてくださいね? パパ。」


そう言ってエレインは、鱗粉を出しながらくるっと回るとそこからいなくなる。

そうだ、それでいいんだ。もしあっちに戻れたとしてもアーサや、ランスが生きてるかはわからない。ならば、今ここで俺が死んでしまっても悲しまないだろう。

……あれ? 俺思うだけで魔法使えるじゃんか……剣よ消えろ……


「アハハハハァ。無駄ですわァ。私の【規則】は絶対ですわァ。あなたは喋る感情を出す考えること以外はすべて私の【規則】で禁じられてますわァ。祈さんのその不思議な力は使えませんわァ。終わりですわァ、祈さん。泣いて喚いてもいいのですよォ。」


もうダメだ……俺は死んでしまうんだ……俺は目を閉じた。

そう思っていると、その無数の剣はもう俺の前にある。

ザクッザクザクッ。地面にそれが刺さってゆく音が聞こえる。

ああ、俺は死んだ(・・・)のか……天界はどんな世界かと見渡してみると、そこは地獄だった……


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