1章10『湖の騎士』
「さて今日は、どんなクエスト行こうか?」
今俺らは、クエストを受けるためギルドに向かっている途中だった
そんな話を遮るように……
「オウオウオウ、見せつけてくれるじゃねぇか。まだテメェ登録して3日の新米だろ?」
「そんな奴が、昼間っから、いい女とちっこい女連れてイチャコライチャコラしてんじゃねーよ!」
「ああそうだ! どうだ兄ちゃん。その女2人寄越すなら見逃してやるぞ」
チンピラ共が昼間っからガヤガヤ騒いでいた。
「ごめん、急いでるんだ。行こうアーサ。」
「おい何シカトしとんじゃ? オラァ、ちょっと教育が足りないんじゃねぇか? おいやっちまえ!」
そうチンピラのリーダーだと思われる男が叫ぶと、周りにいる10人程度のチンピラ共が武器を向けてきた。
「あんまり戦いたくはないんだけど……まあ、いいか。アーサは、手出さなくていいから、これは俺がうられた喧嘩だ。上等だその喧嘩買ってやるよ。アーサを俺から取ろうとした罪それは重いぞ!」
「何抜かしとんじゃワレェ。スキだらけなんだよ。オラァ。」
チンピラがそう言い刀を振り上げ俺を切り落とそうとする。
スキだらけ? その言葉そっくりそのまま返してやるよ、対人戦なのにこいつ振り上げすぎだ、刀の筋も曲がってる。
俺は念じて懐からクラウ・ソラスを手に呼び出し魔力を込め、振り下ろしてくる刀から守ろうと構える。
すると、鍔迫り合いすることも無く刀身が折れた。……ん? もちろんチンピラの……
「弱っちい刀だ、そんなんじゃ俺刀傷はつけられない。」
「そ、そんな馬鹿な、その刀は世界最高峰の鍛冶師が鍛えた魔剣クラスの刀だぞ……それをいとも容易く……しかもなんだその剣は刀身が炎で出来てやがる。」
「ハイハイ説明ご苦労さん。んで、あんたはまだ戦います?」
俺は優しさ半分、クラウ・ソラスの剣先を向けてそう聞くと、男Aは、手を上げ首を振った。
「えぃ! 仲間の敵、しっかり取りやがれ!」
「「オゥ!!」」
個人戦がダメなら数の力で、ってバカの考え方だよな。ゼロに何をかけてもゼロだし。ここは尻尾振って逃げるのが懸命だと思うんだけど……
——そんなことを考えていると敵は全員伸びていた。
対人戦で経験値って上がるのかな。ご苦労さん経験値共、テメェら1人に対し経験値1でも俺にとっては、1×300×11で3300の経験値を貰えるからな。
でも何かこいつら腹立つな、アーサを奪い取ろうとしたんだその罪は万死に値する。だが俺は優しいから、錬金術でギザギザな石を人数分作ってそのギザギザの上に、亀甲縛りしといた経験値共を正座させて太股の上に重しをそいつの体重の10倍ほど乗っける。
ああ、スッキリ。ついでに、ちゃんと看板立ててアヴァロン共通語で、『俺ら最弱チーム。これ? 御褒美です。』と書いておいた。
「兄ちゃんやるな。こいつら、この街で三本の指に入るほどの強さらしいぞ、野次馬達がそう言ってた……」
「え? スライムの方が強いなと思ったけど?」
「兄ちゃんバケモンかよ。その強さでまだ白って本当か?」
そうギルドに行く途中だと思われる軽装備で短剣使いの少年に声をかけられた。
少年は水色のバサバサした髪で中性的な顔つきで女の子と言われれば信じてしまう程美しく、耳には輪っか上のピアスを何個かしていた。
「ああ、まあな。さ、行こうかアーサ。」
「うん。ありがと♪祈君かっこよかった♪」
「なあ、兄ちゃん。僕も一緒に言ってもいいか?」
少年は一緒に行きたいと聞いてきた、俺は別にいいけどアーサ同みたいな目線をアーサに向けてみる。
「私は別に大丈夫だよ?」
「そうか。じゃあよろしく頼むよ。俺の名前は巡谷祈。祈って呼んでくれ。」
そう言って俺は手を差し出した。
「僕の名前は、ランス・レイクシーフ。ランスって呼んでくれ。こう見えても僕、女だよ」
ランスはそう言うと、俺の差し出した手を握る。
……女? マジで? いや信じるとは言ったけどまさかリアルだとは……
「女? まあいいけど……私はアーサ=グランドナイツ。アーサって呼んで♪」
「私は、エレインです。妖精です。宜しくお願いしますランスさん。」
「ああ、アーサ、エレイン。宜しく。」
そうして俺らは、ギルド内のクエストボードを見る。
「そういや、ランスのランクはどれ位なんだ?」
「僕のランクは赤。ジョブは『シュバリー』水魔法が得意で、分かるように短剣使い。」
「じゃあ私も、ランクは赤で、ジョブは『アークナイト』魔法適性はなくて、片手の直剣使い。」
シュバリーが騎士。ナイトも騎士。この二つにはどんな違いが……
「ええと、俺は、ランクは白。ジョブは『マジカルナイト』一応全属性適性で、火属性がとても得意。ええと、ランスも見た通り炎の剣を使う」
「じゃあ私も、私は召喚された妖精なのでギルドに入ってはいませんが、マップなどのナビゲーションと光属性の魔法が少々使えます。」
前衛3人。後衛1人、バランスの悪い布陣だ……まあ、いいけど。
……あれ? そう言えばアーサの力を見てない気がするな……今日俺、後衛に回ろうかな
「じゃ、お互いの紹介も終わったし、クエストを選ぼうか……何がいい?」
「私はなんでもいいよ♪」
「私もなんでもいいです。」
「じゃ、これにしよ、コーンウォールの近くに生息してる、オークの討伐。金貨3枚。」
そう言って銅色の髪に書かれた依頼書を指さす。
どうやらランクは特に関係ないというか……安全マージンがちゃんと取れる基準らしい、このランクだったらこの位は余裕ですみたいな知らせのようなものだから特に気にしなくてもいいらしい。でも流石に銀以上は駄目らしい。何かそいつらは安全マージンじゃなくて、そのランク以上じゃないと無理ですって警告らしいから。
「そうね♪ 私と祈君が居れば怖いものなしだから大丈夫。」
「じゃ決定。これ受けようか。」
そう言ってランスは、クエストボードから依頼書を剥ぎ取ってカウンターに持っていく。
「おはようございます。祈様、アーサ様。あと……すいません」
「ああ、いいよいいよ気にしなくて実は今日この街に来たから、しばらくはこの街にとどまる予定だから。今後ともよろしく。あっ僕の名前はランス・レイクシーフ。ランスって呼んでくれ」
「はい。失礼しました。ランス様。クエストの受付ですね。……では、依頼書と、ギルドカードの提示をお願いします。」
そう言って俺とアーサとランスは、ギルドカードを出す。
「オークの討伐ですね。……はい。この強さなら大丈夫でしょう。クエスト承りました。行ってらっしゃいませ。」
そうカウンターのお姉さんに言われて、ギルドカードを受け取り、ギルドを後にした。
……しばらくしてから。コーンウォールから一番近い街とはいえ歩きで二三時間程度かかるらしいので、馬車を借りて行くことにした。
馬車は、俺は操れないので、アーサとランスの入れ替わりで運転することになっていた。でも基本、馬に目的地を告げるとちゃんと目的地に連れて行ってくれるらしい。こっちの世界の馬は、有能だな。
「……へーぇ、ランスの故郷はアクアレイクなんだー♪」
「ええ、そしてこの剣がアロンダイト。湖のレアモンスターと言われている。アクアクリスタルフェアリーがくれたんです。なんて言うかモンスターって言うより本当の妖精だったような感じです。僕は生まれてからずっとその、妖精に育てられていました。親元を離れる際に自分自らの命と肉体を代償にこの刀を作り僕に託してくれました。だからこの刀は親同然で自分の命以上に大切にしています。流石にクラウ・ソラスには負るけど。大体の攻撃でも傷一つつかない一級品なんだ。」
「……うう……泣かせてくれるねー。うんとっても大切なんだね。」
アーサは馬を引きながら涙ながらにそう言った。
「そんなこともあって僕の二つ名は『湖の騎士』なんだ。」
「二つ名? 何それ?」
「そんなことも知らないのか? 祈は変わり者だなー。」
「アハハ、まあ、異世界人だからね。」
「異世界人? 本当? 凄い異世界人見たの初めてだよ僕。」
そうランスは、目をキラキラさせて珍しいものを見たように言った。
「二つ名って言うのは、ランクが赤になったら貰える称号のこと。赤になるとギルド連盟で会議して簡単に自分の強さがわかるようななまえになってるの♪」
「じゃあ、アーサの二つ名はなんなんだ?」
そう聞くと、アーサは、ギクッと言っていた。はっきりいっていた。そんなダメな二つ名なのか?
「私も知りたいです。ママ♪」
「仕方ない。教えてあげるよ、私の二つ名は『円卓の騎士姫』ただひたすらに件だけ奮ってたからそんな二つ名になっちゃったの……」
「『円卓の騎士姫』いい二つ名じゃないか……カッコイイし可愛いじゃんか」
「はい。『円卓の騎士姫』とても逞しくて可愛いです。ママ」
そう俺とエレインが褒めてあげるとアーサは、一生懸命喜んでいた。ほんと幸せそうだな。
二つ名か……『炎の剣士』とかがいいな。
「あっ……そうだ。スマホで俺の能力確認アプリを確かめてみよ。」
そう言って俺は、スマホの能力確認アプリを見てみる。そこには、地球と書かれた欄と、アヴァロンと書かれた欄があった?
あれ? 俺地球でもなんか能力持ってたか? と思い地球の欄を確認してみると……
「【太陽】?」
【太陽】というスキルが書かれていた。
『あくまでもこのギルドカードは、この世界でのスキルしか見れないという事か? 』俺はそう思った。【???】は、神様に与えられた言わば神様の場所のスキルのはずなのに……
【太陽】のスキルの効果を知りたく。アプリの【太陽】と書かれた所をタップする。
「昼になるほど能力が数字を上回り、最大で300倍になるが、深夜になるにつれ能力が数字を下回り、最大で30分の1になる。」
俺は、スキルの効果を読み上げた。というか、なんで地球でこんなスキルを手に入れたんだ?
まあ確かに、夜がたは頭が冴えなかったりしたっけか……
「何そのスキルやばいチートじゃん♪ 行動するのはだいたい昼だし、やっぱり強すぎるよ♪ 規格外過ぎるよ祈君♪」
まあ、言われてみればそうなのか? いやでも夜に襲われた時とかさすがにやばいかも……エレインを常に体現させてる訳だし……
実際そうでもないのか? 俺普通に普通の人間の3億倍程の魔力量があるわけだし……
まあ、そのことは、おいおい考えることにしよう。さて、どうやら着いたみたいだ……