4章28『エレイン地底世界へ』
眩い光とともに祈はそこに現れる。
「ここは……」
祈はあたりを見渡し場所を確認した。
「アヴァロン――アンダーグラウンドのミティの家か……。」
「パパ、ここはどこですか? あんだーぐらうんど? ってどこですか?」
「ええと。アヴァロンの地下世界かな?」
「ここは誰の家ですか? ママはどこですか?」
何やらいろいろともう分かってしまっていそうだ。
まず、アーサら含めアクアレイクの町マースの町人全てがきっとこの世界――アンダーグラウンドに連れていかれているということも。
「ええと、緑の騎士ベル=シラックっていう人がアーサ達をこの世界に連れてきたと思われます。はい」
そう言った祈の体は少し怯えていた。
エレインにひとつ怒られるのだろうと察したからだ。
「――まあ、終わったことをつべこべ言うことはやめます。またどうせ大事な時に【転生】で違う世界に行ったのだと簡単に推測できますから……」
だがエレインは一言もその事については怒らなかった。しかしエレインの肩は怒りで震えている。何故だ? なぜ怒っている?
「――どうしてまたパパは、ママがいない時に女の人の家にこう簡単に転がり込んでしまうのですか? ヒモにでもなるんですか?」
「――。」
返す言葉がなかった。
はっきりいってそうだ。否定をする術がない。
今の祈の状況はこうだ。アーサ、ランス、マリン、ダンテというこの世界の嫁が居ないことをいいことに女の人の家に上がり込んでベッドルームにいる――弁論の予知なし。
「――――。」
あと追加で言っておくと、どうしてこの場所が女の人の家か分かったかといえば……
あれだけ片付けた部屋が一日にして前と同じく――否、前よりも汚くなっており、散乱した本の郡の上に女物の下着やら何やらが散らかっているのだ。
その汚さからして、一人暮らしだと推測するのは容易だろう。
結果――ものすごく怒られた。
祈はその状況といい自分の愚かさと言いそこら辺がすべて自分のせいなので反論できずただエレインのお説教を聞いているだけだった。
「……という訳で、反省しましたか?」
「――はい。反省しました。もう二度と一人暮らしの女の人の家には転がり込みません」
ここだけを聞くととっても頭のおかしいイカれた変態野郎だが、祈にはもちろんその気はなくエレインに言われやっと気がついたのだ。
「分かりました。パパは昇進所為名の天然ジゴロだという事が」
「それは酷いんじゃないんですかね。流石にそこまで言われると泣くよ?」
「泣けばいいじゃないですか。但し泣いた段階で確信犯であざといジゴロということで警察に突き出します。」
「うわーん! かわいいかわいい我が娘が厳しいよー!」
「駄々をこねてもダメです。ちゃんと反省してください。」
そう正座している祈と宙に浮いて怒っているエレインの一連のやり取りをしているとガチャんと閉まっていたベッドルームの扉が開く音がする。
祈は驚いた。
「――扉開くんだ!?」
その廊下側に開くその扉が開くことに。
「扉が開くってことは、廊下は綺麗なんだよな?」
「は、はい。汚くなっているのはここだけで、後は前のままです。」
そう無表情に抑揚のない言葉でそう答えるミティ。
「この綺麗な人の家なんですか。」
「ああ、そうだよ。この娘は錬金術師のパラミティーズ・グランドアルケミックだ」
「パパ。この方まるでママと正反対のお方ですね。」
そのエレインのトゲがあるというか、トゲ自体にトゲがあって、そのトゲにトゲが……というように刺さるだけでは済まないようなその言葉を祈は直撃した。
つまり要約するとこうだ。
『パパ。ママは誑かしただけで本当は正反対の性格のこの方が好きなのですね』
それでは済まないだろう。その太陽ですら凍りつかせそうな冷たい目線に祈は真っ向から挑んで見せた。
「いやいや、そうじゃなくてですね。俺はアーサが大好きだよ。これ以上はない断言します。」
その祈の啖呵に今度は違う方向でガクリと何かが倒れたような音がする。
「そんな、私は遊びだったの?」
いやいやいやいやいやいや。はぁ!?
どうしてそんなことになっている? あれだよここは修羅場か?
そんなミティの無表情でまるでそう考えているとは思えない声でそういったものだから状況はより悪化した。
「パパ? 遊びってなんですか?」
そう冥王星ですら太陽と同じ温度になってしまいそうなその鋭い目線を向けられる。
それに乗ってくんなし? どう見てもからかっているだけだろ。
「いやいや誤解です。」
「誤解も六階もありません。」
「裁判官ヘルプ。検察官助けて……」
残念ながらここに祈の仲間をしてくれる人はいない。だからその助けは叶うことは無い。
だから、突如時空の歪ができて半機械半人の祈に忠義を捧げている〝天使〟なんて来るはずもないのだ。
「――――。やっぱり来ないか……」
「ん? 何の話ですか?」
「い、いやこっちの話。」
まあ、そんな来てしまうようなフラグが簡単に建てられるはずがない。
カマエルなんて青狸は来なかった。
「それで、本当に何もしてないんですね?」
そう話を戻してエレインは問い詰めてくる。
「ああ、部屋の片付け以外は何もしてない。」
「へえ、部屋の片付けですか……さぞかし楽しかったでしょう、パパ?」
何故だろう? 分かってもらえたはずなのにエレインの怒りは一向に収まらない。
「分かっていないパパに申し上げすが、この散乱しているこの本と衣類――下着を片付けたと……」
「・・・。あ。」
やっと分かった。分かってもらえてないのにどうしてエレインがこうもカッカしているのかが……
どうして片付けたのに、こんなに汚いのか? だろ? それはミティが……
「何今更わかったかのような雰囲気醸し出しているんですか? 私はパパにこの本と衣類もとい下着を片付けのかと聞いているんです」
え? どうして汚いのか? じゃないの? え? まさか下着を片付けたのか? と聞いていたのか? じゃあ俺悪くないじゃん
「ああ、それなら衣類は全部ミティがやったよ。俺は極力見ないように思慮してたが辺りにあるから大変だった」
「本当ですか?」
「はい。確かに祈さんに言われて私が片付けました」
「ならいいです。失礼しましたパパ。まさかパパが何も思わずに他人のそれもこのような美少女の下着を片付けと称して平気で触る変態。ではなかったので安心です」
そう最後の最後まで毒は抜けていなかったが怒りは収まったみたいだ。変態のところだけ強調されていた気もしたけどきっと気のせいだろう。うん気のせいだ
ありがたやーありがたやー。




