1章13『紅白の双竜』
俺達はオークの討伐部位、オークの魔眼を剥ぎ取り馬に乗って帰った。
あっさり過ぎて、分からなかったが本来ならオークには魅了の魔眼というのがあって睨まれると、動けなくなり服や防具を全て剥がされそのまま少しずつじわじわといたぶられ、興奮してブヒブヒいいながらえっちい所から食われてゆくらしい。なんというエロい豚だ、うら……けしからん。
実は結構強いモンスターらしいが、アーサは聖剣エクスカリバーの試し振りで真っ二つに倒してしまった。
「ニマーヌさんとタリシエンさんは、なにか魔法かなんか使えるの?」
そう話を振ったのは他でもない俺。いやだってさ、なんか静かだったし、一緒にクエスト受けれればいいなとか思ったから。
「そうですね。わたくしは守護神なので守ることしかできません。定員は1人なのでわたくしは、愛しのタリシエン様をお守りします。」
「ウチは、鍛冶師だから、鍛冶技術しか高めてないんだ。ゴメンね。あっ、でも刃こぼれした時とかあったらウチに任しといて。」
「そうですか、非戦闘系なので一緒にクエストは出来ませんね。」
俺はそう笑みを浮かべてそう言った。
「わたくしとタリシエン様は、その間お掃除したりお料理したり鍛冶師として稼いだりしておきます」
「ああ、私の家鍛冶師の一家だから鍛冶に必要な道具はすべて揃ってるよ♪ 私は全然わからないけどね♪」
そんな他愛のない話をしていると日が沈んでもう夜になっていてギルドにも着いた。
「お帰りなさいませ、アーサ様、祈様、ランス様。クエスト達成の報告ですね。」
そう言われると俺らは、ギルドカードと討伐部位の魅了の魔眼を出す。
「たしかに受け取りました。オークの討伐達成です。お疲れ様でした。」
カウンターのお姉さんは、ギルドカードにハンコを押すと俺のカードが黒に、アーサとランスのカードが銅になっていた。それを受け取る。
「さて、帰るか……」
「うん♪ そうだね♪」
俺らは、アーサの家に帰ってきた。
「ここが、マスターの家ですか……」
ニマーヌが家を見上げて興味津々にそう言った。
ちなみにマスターとは、アーサの事である。あくまでニマーヌは、エクスカリバーの守護神だからな。
「ここが、僕らの愛の巣だね、祈♡」
「わ・た・しの祈君だ・か・ら・ね?」
ランスがそう俺に言ったのにアーサは自分のだ宣言をした。いやね……俺の為に争わないで!
「では、祈様はわたしがいただ……」
「「ニマーヌは、タリシエンでしょ!」」
ニマーヌがそう冗談を言おうとした途中にアーサとランスが一言も違わずそう威圧した。
「パパモテモテですね。私も大好きですよパパ」
「ありがとうエレイン。でもそんなことないよ?」
「いや、ウチは、そんなこともないと思うけど……ニマーヌがあんな冗談言うだなんてそうそうないと思うよ?」
そんな他愛の無い話をしながら今日を終えた。
……はァーッ。マジで疲れた。お風呂は何故かみんな押し寄せてくるし、寝る時も何故かみんなで俺の部屋に押し寄せてきたし、疲れます。アーサとランス、エレインは、分かるとしてもどうしてニマーヌとタリシエンまで……2人は愛し合ってるんじゃないの?
ドンドン。ドンドンドン。
なんだうるさいな……まだ朝じゃないだろ……
ドンドン。ドンドンドン。
「……ーサさん。……の双竜が目覚めました。討伐令が出ています。広場に集まってください。」
……ん? なんだ? 双竜?
「……アーサ、ランス起きろ、紅白の双竜が目覚めた。討伐令が出てる。」
俺は、朝からドアを叩かれた理由を把握しアーサやランス、エレイン、ニマーヌ、タリシエンを揺さぶり起こす。
「……んん? 祈君まだ遅いよ? ……双竜!? 」
「祈。それホント?」
「エレイン確かめてくれるか?」
「はい。分かりましたパパ。…………はい、これはたしかに紅白の双竜です。あと1時間ほどでこの街に到着します。」
エレインは、指をふり光のマップを出し、そこにいる大きな赤と白の点を指差しそう言った。
1時間……大丈夫か?
「ニマーヌ。タリシエンを守ってくれるな?」
「はい。言われなくてもそのつもりです。」
「じゃあ、アーサ、ランス、エレイン。早く着替えていくぞ……時間が無い。出来るだけ早く。」
キター。異世界転生系でここまでチート能力を持ってるんだ、俺TUEEEEできる。しゃあ〜、俺がこの世界に「紅白の双竜を倒した英雄 巡谷祈。」という名前を轟かせるんだ。
「……さ。準備できたな……広場へ行くぞ。きっとみんな集まってる。」
「はいっ!」
「うん♪」
「分かった」
家から出ると俺らは、ギルド前の広場に駆け出した。
「ああ、祈様、アーサ様、ランス様。起こしくださったんですね。状況はこの通り、紅白の双竜迎撃に備えて、街の強いギルドメンバーを集めています。世界に名を轟かせている、『円卓の騎士姫』様と『湖の騎士』様がいれば百人力です。」
そこには総勢五百ほどの人数がいた。それぞれストレッチをして備える人やガクついている人、素振りをしている人などが多数いた。
みんな緊張しているんだ……悪いな、紅白の双竜は、今日俺が倒してやるよ……
「紅白の双竜がこの街に訪れるであろう推定時刻は、あと40分ほどです。」
「住人の避難は終わったんですか?」
「それは今、私共ギルドの職員が、総出で避難させています。」
まあ、ニマーヌ、タリシエンは、家にいるよう頼んだけど、そっちの方が良かったかな? まあ、ニマーヌがいるし大丈夫だろう。
「推定時刻あと、20分ほどです。」
それを聞いたカウンターのお姉さんは素早く適切に指示を出す。これでも一応結構有名な人らしい。二つ名が『孔明の軍師』と言われていたほど指揮に優れ、それでいて、魔法、剣術の腕もそこそこ凄いのだとか……
「皆さん。あと20分ほどで紅白の双竜がこの街を襲いに来ます。私たちはそれを迎撃しなければなりません。ですが、我先と命を落とさず、生きて帰りましょう。私からはそれだけです。では、コーンウォール方面の門の前に向かいましょう。あそこなら広くて戦うのにもいいはずです。」
流石は『孔明の軍師』見事なカリスマだと俺は思う。カウンターのお姉さんの声を聞いてみんなゾロゾロと歩き出す。さっきまでびびっていた人もやる気を出して歩いている。所々から「っしゃァ。俺が紅白の双竜倒してやるよ。」とかそんな声が聞こえてくる。
移動し終わると、残り時間は5分程度だった。俺らは、前衛を任されて、『円卓の騎士姫』と『湖の騎士』がいるとの事で、前に前にやられて今俺は最前線にいた。
その後にアーサとランスがエクスカリバーとアロンダイトを構えている。それに習い俺もクラウ・ソラスを手に取る。
大丈夫まだ朝方。戦うにつれて強くなっていくはずだから。まあ、大丈夫だろう。
ドスーンと2回大きな衝撃音が響いた。紅白の双竜がやっとついてしまったのだ。
カウンターのお姉さんの「総員かかれー」の声に合わせてみんな突撃し始める。
「いくぞ、アーサ、ランス。」
「うん♪ いつでも準備OK♪」
「大丈夫。行ける。」
そう応答を聞くと俺はクラウ・ソラスに魔力をつぎ込み炎の刀身を作り出す。
それを構えて走り出すと……
俺は眩い光を発し、この世界から消えていた……